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第6話 マニッシャー

 イエティのあとに続いて来た先は洞窟だった。


 まんまだな、と思っていたら洞窟の中は原始人レベルに到達していた。


「火、使うんだ」


「ああ。異界人が我らを進化させてくれた。と言っても異界人が死んでからは獣に逆戻りしているがな」


 進化しても指導者がいないと退化するのか。どんな理屈だろうな? 超能力を持っているオレも自身の超能力なんてよくわかってないけど。


「バックバ、って言ったっけ? それって種族名なの?」


「ああ。異界人が名づけた。知恵の獣という意味らしい」


 本当か? 適当につけたんじゃね? バックバってなんだよ? どっかの国の言葉か? わかりやすい名前をつけろよ。反応に困るわ。


「何人くらいいるの?」


「五十人以上いる。多いときは二百人以上いたそうだ」


「かなり昔のこと?」


「じいさんが生きていたときだ。バックバは百年は生きる」


「じゃあ、軽く見て三百年前か。確かに獣に堕ちるには充分な時間だね」


 四分の一に減るとか種の存続に致命的じゃん。ユーマとかになるのも時間の問題だな。


「食料は足りてるの?」


「少し前にマニッシャーが黒焦げになっていた。その肉がまだある」


 黒焦げ? って、白い毛を生やした蜥蜴のことか? あれなら確かに食いでがあるサイズだったな。


「白い毛を生やしたヤツ?」


「そうだ。あいつが住み出して食い物の調達が厳しくなっていた」


 イエティでも勝てない相手なんだ。力ありそうなのにな。


「バックバは肉を食べるの?」


 犬歯が生えているが、肉食って感じでもない。


「食えるなら肉でも植物でも食う。氷が解ければ魚も食う」


 つまり、雑食ってことか。


「人間も食べれるものってあったりする? あったら教えて欲しい。道具なんかを渡すからさ」


 あるなら料理に使ってみたい。前の世界でも美味しい食材はあったからな。この世界でもきっとあるはず。ゴブリンに割いていた時間を食材探しに回してもいいだろうよ。


 ……オレはグルメハンターになる、的な……?


「ああ。もう作るほどの知恵もなくなっている。もらえるなら喜んで教えよう」


 前払いとしてイエティでも持てる大型のナイフや籠なんかを渡した。


「湖の側に住んでもいいかな? こっちに移りたいんだ」


 せっかく作った住み家だが、人間と交流したいわけでもない。あっちをセカンドハウスにしてこっちを自宅にしよう。


「異界人が住んでくれるなら歓迎しよう。手伝えることがあるら言ってくれ」


 ありがたく許可をいただいたので、荷物持ちとして何人か同行してもらう。ルームに片付けるより運んだほうが早いし面倒がないだろうからな。


「ここに人間は住んでないの?」


 セカンドハウスに向かいながら尋ねてみた。


「住んではいたが、冬が長くなって段々といなくなった。もう長いこと人間は見ていないな」


 なら、オレはどこから来たんだ? まさかどこかの国のお姫様とかじゃないよな? ってわけないか。粗末な服を着てたしな。


「この村か。異界人が生きていた頃は交流があったそうだ」


 さぞや大変だったことだろうよ。見た目がもう人間と敵対しそうな感じだからな。


 セカンドハウスに着いたら皆にシチューを振る舞ってやるとする。


「食べれないものがあったら言ってくれな」


 雑食だから食えるとは思うが、芋とニンジンだけのものとする。玉ねぎとかダメだったら困るからさ。


「パンも好きなだけ食べていいから」


 フランスパンなら食い応えがあるやろう。


 一応、スプーンの使い方は忘れてないようで、シチューを掬って食っている。なんか奇妙な光景だ。


 オレもシチューにフランスパンを浸しながら食べる。同じ釜の飯を食うのは大切みたいだからな。人間とはやったことないけど。


「美味い。これ、美味い」


「美味い。初めてだ」


「人間はこんな美味いものを食っているのだな」


 流暢にしゃべれる(聞こえているか?)のはそう多くはない。ファーストコンタクトしたヤツ以外は片言だ。会話を楽しむってことしてこなかったんだろうか?


 ……オレも会話をするってのも久しぶりだったりするんだよな……。


「調理はしないのかい?」


「焼いて食うだけだ。木の実や山芋はそのままだな」


「塩は使わないのか?」


「岩塩が採れたが、それも昔のことだ。今は人間が住んでいた村を漁って調達している」


 進化はしたはいいが、人間との共存しなければ生きて行けないか。人間同士でも難しいのに、他種族ともなればもっと大変だろうよ。戦争とかに巻き込まれたくはないな~。

 

「橇って作れる?」


「作れない。必要ないからな」


 確かにそうだわな。大量に運ぶってこともしないだろうからな。


「じゃあ、作り方を教えるから作ってみてよ。頭を鍛えるには指先を鍛えるのがいいからね」


 イエティに作れるかな? と思ったが、そこまで不器用でもなかった。ナイフもノコギリも教えたらそれなりに使えた。


「何事も教育が大事ってことか」


 ワンマン経営で、下に教え伝えるってことをしなかったんだろう。衰退も納得だわ。


 材料はたくさんあるので三台作り、荷物や使えそうな道具を積んでバックバの住み家に戻った。

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