決戦 秋葉原
ーまさか・・・!
そこには紛れもなく相浦が居た。
飯塚の気配に気づいたのか、相浦がのそりと起き始めると、散乱していた石の礫は相浦の手足となった。
「なんだ小僧・・・」
ドスの効いた声で、気だるそうに相浦は起き上がった。飯塚は思わず緊張し、顔を引きつらせる。
「け、警察だ、両手を上に上げろ!」
飯塚は震える手で拳銃を向けながら、マニュアル通りに相浦に言った。
「こうか?」
そう言って相浦が手を上げた瞬間、側のビルのコンクリートが剥がれた。
「おらぁ!」
相浦が雄叫びをあげながら、剥がれた人間大のコンクリート片を投げつけてきた。
思わず飯塚はバリアを貼った。するとコンクリート片はバリアにぶつかって飯塚の足元に落ちた。
「くそっ、バリアか!」
相浦がくやしがる一方、飯塚は思わず足がすくんでいた。
ーヒーローになるチャンス、ヒーローになるチャンス・・・
飯塚は白川の言葉を思い出し、自分を鼓舞した。
「うおおおおおおおっ!」
飯塚はバリアを貼ったまま雄叫びをあげて、相浦に向かって走っていく。
相浦は飯塚のバリアをいとも簡単に石の礫の右腕で跳ね返す。飯塚は思わずもんどりうって倒れた。
次の瞬間、またもや巨大なコンクリート片が飯塚を襲う。飯塚はバリアを貼って、必死にコンクリート片の重みに耐える。
「バリアがあっても下敷きになればいづれは潰れるぞ、くくくくくっ。」
相浦は余裕の表情でもがく飯塚を見ていた。
その頃、白川・川内・富野もその場に到着し、物影から様子を見ていた。
「何やってんのよ飯塚!」
思わず川内は飯塚に向かって叫ぶ。それを白川がとっさに川内の口を塞いだ。
「おや、仲間がいるのか。隠れてないで出て来いよ。」
相浦は飯塚を押しつぶしながらアスファルトの礫をいくつも空中に舞い上がらせた。
「やめろぉー!」
飯塚は立ち上がりながらバリアでコンクリート片を跳ね返す。
「くっ!」
それを相浦は右手で粉砕した。
「小僧の割になかなかやるな。」
「うおおおおおおおっ!」
再び飯塚は相浦に向かってバリアを張りながらぶつかろうとした。
その時、再び飯塚は跳ね返されたが、それは相浦にぶつかった訳ではなかった。
どこからか、ロシア語のような言葉が飯塚の耳に入った。相浦を見てみると、ドーム型のバリアに相浦自身が包まれていた。
ー仲間がいるのか?
そう飯塚は思ったが、当の相浦は突然バリアに包まれ動揺している。みるみるうちにそのバリアは相浦を押しつぶそうとするかのように縮小していく。
「まさか、あの女がっ!」
川内は以前の女医殺害の女の事を思い出して、声のする方へ目を向けた。そこにはビルの屋上で本を開きながら何かを唱える女の姿があった。
「まさかあの女っ!」
そう言った瞬間、富野が素早く川内の麻酔薬を盗んで川内の首筋に打った。
「くっ・・・。」
川内は富野の打った麻酔でその場に倒れこんだ。
「これでいいでしょ?」
富野は白川に向かって言った。白川は黙って頷き、相浦の様子を伺っていた。
すると、相浦の異変に気がついた。
相浦は急に口元から泡を吹き、バリアの中で倒れこんだ。
呪文を唱えていた女も唖然としている。
「こんなはずじゃないのに。」
思わず女と白川はつぶやく。
相浦を包んでいたバリアは解け、白川は倒れた相浦に駆け寄った。
相浦の脈を取ると、すでに止まっていた。
今回も川内は噛ませ犬ならぬ噛ませ狼でした。




