10ーインコの密告事件
森の王国が落ち着きを見せ始めたある日
―― インコの一羽が、慌てた様子で私のもとへ飛び込んできた。
「ピヨ!事件ですピヨ! 重大な密告が入りましたピヨ!」
私はパンの耳を焼いていた手を止め、インコの話に耳を傾けた。
「誰から?」
「匿名ピヨ。 でも、内容は……“森のパンの耳が盗まれている”ピヨ!」
森のパンの耳は、通貨であり、信仰であり、朝食でもある。
それが盗まれているとなれば、森の秩序が揺らぐ。
私はすぐに動物たちを集め、調査隊を編成した。
•フクロウが空から監視。
•フェレットが地上の隙間を捜索。
•カメがゆっくりと、しかし確実に足跡をたどる。
•インコは「密告ホットライン」を開設。
『犯人は、パンの耳を恨んでいるニャ』
『パンの耳を食べすぎた者かもしれないワン』
『クエッ!王都のスパイ説もあるクエッ!』
* **
数日後、フェレットが“証拠”を発見した。
パンの耳が、木の根元に大量に埋められていたのだ。
「誰がこんなことを……?」
そのとき、カメが静かに首を振った。
『これは……ベルクの仕業ピヨ!』
とインコがつぶやいた。
そして、ベルクは、切り株の上で昼寝をしていた。
そばには、パンの耳を埋めるための小さな穴がいくつもあった。
私はそっと問いかけた。
「ベルク、どうして……?」
ベルクは目を開けて、ぽつりと答えた。
『保存してただけワン。 冬に備えてだワン』
森の動物たちは、しばらく沈黙したあと、一斉にうなずいた。
『……それなら仕方ないニャ』
『冬は寒いワン』
『クエッ!備蓄は大事クエッ!』
こうして、“インコの密告事件”は、無事に解決した。
森の秩序は守られ、パンの耳は再び皆のもとへ戻った。
私は焚き火を囲みながら、インコに言った。
「密告って、時には……ただの誤解かもね」
インコは首をかしげて答えた。
「ピヨ!でも、話題にはなったピヨ!」
そして森は、今日も相変わらず平和だった。
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