第4話 ナイフ
ブリザードは続いているが、家の中の改修ならできる。まずは穴を塞ぐとするか。
できることをやりながら発電機を買って運び出し、電動工具の使い方を学んだ。
日々はゆっくり流れ、ブリザードが止んだり荒んだりを繰り返す。一月くらいしてやっとこさ太陽が現れた。
「太陽があったけぇ~」
まあ、まだ気温は氷点下だが、太陽を全身で浴びるとその温かさがわかる。日光浴しなくちゃな。
透明のビニールシートを外に張り、デッキチェアを置いて太陽の光を全身に浴びた。
「ん? また吹いてきたな」
まだ一時間しか日光浴してないのに意地悪な天候だよ。
ビニールシートを片付け、その日は諦めて映画でも観ることにした。
のんびり家の修繕をしながら暮らしていると、気温が氷点下を脱し、二度や三度の日が続いた。
「冬の終わりかな?」
だといいんだが。薪もなくなってきたから伐りにいきたいんだよな。
さらに三日ほど様子を見て、晴れの日が続いたので木を伐りに出かけた。
周辺に森や林がないのでテレポで移動し、体を鍛えるために斧を使って木を倒した。
「女の子は非力だな~」
年齢による非力かもしれないが、自分と同じ胴回りの木を伐るだけで全身から汗が吹き出しているよ。
「風邪引いちゃうよ」
ルームに入ってシャワーを浴び、新しい服に着替えた。
「チェーンソー、買っちゃおうかな?」
非力すぎて心が折れそうだ。鍛えるのはランニングとかにしよう。
チェーンソーを買い、スパスパと伐っていき、テレキで運んだ。
薪も溜まったので周辺の探索に出ることにする。なにがあるか知っておくべきだからな。
ゴブリンを駆除していたときのスタイルで森があるほうへと向かった。
のんびり歩いていると、なんか遠吠えが聞こえた。狼か?
「この世界にも狼っているんだ」
前の世界では数えるほどしか見なかったな。この世界の狼はどんなんだろう?
って思ってたら灰色の狼が現れた。
「案外、小さいんだな。中型犬くらいか?」
もっと大きいのを予想してたんだが、思いの外小さかった。
「こんな環境なのに肥えてんな、お前ら」
考えるより豊かな地なんだろうか? あのモンスター以外、お前らが二種類目の生物だよ。
「なんだい? オレを食おってのか?」
十五匹くらいか? 悪いが、問題なく燃やせる数だ。
「あっちいけ。殺すぞ」
ゴブリンや魔物をたくさん殺してきた。もう躊躇いなど起こらない。が、無用な殺生をしたいとは思わない。襲ってこなければ見逃してやるぞ。
そんなオレの優しさも獣には通じない。涎を滴しながら襲ってきた。
テレキ縛り! で、狼の動きを封じた。
体調にもよるが、一体にかけられる力は百キロ前後。パイロと同じで三十は同時に縛れる。調子がよければ四十匹を縛ったこともあったっけ。
「襲う相手は選べよ」
狼たちを横に高速回転させて遠くに放り投げてやった。
「じゃーな」
別れを告げて先を進んだ。
森に到着したら近くの木に青いビニールをグルグル巻きにする。
やってきた方向を見てテレポ。振り返って方位磁石で方角を見る。
「北東か」
ルームに入り、長い棒と青い旗を買って外に出る。
サイキックで穴を掘り、山を築いたらその天辺に棒を刺して旗を取りつけた。
オレは自分が触ったものなら何キロ、いや、何十キロ先からでも透視できる。ただ、触ったものすべてが見えるわけでもない。思い入れが弱いものから忘れていくのだ。
方角を知るのはテレポや透視ができなかったり人前で使えなかったりしたときに備えてだ。
また森に戻り、方角を確認しながら中へと入った。
まだ雪が積もっているので食べれそうなものは生ってはいない。いや、仮に生っていたとしても食えるかどうかなんてわからんか。そんな超能力も持ってないし。
「お、鹿だ」
トナカイみたいにデカいが、角は敵を突き刺すかのように前に鋭く伸びている。食われるだけの存在だと思うなって主張しているかのようだ。
鹿はオレに気がつくと森の奥へと逃げていってしまった。
「捌き方を知っていたら捕まえるんだがな」
まあ、あんなデカブツを捕まえたところで持ち帰るための労力はしたくない。せめてウサギか鳥なら狩りたいな。
「いや、鳥は鳥でも恐鳥類は求めてないんですけど」
先を進んでいたら飛べない鳥さんとご対面。
足から頭まで三メートルはあるんじゃなかろうか? 冬の森にいちゃいけないものだよね? なにを食べたらそこまで大きくなれんのさ?
「お前もオレをエサにしようとしてんのか?」
そんなに美味しそうに見えるのか、オレ? まだ食い応えないだろう。もっと食い応えのあるのを狙えよ。
ギャー! と叫ぶと襲ってきた。
「野生なら相手の強さを察せよな」
腰に差した捻りナイフ(ジャッグコマンダー・トリダガーナイフ)を抜いて恐鳥類に放った。
テレキで回転をつけて左右から頭にドリル攻撃。あっさりと倒してやった。
「脚の一本なら持って帰れるな?」
んー。面倒だし止めとこう。脚を切り落とすのも大変そうだしな。
「狼たちのエサにでもなれ」
捻りナイフを戻し、血をテレキで払ってから鞘に戻した。