第六章 三月十六日・文野の部屋・午後一時
トントン。
「はい」文野友一は、ドアを開けた。
「すみません。警察のものですが。ちょっとお話を伺いたいのですがよろしいでしょうか?」疑問系ではあったが、NOを言わさない迫力があった。
「はい、何でしょうか。」
「三月十二日の午前一時位に隣の部屋に苦情を言いに行かれましたか?」
「はぁ?」友一はキツネにつままれたような顔をした。
「ええ、行きましたよ。でも、あいつらの方が悪いんですよ。」友一はいきり立った。
「いえ、あなたを責めている訳じゃないんです。その時に部屋の中には確かに四人居たのですか?」
「マージャンしてたみたいだから、居たんじゃないですか。中に入ったわけじゃないけど、靴もいっぱいあったし、あいつの肩越しにチラッと見えた部屋の中には二人位は座っていたと思います。」
「女性はいましたか?」
「ああ、よくきている女が正面に座っていたようでしたね。」
「他の男達の顔は分かりませんか?」
「いや、部屋の中には入らなかったのでわかりません。でも、いつものメンバーじゃないですか。ああ、そういえばもう一人が『さっさとしろよ。』って怒鳴ってました。」
「いつものメンバーというのはご存知ですか?」
「いや、時々集まってマージャンしているメンバーが居るみたいで、それ以外の事は知りません。殆ど付き合いはないですから。でも、あいつらしょっちゅう集まって騒いでるんですよ。以前もあんまりうるさいんで注意しに行った事はありますけど…。」
「それは、いつ頃ですか?」
「さぁ、一ヶ月くらい前ですかね。」
「最後にもう一つだけいいですか?
連中が集りだしたのはいつごろからか覚えていらっしゃいませんか?」
「そうですねぇ、私が気付いたのは半年くらいまえからですかねー。」
「ありがとうございました。」