9ーパンの耳外交
王都との和解からしばらくして
―― 私は、森の動物たちと“重大なある問題”に向き合っていた。
「パンの耳……足りないかも?」
森の住人が、急激に増えすぎたのだ。
もともと森に住んでいた猫も犬もインコ以外にも近隣から噂を聞いて集まって来た動物たち。
そして最近では王都から、森へ移住してきた貴族のペットたちまで、毎朝「パンの耳」を求めて列を作るようになった。
『ミナ、耳の供給が追いつかないニャ』
『ミナさん、パンの耳、配給制にするワン?』
『クエッ!耳の価値、上がってるクエッ!』
私は頭を抱えながら、王都から届いた“提案書”を見つめていた。
【王都提案書】
件名:パンの耳外交協定
差出人:王都穀物庁(実質、パン屋)
内容:
・王都より、週に一度パンの耳を輸出可能。 ・代わりに、森の動物たちによる“癒しツアー”を王都で開催希望。
・インコ劇場の出張公演、フェレットスパの出張施術なども検討願う。
・パンの耳の品質保証は“王妃の朝食残り”に準ずる。
私は静かにうなずいた。
「これ……悪くないかも」
森の動物たちは集まり、協議を始めた。
フクロウが議長を務め、インコが議事録を録音、フェレットが机の下で貴族の靴を漁っていた。
『パンの耳は、我々の命ニャ』
『外交は慎重にワン』
『クエッ!でも、王妃の残りならアリかもクエッ!』
こうして、“パンの耳外交”は正式に締結された。
森と王都は、パンの耳を通じて再びつながったのだった。
* **
その夜、私は焚き火を囲みながら、動物たちに言った。
「なんだか、世界って……パンの耳で動くんだね」
動物たちは一斉に鳴き声を上げた。
『ミナ、名言ニャ!』
『ミナさん、耳は力、ワン!』
『クエッ!耳で平和クエッ!』
そして森は、今日も平和だった。
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