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第十八章 三月十八日・信也の部屋・午後二時
文江は風呂上がりの肌にローションを塗りながら、鏡を眺めていた。
「あした、日本から脱出できるのね。」これまでの緊張の連続に文江の心の声は、つい独り言になっていった。信也の忠告も忘れて。
「六ヶ月もの間、長かったわよね。あのぼっちゃんが毎週火曜日の三時に塾の返りにあの道を一人で通る事。父親が政界の大物で金持ちなこと。アリバイ工作にあの二人を巻き込んだ事。時々騒いで、隣のにいちゃんをよびよせたみせた事。あの人形も傑作よね。最後でちょっとドキドキさせられたけど。それも明日で終わり。とりあえず信也とハワイでバカンスよー。」