7ー王都からの降伏状
ある晴れた午後。
私は、いつものようにパンの耳を焼いていた。
リスが火加減を見守り、ウサギが皿を並べ、インコが「焼きすぎ注意クエッ!」と叫ぶ。
いつも通りの、穏やかな森の朝だった。
「誰か来たピヨ!!」
そのとき、森の入り口に見慣れない使者が現れた。
「……あれ、王宮の制服?」
インコがすかさず偵察に飛び、戻ってきて報告した。
「ピヨ! 王都からの正式な使節団ピヨ! しかも……全員、動物連れピヨ!」
やってきたのは、王子殿下フィンを筆頭に、王女殿下リゼ、王妃、そして王都に住む貴族たち。
その全員が、肩や腕にペットを乗せ、背中には“白旗”ならぬ“白い猫じゃらし”を掲げていた。
「ミナ……お願いだ。 王都を、助けてくれ……!」
王子殿下が差し出したのは、一通の手紙だった。
【王都公式文書】
件名:降伏状
差出人:王都動物管理局(実質、猫、犬、フェレット、カメ、インコ、金魚)
内容:
・王都は現在、ペット不足により、ストレスで精神的に崩壊寸前。
・王女殿下の猫、ミルフィー様が「ニャーニャー!」『ミナを呼びもどせ』と毎晩鳴きわめいている。
・王子殿下の犬、ベルクは“執務室の椅子の上でしか寝ない病”を発症。 そしてトイレも同じく王子殿下の椅子やソファーでしかしない。
・王妃は、インコに話しかけても一切無視され、精神的ダメージ大。
・貴族は、王宮で飼われている金魚に糞で暴言を書かれ続けて、大ショック。
・つきましては、森の王国と正式に友好関係を結びたい。
・パンの耳、定期輸出希望。
私は、手紙を読み終え、しばらく沈黙した。
動物たちは固唾をのんで、私を見守っている。
ベルクは「ワン」と一声だけ鳴いた。
『ミナさんの判断に従うワン』
私はゆっくりと顔を上げ、王族たちに言った。
「……まずは、動物たちに謝って……ください。 “ごめんなさい”を言ってください」
王族や貴族たちは、全員そろって地面に頭を下げた。
「ミルフィー、ごめんね」
「ベルク、すまなかった」
「インコちゃん、……鳴いてくれない?」
「金魚様、糞ではなく、泡で返事を……あ、無視された」
その様子を見て、森の動物たちはざわめいた。
『……ちょっとは反省してるニャ』
『まあまあ、許してやるワン』
『クエッ! パンの耳くれるならOKクエッ!』
私は小さく笑って、パンの耳を差し出した。
「じゃあ、まずはお茶でもどうぞ。森流のおもてなしです」
こうして、王都と森の王国は、ついに“和解”の第一歩を踏み出した。
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