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 「何故、怒っていたんでしょうね。シャルントさんは感謝しているようでしたけど」

 ロゼは、微かに怒った顔を見せながら、ライに言った。

 「当たり前だよ、リンの『先読み』が当たらなかった上に、マクニに奴に、元通りにされちゃったからね。リンは、他の区域よりもプライドが高いから、自分たちの信じるものが、なくなったんだよ。それに、シャルントじいさんは、リンの長だ。区域に一つあるといわれる宝玉を守る長だ。プライドが傷つけられたとしても、元に戻ったんだ。自分より、リンを一番に考える──それが長だ」

 「そうですか。……でも、何でライさんは、分かっていて、元通りにしたんですか?」

 ──悔しかった。と言えば、この低い魔力の子は納得するだろうか。

 ライは、ロゼの質問に答えないで、考えた。

 いや、無理だな。

 ライは、すぐに答えを出した。

 ロゼだけじゃない。誰にも分からないだろう。

 なぜって、自分でも分からないのだから。

 あのとき────リンがあらしで、全壊状態だったとき。

 ライは、ライではなかった。

 異常なことがあると、パニックになってしまう。

 そして、さまざまな感情がうごめき、自分か思っていることと、反対のことをしてしまう。

 自分が自分ではなくなるのだ。

 その状態がライの、一番嫌いな状態だった。

 だから、異常なことが起きても正常に保とうとした。反対の自分を外に出さないようにした。

 ──出来なかった。それが、ライは、とっても悔しかった。

 カーニャにはかなわずとも、ライは、魔力は相当なものを持っている。

 ──手足が思うように動かない。

 それじゃあ魔法をかけよう。

 体を少し浮かせよう。

 皆に気づかれないようにしよう。

 ──何でも出来た。

 出来ないものはないと思っていた。

 魔法があれば、これさえあれば、何でも出来る。

 それが、これだ。

 あらしが来て、リンがめちゃくちゃになった。

 何故、未然に防げなかった? 何でも出来るんじゃなかったのか…………。

 「ライさん、ライさん」ロゼがライを呼んでいた。

 「なに?」ライは、少しぶっきらぼうに、答えた。

 「これからどこに行きます? シャルゴくんは、帰ってしまいましたし……」

 そう、シャルゴは、両目に涙を浮かべて、ライをにらみつけて去っていったのだ。

 「……………………」

 もう、ライはロゼの悪夢を解決することが、いやになってきた。

 『そんなこと、言うもんじゃないよ』ズキリという頭の痛みとともに、カーニャの声が、ライの頭に響いた。

 『そんなこと言ってもさ、もう、どこ行ったらいいか分かんないよ』ライは、魔法を使って、カーニャに返事をした。

 そして思う、カーニャは、ライの行動と思考を今まで全部読んでいたのだろうか。その可能性は十分にありえた。ライは、すこしムッとした。今度は、思考を読まれないように訓練しなければいけないな…………。

 『…………クウクに行け』数分の沈黙の後、カーニャは、言った。

 『……クウク』

 昨晩、ロゼとシャルゴと共に、行こうとしていた所だった。

 『そうじゃ、そしたら、全てが分かるじゃろう。……シャルゴがいなくても、何とかなるじゃろうて』

 ──プツン。ライの頭の中で、カーニャの魔法が切れた音がした。

 「なぜ、最初からカーニャさんが、来てくれなかったのでしょうか?全て分かっているようすでしたよね」そのロゼの言葉をきいて、ライは、目が飛び出しているのではないかと思った。

 「え?なんで、ロゼが知っているの?」

 「…………だって、カーニャさん、私にも魔法で話しかけてくれましたから。ライさんの声も、聞こえていましたよ」

 「ああ、そう…………」

 それは、絶対にありえない。

 ライは返事をしながらそう思っていた。魔法で話をするというのは、送信者一人に対して、受信者一人であり、二人で会話をするものだ。三人でなんて、いくらカーニャの魔力が強いといっても、それは不可能である。

 だが、ロゼは、ライとカーニャの会話を知っていた。

 どうしてか。

 ライは考えた。それは、ロゼが魔法でライの思考を読んでいたからだ。

 ロゼは、魔法を使った後に出る匂いがなかった。いや、匂いすらなくとも、意識的に、魔法を使っていれば、何らかの変化が見られるはずだ。

 だとしたら、無意識のうちにやっていたのか…………。

 もしかしたら、ロゼは、そうとうな魔力を持っているかもしれない。

 ライはそう思っていた。



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