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第九章 三月十六日・信也の部屋・午後六時
「ちょっといいかな?」有賀が園田のアパートを訪ねた。
「またですかぁ。」
「何度もわるいなぁ。ちょっと新しい情報を仕入れたもんでな。あの日の三時過ぎに、近所で子供をおぶった男が白いカローラから出て来る所を見たという人が現れたんだが…。お前も白いカローラを持ってたよな!」
「白いカローラなんて、どこにでもあるじゃないですか。」
「運転していたのは女だそうだ。似顔絵も今作らせている。」有賀は勝負にでた。
「しょうがないなあ、じゃあ話しますよ。」
「立ち話も何だから、入らせてもらっていいか?それとも任意同行という事で付き合ってくれるかな。」(入られるのはまずいな)
「じゃ、お付き会いしましょう。」園田はいったん部屋に戻って着替えをした。
小さめの窓を眺めながら、目を閉じて文江との調整を確認してからドアを閉めると、有賀とともに警察へ向かった。有賀たちの乗った車が角を曲がると、階段の下に潜んでいた、大きな包をかかえた男が急ぎ足で園田の部屋に向かって行った。