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第十四章 三月十八日・信也の部屋・午前十時
「パスポートを申請したらしいな。新婚旅行か?」
「そんなことどうでもいいだろう。」
「子供はみつかったか?」
「まだだ。」
「盗難車が見つかったな。」
「ああ、そうらしいな」
「お前の車は半年前に中古で買った奴だな。」
「それがどうした。」
「お前は、このところ車を使うような生活はしてないだろう。」
「どういうことだ!」相変わらずねちっこい刑事に信也も業を煮やしていた。
「家賃も滞納気味。仕事は食うに困った時にバイト程度。車を買う金も、維持する金もなかったはずだがな。それに、第そんな一必要がない。」
「おれの勝手だ。」
「どこの国に逃げるつもりだ」
「知った事か。」
「そんな金どこにあったんだろうかね?」
「勝手にしろ。」
「高野さんが奪われた十億円な、全てナンバーが控えてあるって知ってっか?」