表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/35

1;17

 17

 キリアは、さきほどから機嫌が悪かった。

 ロゼは、前にキリアが言っていた「一を知ったら十まで知りたい」という言葉は本当だったんだと、思っていた。

 そして、前に読んだ本で、クウクの住人は学問への好奇心がほかの区域に比べて、はるかに高いということを思い出していた。

 その証拠に、キリアの家のたくさんの本たちが物語っていた。

 「教えろ、ライ」

 言葉使いもどんどん悪くなってきている気がする。早く、なんとかしなければと、ロゼはハラハラしていた。

 それにかまわず、ライは、無言でロゼとキリアの前を歩いていた。

 「…………ライさん?」ロゼは、少し早歩きして、ライの顔をのぞきこんだ。

 「……なに」ロゼは、ライの表情を見て、「いいえ、なんでもありません……」と、引き下がった。

 しばし、三人は無言で歩いた。

 ロゼは、まわりの景色を見た。

 細い一本道だった。

 まわりには、木が生い茂っていて、まるで、トンネルのようになっていた。

 葉と葉の間から、太陽の光がこぼれている。

 地面には、ロゼの知らない薬草がいっぱい生えていて、木の根も顔を出していた。

 油断すると、足を取られそうになる。

 この道が、海へとつながる、ただひとつの道だった。

 とても涼しく、気持ちのいい朝だった。

 昨日は暗くなったので、キリアの家に泊まり、朝早くから出発した。ライは、泊まることを渋った。早く、海に行きたいようだった。

 海に──カリトに何があるのだろう。ロゼは、とても楽しみだった。

 カーニャに薬草をもらってから、今まで、一度も悪夢を見なかった。やはり、大魔法使いがくれたものは効果絶大だったのだ。

 だが、いくらカーニャの薬草とはいえ、心に残るモヤモヤまでもなくすことはできなかった。

 それを、ライが知っている。

 カリトに行けば、分かるのだろうか。

 この得体の知れない恐怖を、ぬぐいさることが出来るのだろうか。

 「さあ、着いた」ライの言葉で、ロゼは顔を上げた。

 今までの狭いトンネルから一変。どこまでも続く、海。そして砂浜が広がっていた。

 「ここで、カリトが息絶えたんだ……」

 キリアが、しみじみと海を眺めていた。

 「ええ……そうですね」ロゼも、海を見た。

 「これから、海に入る。カリトは海に住んでいたのだから、住居跡は残っているはず。それを探す」突然のライの言葉に、ロゼとキリアは、とんでもないと首を振った。

 「わたし、泳げません」

 「あたしも……羽がぬれたら大変!」

 「キリアさんは、ここで待っていてください。…………ロゼは、魔法をかければいいじゃないか」

 「ああ、そうか……」

 ロゼは納得すると、自分に魔法をかけ始めた。

 体全体が、ぬれないように。それと、海の中で息が出来るように、なるべく疲れないように。

 「待て。あたしも行く。──一を知ったら百まで知れ──これがあたしのポリシィ!あたしにも、魔法をかけて」十から百に増えたような気がするが、ロゼは黙っていた。

 今なにか余計なことを言うと、キリアにかみ付かれそうな気がしたからだ。

 「でも、キリアさん、さっきロゼに魔法をかけたとき、木の陰に隠れていたじゃないですか。怖いのではなかったのですか?」

 キリアは、ライの言葉を無視して「早く早く」とせきたてていた。

 「しょうがないな」ライは、軽くため息をつくと、自分とキリアに魔法をかけ始めた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ