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第7話 マリーダ

「名前はあるのか?」


 家を作り出して数日。休憩しているときに突然訊かれた。


「ないかな? 親の記憶もなければ自分の記憶もないからな。必要もなかったし。そういうお前には名前はあるの?」


 まだ顔の見分けがつかんから、声をかけるときはそいつを見てしゃべっていたから名前を必要としなかったんだよな。


「ある。おれはイーダだ」


 ファーストコンタクトをしたイエティが名を口にした。他の者も名乗りを上げるが、まるで判別できる自信がない。なにかわかる目印をつけないと一生覚えれる気がしないよ。


 ……超能力が使えるのに顔の見分けもできないんだから不思議なものだよ……。


「名前な~。イーダが決めてよ」


 前世の名前も長いこと呼ばれてないと自分の名前とだと思えなくなる。誰かにつけてもらったほうが大事にできんだろうよ。


「いいのか?」


「うん。いいよ。つけてよ」


「わかった」


 考えに入った。


 カフェオレを飲みながら待ち、やっとこさ決まったようだ。


「マリーダはどうだ? 仲間にマリーと名づけられたものがいた」


「いいと思う。じゃあ、マリーダで」


 ってことで、今からオレはマリーダとなりました~。おめでとう~。


 ハイ。では、家造り再開っと。


 完全に春になった頃に家が完成。まあまあのできあがりだ。


「イーダ。石をたくさん集めてくれ。壁を作りたいからさ」


 嵐で家が崩壊するのも嫌だしな。二メートルくらいの壁を作っておこう。セメントの節約にもなるしな。


「わかった」


 イーダたちが石を集めてくる間にオレは畑を耕すとする。


 村の地下室で芋を見つけた。育て方とか知らんが、とりあえず植えてみよう。野生化してくれたらイーダたちの食料となんだろうよ。


 まずは小さな畑を耕して芋を均等に植えた。


 石が集まったのでセメントをこねくり回して石を積んではセメントで繋いで二メートルくらいの壁を作っていった。


 そう急ぐわけでもないから天気がいい日は釣りをしたり、山菜を探したらして過ごした。


 のんびり過ごしていても時が過ぎるのは早いもの。秋がやって来た。


「マリーダ。狩りをする。手伝ってくれ」


「あいよ」


 秋になると冬籠りの準備をしなくてはならないそうだ。


 オレと過ごすようなってからか、イーダたちの知能が上がったような気がする。


 やはり、ナイフや斧、いろいろな道具を使うようになり、いろいろなものを作るようになったからだろうか? 


 天気のいい日に鹿の群れがいるという場所に向かうとする。

 

 イエティの脚についていくのはしんどいが、これも体を鍛えるため。極力移動の際は自分の脚を使うことにする。


 半日近く歩き、鹿が集まるという場所に到着した。


「何匹狩るんだ?」


「大人のを狩るから八匹だ」


 つまり、一人一匹担いで帰るってことか。なら、解体は帰ってからってことね。了ー解。


「じゃあ、オレが追い込むよ」


 テレポで二十匹いる鹿の群れを飛び越えて大声を出すと、鹿たちはイーダたちの方向に逃げ出した。ナイス~。


 伏せていた状態から立ち上がり、大型ナイフで鹿たちの前脚を斬り落としていた。


 これまでは木の槍で待ち伏せして狩っていたそうだが、鹿は神経質ですぐに勘づかれて逃げてしまうそうだ。


 弓の練習をしているが、まだ狩りを出来るレベルじゃない。今はオレと一緒に狩りをして余った時間を練習に使っているよ。


 人数分の鹿を狩るこどができ、血抜きをしたら担いで帰るとする。


 帰る頃にはすっかり暗くなってしまったが、イエティは夜目がいいので困ることはない。ちなみにオレも遠視の応用で物体を通せば曇り空の下にいるくらいには見えたりする。


 ……まあ、ちょっとした誤差はあるのでイーダたちの輪の中に入れてもらって歩いております……。


 イーダたちはまだ洞窟に住んでいるが、何人かはオレの家の横に作業小屋を建てて暮らしているよ。


 鹿を捌くのにも適しているので、オレの家に向かう。


 到着したらすぐに解体が始まり、湖の水で内臓やら皮なんかを洗い、朝までにすべての作業を終わらせた。オレは先に休ませてもらったけど。


「少し休んだらどうだ? オレが見張っておくぞ」


「いや、大丈夫だ。交代して休んだから。今日はいい風が吹いている。肉を干すところまでやってしまう」


「これから暖かくなるのに大丈夫なのか?」


 腐るんじゃないの?


「乾いたら洞窟に運ぶ。風通しのいいところに吊るしておけば一つの季節は食うに困らない」


 イエティの知恵か。それでもイエティに転生したヤツには同情しかないな。よく同族を纏めて知恵を授けたものだよ。オレには無理だわ。


「それなら魚も釣るか。食えるんだろう?」


「食えるが、捕まえるのが大変だ」


「じゃあ、釣りを教えるよ」


 この世界の魚に前世の世界の釣りが通じるかはわからんが、そこまで変わらんだろう。針に虫を刺して放り込めば疑わず食うだろうよ。


「なら、頼む。魚は滅多に食えないからな」


 ってことで、釣竿に適そうな木を探してきますかね。教えるなら現地調達できるものやらないと意味はないからな。


「釣竿の材料集めに行ってくるよ」


「釜戸を使わせてもらうな。仲間に新鮮な肉を食わせたい」


「ああ、好きに使ってくれて構わないよ」


 イエティも焼いた肉に塩をや胡椒をかけて食うのが美味いらしい。いつか人との交易を考えないとダメかもな~。

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