1;19
19
「うっ、わあー」
キリアは、感激していた。
海の中に、人が住んでいたなんて。あの話は、本当だったんだ……。
石の階段がある。
壁があって、部屋になっている。
これは、ベッドかな。
でも、石だからよく眠れないだろうなぁ。
あ、このホールみたいなところで、集会とか開いていたんだろうか……。
うわっ、こっちにはすべり台がある!すごい!ちょっとすべってみようかな……。
泳ぎながら、夢中になって石の町並みを見ていたキリアは、ふと、足元に何かがあることに気が付いた。
「あれ?」
岩のかげに隠れていて今まで気付かなかったが、足元に、十数輪の花が、ゆらゆらと揺れていた。
「きれい……」
どうしてここに花があるのだろう。
キリアは考える。
さっき、ロゼは、小さい魚のほうが、大きい魚より強いというようなことを言った。
ここでは、反対のことが起きるのかもしれない。
普段、土に根を張って生きている花たちが、海で生きているんだ。
うん、きっとそう。
摘んでしまおうかな。
いや、きれいだから、そのままにしておこう。
ふと、ライとロゼがいないことに気がついた。
一人になると、急に心細くなるキリアは、二人の姿を探した。
「あ、いた」ちょうど、石の壁に隠れて見えなかっただけだった。
キリアは、この中で一番年上なのに、あせっている自分を恥じた。
二人は、並んで、下を見ているようだった。その視線の先には……。
「…………花だ」今見た花よりも、ずっときれいな花が、揺れていた。