婚約を破棄されてムカついたので死ぬほどゴネ倒してやりました!
「エレーネ嬢、あなたとの婚約を破棄します」
「おーほほほ。 はあ?」
「あの日。私は酔っていた。あの日の私が何を言ったのかすら覚えてないが、もしも婚約ということを口走ったとしたら、それは過ちです」
「・・・」
「エレーネ嬢、あなたとの婚約を破棄します」
「ああ。ごめんなさい。それ、できないんです。婚約の破棄を破棄させていただきますわ」
この時から私、エレーネの終わりなき戦いの幕が切って落とされたのでございます。
「王子さま。私と婚約するのはそもそも国民の義務ですわ」
「エレーネ。意味がわからん。そもそも国民にそんな義務などないし、もしかりにあったとしても私は王子だ。国民ではない」
そう言い放つと目の前のワインをチビリと飲みふ~と甘い息をはきました。
「そ、そうきましたか。わかりましたわ。たしかに国民にそのような義務はありませんし、あったとしても王子さまは国民ではない。それはでも、それほど重要なことではないのです」
「え、エレーネ嬢。たった今、自分で言ったことだぞ!!」
王子様は激怒されました。
「王子様。自分で言っておいて? はて。自分で言ったのはどっちでしょうか。覚えていなければどんな約束や契約事もなかったことにできるのですね」
「エレーネ。勘弁してくれ。全く記憶にないのだ。まるであの夜の酒に何か薬でも仕込まれていたみたいに」
「なんということを。王子様は私があのときのお酒に何か薬物でもしこんだとでも……」
「もちろん、そこまでは言っていない。ただ、私はこの国の王子として婚約というような重大な事案を自分の記憶がない状態で承服するわけにはいかないんだ」
「承服もなにも。すべては過去。すでに終わったことですわ」
「わ、私は王子だぞ。私は私の望まない婚約を履行するわけにはいかん!」
「王子さま。例えば王子様は車をおもちですわね」
「ああ。もっている。もっているがそれが何か」
「車にカーナビはついていらっしゃいますか?」
「ああ。ついているとも」
「だとしたら、もし仮に家のテレビをすべて捨てたとしても、カーナビのアンプが私の電波を受信していると判断されますのよ。そう。毎夜毎夜、車にこもって私の映像を一人楽しんでいらっしゃると判断されますの。それは放送法で定められたことですわ。おーほほほほほほほほほほっほほ」
「エレーネ。おまえはNHKか」
そう言って王子はまたゴクンとワインを飲んだ。
その時、一匹のペルシャ猫がエレーネに近づいて尾でエレーネの足を撫でた。
「ミーちゃん!!ほらご覧あそばせ。ミーちゃんも私を家族として認めてくれているのです」
「ミーは関係ないだろ。そもそもミーが家族として認めているというなら、ミーと婚約すればいいのではないのか。ミーは独身だぞ」
ブチブチブチブチ
エレーネの首筋のあたりで妙な音がした。
「本当にそれでよろしいのですね。明日のスポーツ紙の見出しは、王子様との婚約が破談になったエレーネ嬢が今度はミーと婚約を発表するのロングタイトルで決まりですわ。メリー!!メリーはいますか。執事のメリーは!!」
「およびでございますか、エレーネ様」
メリーさんの羊が流れ始めた。
「メリー!デイリーの記者を呼んで頂戴。大至急よ!!」
「エレーネ様。ご安心ください。そういうこともあろうかとデイリーのヤマザキをすでに呼んであります」
「ええ!それは気がきくわね」
「失礼します。デイリーのヤマザキキミコです。新作のパンを是非ご賞味ください」
そういうと満面の笑みを浮かべて香ばしい香りのパンを全員に配りはじめた。
ミーは香ばしい香りに誘われてヤマザキに頬ずりをしました。
「メリー。私は記者を呼んでと言わなかったかしら。だれがパン屋を呼べといいましたか」
「大丈夫です。ヤマザキきみこはパン屋もやっておりますが、アルバイトで記者もやっております」
王子さまはそれを聞きながらまたワインをゴクリと飲んだのでございます。
「お話は聞かせていただきました。明日のスポーツ紙のトップを飾らせていただきます。王子様に婚約を破棄されたエレーネ様がやけくそで猫との婚約を発表するというのはとても国民としてもセンセーショナルなことだと思います」
「たしかにそれはセンセーショナルな出来事だ。きゃほー。では正式に私はヤマザキキミコ嬢に婚約を申し込むぞ!きゃほー」
王子様はそう言い放ち三本目のワインをガブリと飲まれました。
「まて。このクソ野郎」
私は王子の顔面にミーを投げつけてしまいました。
「ウギャアーーーーーァ!!!!」
これが王子様の断末魔の叫びでございました。
了
にゃーん♪




