陰謀
渋谷の大型スクリーンに、赤ん坊を抱きかかえた母親らしき人物が目を丸くして映しだされていた。
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白川と川内は龍造寺家を訪れていた。
「かわいいお子さんですね。」
「ごめんなさいね、ベットの中で。」
「いえ、結構ですよ。」
ベットの中には赤ん坊をあやす龍造寺の当主、龍造寺彩芽がいた。そしてベットの側には龍造寺風雅がいた。
「この度はご出産おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
白川と龍造寺彩芽の会話にはどこかよそよそしい空気が流れた。
「それで、次は富野を産むつもりですか?」
白川の発言に、龍造寺彩芽は思わず赤ん坊をあやす手を止めた。
「そこにいる赤ちゃんは相浦ですよね?」
思わず龍造寺彩芽の顔が引きつる。
「どうも最初からおかしかったんですよ。テロリストに襲撃されたコールセンターは龍造寺グループの傘下のものだった。つまり、富野をスパイとして送り込む為に仕組んだ罠だった訳ですね。そして龍に電話させたのは相浦の死を見せつけ、この世に存在しなくなったと思わせるため。最後にSPDOを破壊させたのは、相浦のクローンを作るという交換条件のもとに行われた。つまりあなたがしたいのは、自分の傘下の病院をSPDOにすることだ。」
「そ、そんなバカなこと・・・。」
龍造寺彩芽は震えた声で戸惑っていた。
「SPDOが手に入れば政府からの膨大な資金を得ることができる。さらには政治家や資産家のお偉いさんたちのクローンを作れるというデモンストレーションを相浦でやったんじゃないんですか?」
白川の推理に、龍造寺彩芽はぐうの音も出なかった。
「それから、今のやりとりは渋谷の大型スクリーンに映しだされていますよ。」
そう言って、白川は隠しカメラ付きの万年筆を胸ポケットから取り出した。
「今渋谷は騒然としてるでしょうね。なんといっても龍造寺財閥がこんなことしてるなんて。」
龍造寺彩芽は世間に陰謀をばらされたことに震えていた。
「それでは失礼します。」
そう言って白川と川内はお辞儀をして去ろうとした。
「まてよ。」
そこへ龍造寺風雅が川内を引き止めた。
「おれといっしょに、またやりなおさないか?」
川内は冷ややかな目で龍造寺風雅を見つめた。
「龍はそんなお世辞のきいた言葉なんて使わないバカだったわ。さっさと母親の洗脳から解かれなさい。」
そういって川内はそっぽを向いて、白川と一緒に立ち去った。




