第十三章 三月十七日・警視庁特別情報室・午後一時
建物の奥まった一角で、土屋が三台の大型ディスプレイを眺めていた。
「おーいおい、まっ昼間っからそんなことしてる場合かよー。でも、もしオレが一般人だったら、たちの悪い覗きだなぁ。あの二人、ボソボソボソボソ話しやがって、ほとんど聞き取れやしない。しかし科学捜査研究所も妙なもの作ってくれるよなー。おかげでズーっとここに座りっきりだぜ。」
「様子はどうだ?」有賀がやってきて尋ねた。
「はいっ、今の所有力な証拠になりそうなものはありませんが、文江が、こんなことを言ってます。」土屋は映像の一部を選んで再生して見せた。
「連中は盗聴にはえらく気を使っているみたいで、なかなか独り言も吐かないんですよ。まあ、だいぶ参っているようですけどね。」
「ああ。」有賀は、土屋の言葉に興味がないように生返事をして映像に見入っていた。
「もう一度再生して見てくれ。」
「何かありましたか?」土屋がいぶかしげに再生した。
「もう一度。」映像を見終わってから、有賀はため息をつきながら土屋を見下ろした。
「一日中ディスプレイを眺めているのも大変だな。」
「そうですよ。ストレスたまりますよ。」
「そうだな、たまには役得もいいだろうよ。あいつ髪を上げると結構美人じゃないか。それに、いいオッパイだ。」有賀は口を歪めて出て行った。