1;16
16
「それじゃ、ロゼ、そこの石に座って」
ライは、ロゼが石に座るのを見届けてから、静かに目をつぶった。
キリアは、自分にも魔法がかかったら怖いからと、木の陰に隠れていた。
そんなこと心配することないのに、ライはそう思った。
「──────────」
『呪文の声』で、ライはロゼに術をかけた。
目をつぶった真っ暗な頭の中で、ライは呪文を唱える。
そして、ロゼの頭の中に入り、原因を探っていく。
十分ぐらいたったのあと、ライは静かに目を開けた。
のちにキリアは、木の陰から見ても分かるくらい、へびのような恐ろしい目だったと、語った。
ロゼは、目をつぶっていた。
まるで、眠っているかのように安らかな顔だった。
ロゼは、フッと目を開けると、「もう、終わったのですか?」と、たずねた。
ライは、静かにうなずくと、その恐ろしい目をロゼに向けた。
ロゼは、一瞬たじろいだ。が、すぐに微笑んだ。
「分かったのですね?悪夢の原因が」
「…………うん」
そう、ライは、知ってしまった。
分かってしまった。
ロゼの悪夢の原因が。
そして、ロゼの正体が。
「行こう」
ライは、静かに言った。
「サクリへですか?そこに、わたしの悪夢の原因があるのですか?」
ロゼは何も知らないのか。本当に知らないのか。と、ライは思った。
「教えてください。わたしの悪夢の原因を」
ライは、首を横にふった。
「どうして、教えないのさ。元はと言えばこれは、ロゼの問題だろう。どうして、隠す必要がある?」
いつの間にか、木の陰から帰ってきたキリアが、言う。
もっともだ。
ライは思った。
もっともだ。だけど、こればっかりは……。ライは、キリアを無視して、言った。
「行こう。カリトへ」