表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/35

1;13

 13

 むかしむかしのことでした。

 海底には、さまざまな区域の住人がすんでいました。

 マクニ、リン、クウクをはじめとする五十もの住人が、一つのカリトという区域となって、すんでいたのです。

 リンは木ではなく海藻を育て、クウクは海水の中を鳥のように泳いでいました。

 それはそれは幸せな生活でした。

 ある日のことです。住人たちは、ふしぎなことに気がつきました。

 海には、水があるが、では、外の太陽が直接照る地面では、どうなっているのだろうか、と。

 そうなのです。カリトの住人たちは、海以外の世界をまだ見たことがないのでした。

 カリトの住人は、好奇心が旺盛でした。

 気になることがあれば、すぐにでも飛んでいって、確かめてみたい。と思っていました。

 そこで、みなで外に出てみようということになりました。

 ところがそれを、カリトの長、チリカが止めました。

 外に出てはいけない。外に出てはいけない。

 それしか、チリカは言いませんでした。

 カリトの住人が何度も聞いても、首をたてには振りませんでした。

 カリトの住人は、一時期外に出ることをあきらめましたが、一度気になりだすと、住人の意識は、外の世界へと飛んでいきました。

 クウクは、もうろうとして、サンゴ礁に頭をぶつけ、リンは、海藻をせんていしようとして切り裂き、マクニは、砂の城を作ろうとして、失敗しました。

 カリトは大変なことになりました。

 カリトの住人は、ガマンが出来なくなり、チリカの忠告も聞かずに、海から外へ、飛び出していきました。


 深い海の奥底で暮らしていたカリトの住人には、太陽の光はあまりにもまぶしすぎました。

 ────その光で、ほとんどの者の目が、視力を失いました。

 海水から酸素を得ていたカリトの住人は、ほかの方法で、酸素の得る方法を知りませんでした。

 ────酸素不足で、海に戻ろうにも、目が見えないので、もう、どこが海だが分かりませんでした。


 数え切れないほどのカリトの住人が砂浜で、息絶えました。

 海には、クウクがぶつかったサンゴ礁、リンが切り裂いた海藻、マクニが失敗した砂の城と、チリカが残されました。

 チリカの悲しみは、それはそれは深いものでした。

 チリカが、本当のこと説明したところで、カリトの住人は理解できたでしょうか。

 冗談を言っているとばかり、思うのではないでしょうか。

 ────以前あったその思いは、チリカには、なくなりました。

 なぜ、きつく止めることができなかったのか。

 分かっているのに、なぜ言わなかったのか。

 ────その疑問が、チリカの頭の中で、渦巻きました。

 チリカは、リンの区域の住人でした。

 『先読み』は、誰にも負けない自信がありました。

 ですが、チリカは、カリトの住人には秘密にいていました。

 カリトの長がリンと知れたら、リンは得意になってしまい、ほかの住人よりえらいんだと思い込んでしまって、区域差別が起こるのではないかと、心配したからでした。

 今となっては、住人がいないのですから、差別など起こるはずがありません。

 言うべきでした。

 自分はリンの住人だと。そうしたら、カリトの住人は信用してくれ、こんなことには、ならなかったはずです。

 なぜ、そのことが『先読み』で知ることが出来なかったのか。

 チリカは、自分の能力の中途半端さに、腹が立ってきました。

 誰にも負ける自信がなかった『先読み』で、自分が負けたような気がしました。

 チリカは、悲しみのあまり、数が月の後、暗い海底で、息絶えました。

 その、チリカの魂は、あまりにも住人を思う気持ちから、神となりました。


 チリカは、今も、自分がしたことを悔やみながら、海の平和を守っているということです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ