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第8話 ルングリー

 入れ食いすぎて釣りじゃなく漁になっていた。


「なんのおもしろみもないな」


 釣られた経験がない魚ってのは釣り堀にいる魚くらいバカなんだな。


「散歩でもしてくるか」


 湖一周ってのもいいだろう。なかなか大きな湖だ、周り甲斐があるってものでしょう。


「どこかに行くのか?」


 用意して小屋から出ると、イーダが話しかけてきた。


「湖を一周してくる」


「おれも行く」


「別におもしろいことなんてないぞ」


 散歩なんだからな。


「構わない。山菜が採れるかもしれないからな」


「好きにしな」


 オレはオレのペースでやるだけ。イーダはイーダのペースでついて来たらいいさ。


 時計回りで一周することにし、行く手を遮る木々は切り裂いて行く。体を動かすのは大切だからな。


 二時間くらい進んだら休憩する。


 ルームからお茶を持ってきて二人で湖を眺めながら飲んでいると、白鳥みたいな鳥が飛んで来た。


「暖かくなると飛んで来るミーアだ。水草のところに卵を産む。夜だと簡単に捕れる」


 弱肉強食な世界。それを悪いとは言わない。ただ、生卵を食う習慣があることに驚いた。


「それなら鶏を飼いたいな。毎日食えるぞ」


「鶏は人から買わないと無理だな」


「まだ人が住んでいる村はあるんだろう? 夜に盗んで来たらいいじゃないか」


 野生の動物に食われることはある。盗むのも食われるのも同じだろう。こんな時代なら法などなんの役にも立たんのだろうからな。


「異界人から人のものは盗むなと言われている。人と争うと面倒だからと」


 なかなか常識人だったようだ。一人でいすぎて思考が単純になっていたよ。気をつけんとな。


「野生にはいないのか?」


「いるとは思うが、捕まえるのは難しいだろう。小さいし、動きが速いからな」


「それなら見つけたらオレが捕まえておくよ」


「頼む」


 なにか目的があったほうが人生に飽きないしな。人生を楽しむためのミッションだ。


 白い毛を生やした蜥蜴はあれ以来出現しておらず、モンスターらしいモンスターも現れてない。現れると言ったらこれだ。


「蜘蛛ばかりだな、ここ」


 手のひらに乗るくいの蜘蛛なら可愛いものだが、この世界の蜘蛛は一メートルくらいある。それも数十匹で現れやがる。


 もう何匹倒したかわからないが、こちらの強さを把握してくれないからこちらを見つけると襲って来やがるのだ。


 オレはうっすらだが、テレパシーを持っている。自分に向けられた意識を感じ取れたりするのだ。まあ、人の意識が多いとキャパオーバーとなり狂うが、人がいないところなら充分に感じ取れたりするのだ。


 蜘蛛にも明確な意思があるので、見られたらすぐにわかるのだ。もっとも、数十匹もいるので一匹一匹特定するのは無理だけどな。


「ルングリーか?」


「ああ、囲まれた。軽く四十はいるな」


 百とか二百とかじゃないからマシだよ。さすがに百匹も現れたら即撤退するわ。


「糸を張っていたりするか?」


「動きからして張っていると思う」


 蜘蛛の意識があちらこちらと動いている。オレたちを逃がさないよう糸で囲っているのだろう。無駄なのにな。


「糸が欲しい。頼めるか?」


「あいよ」


 地面に落ちている小石を集めて周囲に放ってやる。


 そこまで堅いわけでもなく、強度的には人よりちょっと強いってくらいじゃなかろうか? 石を飛ばせば簡単に貫けるくらいだ。


 それで半数は死んだので、把握も簡単になった。意思を向けたのからパイロで燃やしてやる。で、ハイ終了っと。


「食えたらいいのにな」


「湖に放り投げれば魚が食ってくれる」


 そして、その魚をオレたちが食う。食物連鎖はおっかね~。


「オレは糸を外すからイーダはルングリーを片付けてくれ」


「わかった」


 ルングリーの糸はお湯で煮出すとネバネバが消えて使える糸になる。釣糸もそれを使っていた。


 毛で覆われたイエティが糸なんて使うんか? って疑問をお持ちだろうが、異界人が糸の有用性に気がつき、お湯で煮出せば使えることを発見したそうだ。


 糸を編んで行き、ロープにしたり御座にしたりと、結構必需品として多用してたりするんだよな。


 テレキで糸を外し、木の枝に巻いていく。あとで煮出し、ゆっくりと解いていけば問題ないそうだ。


 すべてを巻き取るのは面倒なので五十本くらいで止めておき、あとでイーダたちが回収できるように地面に刺しておく。


「ん? 逃げたか」


 てか、逃げることもできたんだ。ちょっと認識を変えないといけないな。


「マリーダ。おれは戻る。仲間を連れて来る」


「あいよ。オレは先を進むよ」


 あとはイーダたちのお仕事。湖一周を止める理由にはならない。そこで別れた。


 それから蜘蛛に会うことはなく、暗くなるまで歩き続け、暗くなったらルームに戻ってお休みなさい。


 朝起きて来たら視界は真っ白に染められていた。


「靄か? 霧か?」


 その区別ってなんだっけ? 何メートル先が見えるかどうかだったはず? まっ、テレキで集めたら関係ないか。


 靄や霧は水分。払うのではなく集めたほうが早く晴れるのだ。


 視界がわかるくらいに集めて水が溜まったら湖へポイ。太陽が高くなるとともに晴れて行き、小屋のある対岸までやって来れた。


 そこに杭を打ち、周辺の草木をナイフで払い、テレキで整地する。


「次は桟橋作りだな」


 新たな目標が出来たことにフフっと笑ってしまった。

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