3ー森の平和と王都の悲鳴
森の朝は、王宮の生活や王都とはまるで違う。
「ミナ様、おはようニャ」
「パンの耳、今日もありますかワン?」
「クエッ! 今日の天気は晴れクエッ!」
私は、動物たちに囲まれながら、時間に追われることなく、のんびりと朝の支度をしていた。
ウサギが薪を運び、リスが水を汲み、フクロウが空から天気予報を叫ぶ。
森の生活は、ちょっと騒がしくて、でもものすごく平和で居心地が良かった。
その一方で――王都や王宮は地獄だった。
「王女殿下! ミルフィー様が、王女様のお気に入りのドレスを引き裂いております!」
「王子殿下! ベルク様が執務室の部屋の椅子の上にまた、おしっ……!」
とくに王宮のペットたちは、私の不在に耐えかねて、次々と人間たちに対して“問題行動”を起こしていた。
突然、陛下のペットの鷹が、命令を無視して、空を裂いて急降下! 王宮の旗をズバッと引き裂き、塔のてっぺんでドヤ顔。
「これが新時代の幕開けだ!」と叫んだとか叫ばないとか。
一方、王宮のカメは謁見の間の、玉座の上や広間のど真ん中で堂々と昼寝。
「謁見?知らん。昼寝こそ吾輩の務め」と言わんばかりに、玉座をベッドにして爆睡中。
フェレットは、目敏くカツラを付けている貴族を見つけては、彼らのカツラをひったくり、猛ダッシュでベルクのもとへ。
「任務完了!」とフェレットは、カツラを渡すと、ベルクはそれを王妃のティーポットに隠すという謎ムーブ。
王妃の紅茶に、わずかに毛が浮いていたのはそのせい……。
金魚は水槽の中で静かなる抗議。
「ミナ様カムバック」と糞でメッセージを描くという芸術的反乱。
掃除係が、大量の糞のため1日何回も水槽掃除をする羽目になり、泣いていた。
そして、インコの奇襲が始まった。
執務室で陛下がうっかり印章を机に置いた瞬間、「反乱!反乱!」と叫びながらインコが急降下!
印章をくちばしでくわえて、バサバサと飛び去った!
その印章は、王女殿下の部屋まで届き、ミルフィー様の前にポトリ。
ミルフィー様はドレッサーの椅子の上でふて寝しながら、「椅子を使う? あたしのベッドだけど?」と一言。
そして、肉球で印章をポイッ。
まるで紙くずでも転がすように、王の権威は床をコロコロ……。
それをフェレットがみつけて、ベルクに届け、ベルクはどこかの穴に隠すため……印章の紛失騒ぎが起き、大問題になる。
最後に、リスが登場。
王室の宝石箱をこっそり開け、ナッツと交換して去っていった。
誰も気づかず、王冠の宝石が全部ピーナッツになっていたという……。
侍従たちは震えながら報告する。
「ペットたちが……異常行動を起こしております!」
「……何やら、意思を持ち始めております!」
王都の混乱は、森にも届いていた。
インコの伝書便が、毎朝、私に最新情報を届けてくれる。
「ピヨ! 王妃が泣いてるピヨ! 宝石が何処かにいってしまったピヨ!」
「ピヨ! 王子が靴を探してるピヨ! 貴族がカツラを探してるピヨ!印章が何処かに行ったピヨ! ベルクが全て何処かに埋めたらしいピヨ!」
「ピヨ! 王女の着るドレスが、ズタズタになったピヨ! 着るドレスがないピヨ!」
私はパンの耳をかじりながら、ため息をついた。
「……みんな、そんなに、私のことを思って、怒ってくれているんだね……」
すると、ミルフィー様が木の上からひょっこり顔を出した。
『当然ニャ。ミナを追い出した罰ニャ。あの人間たちが、反省するまで許さないニャ』
『徹底的にやるニャ!!』
森の動物たちは、私を囲んでうなずいた。
『ミナさんは、ここでのんびりしていて、くださいワン』
『ミナ様、王宮のことは、我々に任せるクエッ』
私は苦笑しながら、パンの耳をもう一枚取り出した。
「じゃあ、今日もみんなで、森の掃除から始めようか」
こうして、王都が悲鳴を上げる中、私は動物たちと森でのびのびと暮らしていた。
そして、王宮での動物たちの“無言の抗議”は、まだまだ続いていた。
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