第46話 守護獣
「……はぁ? え? 成長期か……?」
リュムがさらに育っていた。まだ解放して五日だよ!? おかしいでしょう!!
「イママデタメテイタチカラヲツカッテイキノビテイタ」
冬眠か? 冬眠みたいなものか? いや、まるっきり違うわ! ほんと、どうなってんのよ、幻獣って?!
「さらに大きくなったりするのか?」
「イヤ、コレガモトノカラダダ」
それはなにより。それ以上はもう恐怖の対象だよ。
「全長五メートルと言ったところか? ハイエースサイズだな」
ん? よくよく考えたらマニッシャーもこのくらいじゃなかったっけ? この世界ではこのサイズが最大なのか? 湖周辺にいた生き物もこれ以上のものはいなかった。
「腹は膨れたのか?」
「アア。ヒサシブリニマンゾクダ」
気のせいか、リュムの毛の艶もよくなっているような?
「ツギハ、チガウモノガクイタイ」
へー。味覚とかあるんだ。味わっているような食い方ではなかったのにな。
「人は食わないでくれよ」
「ヒトハマズイカラクワナイ」
食ったことはあるんかい。ってまあ、不味いなら人を食う心配はないか。リュムと戦うとかしたくないしな。この状態のリュムに勝てる気がしないよ。
「じゃあ、帰るか。エリーダ」
反対側でリュムの毛をブラッシングしているエリーダに声をかけた。
「はーい!」
リュムに登って背に跨がったら村に帰るとする。
当然ながらリュムが巨大化したことに驚かれたが、エリーダやオレが恐れていないことに安心して、まず子供たちがわらわらと集まって来た。
「おねーちゃん。この子の名前はなんて言うの?」
小さな女の子がオレに尋ねてきた。あれ? 名前言ってなかったっけ?
「リュムって言うんだよ。この村を怖い獣から守ってくれるんだよ」
ってことにしてリュムのエサを飼ってもらうとしよう。羊とか牛を集めて増やしてくれたらエサ代が安く済むことだろうよ。
「マリーダ様。なんか大きくなってません?」
サーグが大きくなって帰って来たリュムに驚いた。
「これが元のサイズなんだってさ。村で羊や牛を飼うように言ってよ。リュムのエサにするからさ」
リュムが村を守ることも伝えてもらう。
「こりゃ立派に育ったものだ」
先生もやって来てリュムの大きさに驚いた。
「お疲れ様。鹿はどうだった?」
「見なくなったので帰って来た。この白虎の気配に恐れて逃げたのだろうよ」
オレらも見なくなったから鹿狩りを止めたのだ。
「それなら町に帰ろうか。スピリッツの本拠地を見つけたしね。先生の部屋も用意しようか?」
「どこか小さな家があったらそこに住みたい。わしは、あまり集団生活が得意ではなくてな、一人のほうが気が休まるのだ」
「それだと用心棒の体を成してないんじゃない?」
「……まあ、スピリッツにケンカを吹っ掛けて来るヤツはおらんだろう。なら、離れていても問題はあるまい」
まあ、確かにそうか。並みの相手ならブロイたちでなんとかできるしね。
「了解。望みに近い家を探すよう伝えておくよ。それまでは宿屋なり野宿するなり好きにしてよ。たまには本拠地に来て、アタシを鍛えてよ」
「ああ。任せてくれ。メシ代はしっかり稼がせてもらうよ」
「よろしく。アタシはまだこの村にいるからさ。お金は大丈夫?」
「使う暇がないよ。村ではただで食えるしな。まったくありがたいことだ」
充実しててなにより。いい人生にしてくださいな。
「じゃあ、町で」
と、去って行く先生。オレもあんな風に生きてみたいものだ。
村人とリュムの交流を持たせて受け入れられるようにする。
五日もいるとリュムは日常になり、村の有志が集まってリュムのサイズに合わせた家を作り始めてくれた。
女たちも手伝いに来てくれたので、食材を買ってお小遣い稼ぎをさせてやった。
「金ってのは偉大だね」
「なんだかこの村を発展させたほうがいいんじゃないかと思ってきましたよ」
金の勘定や管理をお願いしてたサーグがしみじみと口にした。
「それもいいんじゃない。開拓する地が広がっているしね。領主になってもいいんじゃない?」
「領主は勘弁してくださいよ。おれは商売がやりたいので」
この男も変わっているよな。領主より商人のほうがいいってんだから。だがまあ、それでいいのかもな。スピリッツとしてはサーグのような男のほうが纏まると思うから。
「じゃあ、村に宿屋を造ってみようか。アタシも泊まるところ欲しいしね」
借りている家はそんなに充実していない。なら、最初から充実したものを造ってくれたほうがありがたいよ。
「いいのですか?」
「構わないよ。サーグの好きにしたらいい。アタシは協力するよ」
オレが欲しいのは住みやすい環境。ひととおりのものが揃い、清潔で安らげる場所だ。それがどこでも構わない。
「ここって水が豊富なの?」
川はいくつかあるが、そこまで大きくはない。宿屋をやるなら水が豊かでないとダメだろう。排水や下水もなんとかしないといけないか。
「豊富なほうだと思いますよ」
「じゃあ、いい場所を探しておいてよ。ブロイに人を集めるように伝えておくからさ」
「ありがとうございます」
嬉しそうに笑うサーグ。上手く行くといいな。




