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第5話 異界人

「お、湖だ」


 木々の間を抜けたら氷りに覆われた湖が現れた。


「スケートとかできそうだな」


 てか、この湖にもモンスターがいるんだろうか? ネッシーみたいなのがいたら是非見てみたいものだ。


 テレキで持ち上げられそうな石を浮かべ、湖に放り投げてみる。


 厚さは充分なようで割れることもない。ネッシーみたいなのがいても氷りを割って出て来ることもないだろうな~。


「氷りが解けたら釣りにでもするか」


 枝や枯れ木を集めて焚き火をする。


「冬の焚き火は格別だな」


 火を見ていると心が穏やかになる。小屋でも作っちゃおうかな?


 地面に座り、湖を眺めていたらなにか踏む音が耳に届き、立ち上がって周りを見た。え? マナティー? じゃなくて、イエティ?


「マジ?」


 三メートルはあるだろう白い毛に覆われた猿のようなゴリラのような生き物。そいつが三十メートル先にいた。


 ただ、そのイエティの手には槍が握られており、革のベストを着ていた。


「こいつは驚いた。どんなバケモノが現れたと思ったら異界人とはな」


「異界人って、オレのこと?」


 しゃべったことに驚きはしたが、前の世界ではしゃべるゴブリンがいた。動揺するほどではない。


「そうなんだろう?」


「さあ、どうなんだろう? 前の世界で死んだら無理やりこの世界に生み落とされたからね」


 魂をこの体に移された、ってのが正解かもしれないがな。まあ、転生と言って構わないだろう。それを証明してくれる者がいないんだからよ。


「異界人って見てわかるものなのかい?」


「異界人は黒目で生まれてくるそうだ」


 確かにオレの瞳は黒い。金髪なのに黒目とは不思議なものだと思っていた。それが異界人の証だったとは。教えてくれてありがとうございます。


 ……イエティでも知っているなら全世界に知られているってことだろうな……。


「そんなに異界人が生まれてくるのかい?」


「それなりにいるらしい。バックバに生まれた者もいる。お陰でおれたちは知恵を持つようになれた」


 バックバってイエティのことか? え? イエティに生まれるとか可哀想すぎんだろう。てか、絶対、あの女が絡んでいるよな。まさか、ゴブリン駆除員として死んだヤツはここに生まれ落ちるようになっているってことか?


 なんというか、あまりにも理不尽すぎるだろう。オレはまだ超能力があったから二年以上も生きられたが、それでも二年半だ。そうでない者がオレ以上に生きるなんて無理だろう。数日で死んだヤツだっていたんじゃないか?

 

 それでイエティに生まれるとか、女に生まれたオレが幸運すぎんだろう。


「あと、異界人は言葉の壁がないそうだ。おれの言葉を理解しているのが異界人ってことを証明している」


 そうなの!? 普通に日本語をしゃべっているように聞こえるけど!


「……そ、そっか。もしよければ知っていることを教えて欲しい。もちろん、礼はさせてもらうよ。なにか欲しいものはある?」


 コミュ症でも相手が人間じゃないと発症はしない不思議。てか、イエティ相手にコミュ症を発症するヤツがいるんなら見てみたいもんだわ。


「武器があるなら譲って欲しい。おれたちでは作れる限界があるんでな」


 イエティが鍛冶とかやっている姿がまったく想像できない。いや、革のベストを着たイエティなんて想像したこともないよ。


「いいよ。ただ、そちらの体格にあった武器があるかわからないけどね」


 さすがにイエティ相手に武器を作ってやるヤツはおらんだろう。


「構わない。斧をもらえると助かる」


「わかった。とりあえず、その手に合いそうなのを見つけてくるよ。ちょっと待ってて」


 ルームに入り、タブレットをつかんでイエティの手に合いそうな斧を探してみた。


 イエティの手はオレの三倍は軽くあり、人間サイズの斧では細いし小さいだろう。オレがトンカチを持つような感じになるんじゃなかろうか?


 いろいろ探していたらイエティが持っても遜色のない斧があった。マジか!? なんのために作ったんだよ? てか、使えんのか? 五十万円もするぞ。


 気軽に買えるものじゃないが、異界人の情報は欲しい。必要経費と思って諦めるとしよう。


「イエティが持ってそうな剣? ナイフ? もあるな。どんな趣味人が作ってんだか。つーか、あの体ならこん棒で充分だろう」


 とりあえず斧を買う。重っ! 何キロあんだ、これ? 誰が使うんだよ?


 百キロはないのでテレキで持ち上げて外に出た。


「どんなものか使ってみてくれ。ダメなら違うのを用意するよ」


「わかった」


 斧を渡し、近くの木に切りつけた。


 さすがに一刀両断とはならないが、イエティの力には耐えたようだ。人間の探究心は恐ろしいもんだ。


「うん。いい」


「それはなにより。いい話を聞かせてくれたら刃物もやるよ」


 てか、作ったほうが安上がりなんじゃなかろうか? 廃鉄を買って火にかけ、イエティに打たせたら労力はあちらもち。あ、火を恐れたりしないよね?


「そうか。おれたちの住み家に来てくれ」


 村ではなく住み家か。どんなところかちょっと気になるな。


「オレが行ってもいいのかい?」


「異界人なら構わない。お前は話せばわかるタイプのようだしな」


 イエティのクセに人を見る目があるじゃないか。まあ、オレはコミュ症なのであまり人と話したことはないがな。

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