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リリーフ・オブ・ザ・ライフ~inTS  作者: タカハシあん


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第29話 酒

 馬車に戻ると、サーグたちが帰っていたので情報を交換し合った。


「あまりよろしくない元締めでした」


「なにか吹っ掛けられた?」


「たぶん、吹っ掛けられました。感じからして倍以上は取られたと思います」


 なるほど。それはなにより。クズなら遠慮することもないよ。


「まあ、素直に従っておいてよ。その間に調べておくからさ」


「殺るので?」


「必要ならね」


 おれに商才もなければ交渉力もない。邪魔者は力付くで排除するまで。それがオレのやり方だ。


「強そうなのはいた?」


「ゴロツキばかりでした。強そうなのは一人か二人と言ったところですね。数はかなりのものです」


 サーグも、と言うか、ここにいる連中は大体が兵士だった。ゴロツキに負けるような弱さはしていない。が、裏で動くのはオレの仕事だ。


「まあ、数が多いのはいつものことさ」


 ゴロツキもゴブリンも似たようなもの。ただ、駆除したところで報酬が出ないってのは悲しいがな。


「頼もしいことです」


「ゴロツキどもはアタシが受け持つから鋭気を養いな。お金はあるんだからさ」


 おばちゃん二人ではあっちのほうも発散出来ないだろう。この町の規模なら発散出来るところもあるはず。お楽しみくださいだ。


「バニとルーリは美味しいものでも食べて来ていいよ。結構、美味しいものがあったからさ」


「ありがとうございます」


「いろいろ食べて来ます」


 もうお洒落をして男を捕まえるって年齢でもない。いや、捕まえたいならそれでも構わない。幸せになる権利は誰にでもあるからな。


「しばらくは鋭気を養いないながらサンベルクの探索ね。仕事をしたいならそれでも構わないから」


「ゆっくり鋭気を養うとしますよ」


「それがいいよ」


 その日はそれで終わり、朝食を食べたら町の探索に出発した。


 大きい町ではあるが、繁華街と呼べるようなところは二、三ヶ所くらいしかない。前の世界なら冒険者がよく歩いているのだが、武装しているのは極少数。たぶん、傭兵なんだろうよ。


「住宅街に行ってみるか」


 魔物がいない世界だからか、家と家の間はそこそこ離れており、二階建ての家ばかり。繁華街に三階建てのものがちらほらとあった程度。住宅街は平屋ばかりだった。


「川が流れているんだ」


 水に困るわけではないのに、井戸の使用料は高いとか、アコギな商売をしている。欲張るといいことないのにな。


「なんもおもしろくないな」


 家に興味があるわけでもないし、なにが違うのかもわからない。人が住んでんだな~ってくらいしか思わない。飽きてしまったので、昨日のケバブ屋へと向かった。


「二つ、お願いします」

 

「おう。ありがとな」


 ケバブを買い、チャイを飲んでまた町の探索に。そんな日々を過ごしていると、ゴロツキが屋台をメチャクチャに壊していた。なんだ?


「場所代払えってさ」


 テレパシーも制御出来てきたようで、指向性を向けられるようになっていた。


「まったく、酷いもんだぜ」


「場所代払えばいいものを。無駄に意地張りやがって」


 野次馬の言葉であの若いにーちゃんに味方することを決めた。


 若いにーちゃんを蹴り飛ばしているゴロツキの右足に集中。血管を一本、ぶち抜いてやった。


「うぎゃあぁぁぁぁっ!!」


 あれ、地味に痛いヤツ。魔物でも血管一つ潰してやれば喚き散らしていたよ。ただまあ、血管に集中しなくちゃいけないので、戦闘中には使えないものだ。


 喚き散らすゴロツキ。兄貴分らしい男はなにが起こったかわからず怒鳴り散らしていたが、尋常ではないことは理解したようで、仲間たちに指示を出して運んで行った。


「エリーダ。意識を追ってくれ。方向がわかればいいから」


「わかった」


 相手の精神波をキャッチしたら追跡が出来るのだ、テレパシーってのは。


 エリーダの手を握り、殴られたにーちゃんのところに向かった。


「大丈夫?」


 屋台の瓦礫を退かして顔から流れる血を濡れタオルで拭いてやった。


「す、すまねぇ」


「カッコよかったよ。いい啖呵だった」


 ゴミクズは嫌いだが、こういうゴミクズと戦える男は大好きだ。勝てないとわかっていてもな。


「はっ。こんな状態でカッコいいもねぇよ」


「少なくともアタシはカッコよく見えたよ。さあ、これを飲んで。打撲の痛みを和らげてくれる薬だから」


 人が見ているので、ヒーリングは使わないでおく。薬ならまだ不審がられないだろうよ。


 打撲用の塗り薬を付けてやり、擦り傷には絆創膏を貼ってやった。


「おにーさんは、なに売ってたの?」


 二度と開けないようにしたからか、残骸からなにを売ってたかわからんよ。陶器らしき破片は散らばっているが。


「ん? この匂い、お酒?」


「ああ。ウイスキーって酒だ。異界人が伝えた酒で、うちで作っている」


 ウイスキーがあるんかい! スゲーヤツがいたものだ。よく飲めるまでにしたな! 


「知ってる。蒸留したお酒でしょう。貴重なお酒じゃなかったっけ?」


「ああ。長い年月を掛けて作ったものだ。クソ! それなのにあいつらは……」


 うん。オレの中であいつらを殺すと決めたわ。万死に値するとはこのことだ。

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