第八章 某月某日・警視庁科学捜査研究所
「所長、一体我々は何を作ってるんですか?」
「それは、完成まではいえないなー。」
「五百万画素以上のCCDムービーカメラを厚さ五ミリ以内に収めるなんて、しかも半径十キロ程度の無線配信。まだどこの民間研究所も成功してませんよ。それに需要も必然性もない!」
「需要も必要もあるんだよ。我々にはな。民間じゃまだ必要としていないだけだよ。」
「それじゃ、彼が研究しているマジックミラーは何なんですか?」
「そうですよ。透過率三%未満のコーティング素材を探すなんて、無茶ですよ。」
「普通の方法で、マジックミラーと見破られてはだめなんだ。最近の犯罪者は妙に科学的になっているからな。」
「ところで、いつまでに課題のものを仕上げればいいんですか?」
「それなんだが、ちょいと現場の事情がかわってな。今週いっぱいに完成させるように言ってきた。
「ええっ、不可能ですよ!」二人は異口同音に叫んだ。
「そこを何とかするのが、一流大学出身の君たちの腕の見せ所だろうが。」
「無理なものは無理ですよ。カメラに関する研究施設の情報は、隅からすみまで調べつくしたんだ。」
「そうか、君たちみたいな優等生には思わぬ見落とし穴があるかも知れんな。」
所長は、正面にある端末の検索サイトを呼び出すと、検察項目にこう入力した。
『盗撮ムービー』
「このサイトをすべてあたってみるんだな。」