2ー森の中の歓迎セレモニー
王都を追われた私が、ひとり森へと足を踏み入れた瞬間
―― 木々のざわめきが止まり、空気がぴたりと静まった。
「……なんだか、誰かに見られてる気がする」
その直後、茂みの奥からウサギがぴょんと飛び出し、私の前にぺたんとひれ伏した。
続いてシカが優雅に現れ、頭を垂れて一礼。 フクロウは枝の上から「ホー」と敬礼し、リスたちは木の実を捧げ持って、私の前に整列した。
「伝説の動物使い様が来たぞー!」
「インコ界の英雄だって聞いたクエッ!」
「“パンの耳の聖女”って呼ばれてるニャ!」
どうやら、過去に助けた動物たちが、“口コミ”ならぬ“鳴き声ネットワーク”で、私の噂を広めていたらしい。
王宮でインコの羽を直した話、迷子のリスを王宮の庭で見つけた話、王女の猫に正しい爪とぎ場所を教えた話
――すべてが、いつの間にか、動物界で伝説化していた。
私は、皆の歓迎ぶりに戸惑いながらも、ポケットからパンの耳を取り出して、彼らに差し出す。
「……これ、いる?」
その瞬間、動物たちは歓喜の雄叫びを上げた。
「パンの耳だー!」
「神の食べ物ニャ!」
「ミナ様、最高クエッ!」
ウサギは跳ね回り、シカは涙を流し、フクロウは「ホー!」と三回連続で叫んだ。
リスたちはパンの耳を神棚に祀り始め、インコは「ミナ様! ミナ様!」と連呼する。
私は苦笑しながら、つぶやいた。
「なんでこんなことに……」
だが、動物たちの瞳は真剣だった。
彼らは、私を“仲間”としてではなく、“導く者”として迎えて入れてくれた。
その夜、森の奥に、私のための小さな小屋が建てられた。 ウサギが草を運び、カメが床を磨き、フクロウが設計図を読み上げる。
私はその中心で、パンの耳をかじりながら、静かに笑って皆の様子を眺めていた。
こうして、森の住人としての新たな私の生活が始まった。
そして、私の知らぬところで
――“動物王国建国”の第一歩が、静かに踏み出されていたのである……。
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