第39話 武道家ニート
村の女たちにお願いして食事を用意してもらった。
「よく食べるね~」
ル○ンみたいにガツガツ食うヤツ、本当にいるんだな。確かにこれなら十二時間でジェット機でも直せそうだ。
「もっとゆっくり食べなよ。たくさんあるからさ」
武道家も腹が減っては理性が働かぬ、か。食えるってことは大切ってことを再認識したよ。
「聞いちゃいないか」
まあ、限界まで食いなよと放っておくことにした。
一時間休まず食い続け、気絶するように眠りについた。
「また拾って来たんですか?」
サーグがやって来て呆れるように口にした。
エリーダって前例があるだけになにも言えない。拾って来たようなものなんでな……。
「異界人の子孫で武道家らしい。用心棒にいいかな~って思ってさ」
「マリーダ様で充分では? おれらもいますし」
「まあ、そうなんだけどさ。アタシも体を鍛えようと思ってね。平和すぎて体が鈍って仕方がないんだよ」
「剣ならおれらでも教えられますよ」
「そうなんだけど、サーグたちは商売があるでしょう。アタシに気を使わなくていいんだよ」
まだ野望の途中。オレなんかに構わなくていいんだよ。
「サーグたちは次の町に向かうことを考えていてよ。そう言えば、ここに残ったのは上手くやってる?」
「はい。スピリッツの支部員をやらせていますよ。なにかあればレンジとコルガに伝えてください」
二人が上手くやってそうでなによりだ。
「運びますか?」
「いいよ。武道家にはあまり触らないほうがいいしね」
いきなり反撃されたら堪ったもんじゃない。そのままにしておくほうがいいさ。
テーブルに突っ伏すタロウさんをそのままに、手頃な枝を拾って来て削った。買うより作ったほうが安上がりなんでな。
「ねーちゃん、なにしてんの?」
村のガキどもが集まって来てしまった。五、六歳くらいか?
「木刀を作ってんだよ」
失敗したのを興味がありそうなガキどもにくれてやった。削るの、案外難しいでござる。
ガキども消え、陽が沈みそうな頃、テレキバリアに人が入って来た。
「ぐっすり眠れた?」
「……ああ。よくわかったな」
「まーね。見た目とおりの年齢でもなければか弱くもないからね」
目の色はカラーコンタクトで変えてある。異界人とはわからないだろう。異界人の子孫じゃないかとは思ってそうだけど。
「なるほど。油断ならぬお嬢ちゃん、いや、見た目とおりではなかったな」
「構わないよ、お嬢ちゃんで。見た目とおりに呼んでくれて」
この姿はいい隠れ蓑になっている。お嬢ちゃんと呼ばれるくらい気にならないものだ。
「申し訳ないが、また食事を頼めるか?」
「わかった。すぐに用意してもらうよ」
近所のおねーさんに声を掛け、食事の用意をお願いした。
あれだけ食べたのに同じくらい食べている。その胃、どうなってんの?
「ふー。食った食った。こんなまともな食事は久しぶりだ」
「働けば?」
武道家を名乗っているなら力仕事はできんでしょうよ。
「わしは、普通の仕事に向いておらん」
ニートみたいなこと言ってんな。
「じゃあ、うちの用心棒にならない? 三食付けて給金も出すよ。あと、ついでにアタシに武道を教えてよ。肉弾戦って苦手なんだよね」
「よし、乗った!」
「よく考えてからでいいんだよ。軽すぎない?」
大丈夫か、この人?
「問題ない。わしは、普通に暮らせないのだ、こんなチャンスを逃すわけにはいかん」
「ま、まあ、タロウさん、いや、先生と呼ばせてもらうよ。いろいろ教えてもらうんだからね」
「うーん。それならお嬢ちゃんは不味いな。マリーダと呼ばせてもらう」
「それでいいよ。スピリッツの用心棒、コウノ・タロウってのを周知させるよ。しばらくアタシと行動してね。あと、お金を渡しておくよ」
持っているお金をすべて渡した。
「使ったら言って。アタシがいないならスピリッツの幹部に言ってもらって構わない。渡すように通達しておくから」
サーグに話を通して他に通達してもらうとしよう。
「まずはお風呂に入って身を綺麗にしてもらうよ。髭も剃って。スピリッツの用心棒が臭いと沽券に関わるからね。明日、町に行って服を買うから。今日はここに泊まってよ。お風呂は裏ね」
とりあえず、風呂を見せて、タオルと石鹸、ヘチマみたいなタワシを渡した。
「至れり尽くせりだな」
「その分、返してもらうよ」
武道家ニートを養うのだ、しっかり教えてもらいます。




