体育祭の跡
三題噺もどき―はっぴゃくはちじゅうなな。
グローブを片手に、思いきりボールを振りかぶる。
――写真が黒板に写されている。
個人的にうまく撮れたつもりだったが、ピントが若干ズレているような……ちゃんと見なければ気づかない程度ではあるんだけど。
「これいいね」
「そう?ならいいや」
パソコンにつないだハブに、私のカメラのSDカードが差し込まれている。
次に写されるのは、同じく野球部だが、走っている様子。
先日の体育祭の、部活動対抗の際に撮った写真である。
この時は、私たちも一応選手扱いではあって、あと少しで走らないといけないというタイミングだったので、大変だった。
「何枚くらい出すんだっけ?」
「とりあえず、コレが埋まればいいって感じ」
言うのが遅くなったが、今は部活動中である。
放課後のガランとした理科室に、数名の写真部部員が集まっている。
雨のせいか、空気が冷えていて少し寒い。ここ数日はずっとこんな感じの気温だ。暑いのよりはいいんだけど、この時期に寒いと思うとは思っていなかった。
「……」
今日やることは、先月末あった体育祭の写真を選別して、廊下に張り出すものを決めることだ。その中でまぁ現像してほしいものがあれば、写真部に言ってくださいみたいなことをしている。大抵は顧問を通じて、他の部活の顧問から来ることの方が多い。あとは、同じクラスの人とかであれば。
「文化祭もあるんだよね」
「まぁ、それはそれぞれだから」
2学期始まってすぐにある文化祭は、写真部の展示が行われる。
大会に出したものを出したり、他に何枚かそれぞれ展示をする。写真を売ったりもして、それを部費に回したりと、まぁ、文化祭もそれはそれで大変だったりする。
「これとか」
次に写されたのは、1年生の学年種目。
いやしかし、この若々しさというか……たいして年齢変わらないのに眩しく感じるものがあるよな。写真を撮っていると、時間が溶けるような感覚になり、あっという間に終わってしまったから、どんなもんかと思ったが、案外いいのを撮っていたようだ。
「2年生のから何枚か出した方がよくない?」
「それは昨日したのよ」
「あ、昨日部活結局したの」
「したよ」
先程から会話をしているのは、私と部長である。
他の部員はそれぞれで会話をしたり、それぞれのカメラで写真を見たりしている。
もちろん、黒板の写真も見つつだけど。さすがに、1,2年生からの意見は出てこない。
「あと何枚くらい?」
「でもそんなに……」
コレが埋まるくらいと先程言った、コレのサイズはよく見る大き目の方眼用紙だ。
写真のサイズはそのまま、L判で出すし、少し文字を入れたりするので、そこまでたくさんは貼らない。
「これ最後のやつ?」
「そう」
体育祭通しての最終競技。
写真に写る生徒達は、体育服は汚れ、靴も汚れ、時折膝に絆創膏を貼っている人も居る。こりゃ洗濯が大変そうだな……とふと思ったことを思い出した。
そんな中でも、表情は笑顔に溢れ、心底楽しいのだと語っている。
「これ1枚出そ」
「ぇ~」
写真を撮るのは好きだが、表に出されるのはあまり好きではない。
大会は出さないといけないから別だけど、学校内で出さなくても……あの子に見せるだけで充分なんだが。
「いいじゃん」
「いいけど……」
部長の決定には、ただの一部員である私は逆らえない。
副部長は別の子なので。私はほんとにただの一部員。
「あと何枚か」
「もうあんまり撮ってないよ」
一応の撮影係のメインは1,2年生だったのだ。
カメラを持ってはいたし、それなりに撮ってはいたけど枚数はない。
「いや、結構ある方だよ」
「ぇ、そうなん」
その後も、写真を写しながら、これはどうだこれはと、選別していった。
貼りださないものの中では、何枚か大会に出せばと言われたが、まぁ色々あるので大会には無理だろう。許可取りに行くのがな……。
お題:グローブ・洗濯・溶ける




