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第十九章 三月十八日・警視庁特別情報室・午後二時
有力な情報を得られてホットしていた土屋が耳を疑った。これまでかなり警戒して殆ど独り言も言わなかった文江が事件の真相を語っている、しかも一糸纏わぬ姿で。土屋はある種の感動を覚えながら映像を再生した。もう一度文江の発言を確認してから、有賀と園田の居る取調室に向かった。
廊下の向こうから、有賀が軽い足取りでやってきた。
「有賀さん。文江が事件の真相をしゃべっています。」
「そうか、それは有り難いな。だが、今し方園田がゲロしたぜ。あの映像を見せたらな、顔面蒼白になっていたよ。あいつがプライバシー保護法に疎くて助かったぜ。」土屋の前を軽く口笛を吹きながら通り過ぎていく有賀を目で追いながら、土屋は退屈だった自分の仕事も終った事を素直に喜んだ。特別情報室に戻ると、ディスプレイに広がっているウインドウを一つずつ閉じて行った。
『コンビニ入り口』
『十字路』
『駅ホーム』
『文江の部屋』
『信也の部屋』