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僕シリーズ

僕、未来

作者: 春風 優華

やりたいことがたくさんある。その中でも今は一番、小説家になりたい。物語を綴る楽しさは、たとえ一時しのぎだろうと、やさぐれた僕の心を癒してくれた。


初めて物語を書いたのは、小学四年。自由帳にイラストつきで、本物の本を参考にしながら書いていた。可愛らしく単純なお話だったことを覚えている。あの頃は本当の意味で人を好きになることなんて知らなくて、ただ優しいとか面白いとかそんな理由だけで好きを勘違いしていた。単純明快、だからこそ可愛らしい。だけど、あのときから僕の人生の歯車は、上手く回らなくなった。


僕は変わった。単純明快な僕から、複雑怪奇な僕に。人と同じ考えを持つことが嫌いで、人に真似されることも、真似することも、嫌い。僕という存在が他人に侵されることがとにかく嫌だった。

そのくせ弱虫な僕は、結局なにともなく愛想笑いを浮かべるしかなくなった。本当の気持ちなんて、誰にも言えやしなかった。


そんなとき僕は再び、僕の中にあるお話を綴り始めた。今度は、紙とペンを手にとるのではなく、携帯電話を片手に。書き出したら止まらなくなるという感覚を覚えた。楽しかった。僕の中にいる全くの別人が、画面の中で踊っている。泣いて笑って、怒ってまた笑って。誰かを愛し、大切なものをなくし、新たな何かを手に入れる。僕には描けない人生を、未来を、たくさん僕に見せてくれた。一緒になって僕も百面相した。


でも、いつからだろう。悲しそう。夢を描くはずが、絶望を、悲劇を生み出した。いつしか僕は、物語が書けなくなった。前みたいに踊らない。僕はいつからこんな、こんな悲しいものを書くようになってしまったんだろう。主人公も脇役もいない世界に、僕はなにを綴っているんだ。


読む人に希望を届けたいと思って書いていたはずが、ただの思いの集積場。僕の狂いが、物語を狂わす。こんなんじゃもう、綴れないよ。悲しみの歌はもう聴きたくない、喜びの舞を観せてくれ。


僕は必死になって何かを求め出した。答えがあるのかないのか。でも、そこに未来があるのだと、そう感じた。人々に僕の物語を読んでもらいたいと願ったあの日、輝いていた。ひたすらに未来をみていた。でも今はどうだ。未来が見えずにもがいてもがいて、過去ばかり追う無謀人。一体何をやっているんだろう。


未来が見えなくなる恐怖。一体何が、僕をこんなにも狂わしていつたのだろう。


ふっ……ははは、あはははははは! ふははははははははははははははは!!

消えてしまえ、消えてしまえ、消えてしまえ! 見えない未来なんて、なくなればいい!

存在しないものなんて、追う価値もない! 求める理由もない!

そうだ、そうなんだよ……!!



だからもう、諦めよ。


終止符を。僕は、僕の中にあるすべての物語を終わらせる前に、僕自身に、終止符をうった。


あぁ、どうかできるならば、僕を、あの頃に。楽しく物語を綴った、あの瞬間に……。


君の未来は輝きに満ち、僕の未来は存在しない。

また、来てしまったんだね。可哀想に。

本当に、抜け路なくなってしまうよ。

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