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リリーフ・オブ・ザ・ライフ~inTS  作者: タカハシあん


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第28話 屋台

 時間的に十四時くらいだろうか? 昼も過ぎてしばらく経つからか、食べ物系の屋台はやっていなかった。


「時間が悪かったか~」


 まあ、売れない時間にやったりはしないわな。


「食堂を探すか」


 これだけの規模の町なら食堂はたくさんあるはず。昼を避けて食べに来る者だっているはず。そう信じて探していたら、ケバブ屋があった。マジか!?


「異界人が広めたのか?」


 まあ、結構な数の元駆除員がこの世界に送られている感じがする。ケバブを広めても不思議じゃないか。先人たちに感謝しよう。こうして先人の功績を食べられるんだからな。


「美味しい!」


 ケバブは一回しか食ったことないが、あのときの味が蘇ってきた。これはそれだけの美味さがあった。


 薄く焼いた生地に肉と玉ねぎみたいなものが包まれ、独特な甘辛ソースがいい味を出している。これなら元の世界でも十二分に通じる味だ。


 本当に先人たちには感謝しかない。こんな美味しいものを残してくれたんだからな。オレもクソ女の被害にあった者のためになにか残してやりたくなったよ。


「おじちゃん。もう二つお願い」


 一つじゃ足りない。お代わりをしようじゃないか。


 さすがに二つも食べたら腹がはち切れそうだ。屋台の横で休ませてもらう。ちょっと動けそうにないや。


「ここは、美味しいものがたくさんありそうだ」


 そこまで美食を求める性格ではないが、これだけ美味しいものがあるなら気分は上々。それだけで異世界も悪くないと思えるよ。


「おじちゃん。なにか美味しい飲み物ってある?」


「それならそこのチャイを頼むといい」


 チャイ? ってお茶のことか? インドとかモンゴルとかからも拐っていったのか、あのクソ女は? ワールドワイドに拉致しすぎだろう。


 ……あのクソ女に一発かましてやれないのが本当に心残りだぜ……!


 とりあえず屋台でチャイを買っチャイな。なんつって。心はもうオヤジになっちゃった。


「悪くないかな?」


「甘いね」


 確かに甘いな。砂糖が入ってんのか?


「この甘いのって、砂糖なの?」


「黒糖だよ。南から流れて来るものだ。ちっとばかり高いが、チャイにはこの黒糖が一番合うのさ」


 黒糖まであんのかい! 元駆除員、この世界に順応してんな!


「確かに美味しいね。おじちゃんは、いつもここで商売してるの? また買いに来たいんだけどさ」


「ああ。ここの場所を借りているから」


 借りている? 場所代ってことか? ヤクザがいるってこと?


「別の入れ物にも入れてくれる?」


「構わんよ。大体のヤツがそうしているよ。ポットが欲しいならあそこだ」


 店主の指差す方向に陶器製のポットがたくさん売っていた。


 なんでも揃っているというのか、屋台が徒党を組んでいるのか、まあ、こちらとしてはありがたいと言っておこう。うん。


 ポットを買って来て、チャイを入れてもらった。サーグたちにも飲ましてやろう。


「お嬢ちゃんたちは帝国から来たのかい? 帝国貨幣を使っているみたいだが」


「うん。そうだよ。と言っても田舎のほうだから帝国人と言っていいかはわかんないけどね」


「戦争しているってウワサを聞いたが、本当なのかい?」


「う~ん。どうなんだろう? 元々いいウワサを聞かないからね。どこかに遠征したって話は聞いたことあるかな」


 こんなところにまで帝国のウワサが流れて来るんだ。それだけきな臭いってことなのか?


「戦争は止めて欲しいよね。物が流れて来ないとか嫌だし」


「そうだな。ここは特に辺境だから物が流れて来ないとか死活問題だ。帝国はいろいろ握っているからな」


 さすが元駆除員が建国したところ。生産とか物流をよく知っているよ。


「そうならないよう願いたいです」


「まったくだ」


 また来ますと告げ、一旦広場に戻った。


 サーグがいないのでどうしたのか尋ねたら、ここを仕切る元締めらしき存在のところに行ったとか。マジでヤクザがいるんかい!


「マリーダ様。飲み水をお願いしてよろしいでしょうか? ここ、井戸代を取られるんですよ」


「井戸代? ここ、水が貴重なの?」


「そうではないようですが、ここの元締めが井戸代を取っているようです」


 まあ、ヤクザなんてそんなもんだろう。権力維持や資金稼ぎと、組織を存続させるためにはいろいろ金を巻き上げないといかんのでしょうよ。


「了解。飲み水を運んで来るよ」


 二十リットルのポリタンクに水を容れて外に運び出す。


 ルームの水道光熱費は家賃に含まれているので、いくら使っても文句は言われない。川がないときはルームから運んでいたものだ。


 八十リットルもあれば飲み水には困らないだろう。また明日出せば体も洗えるだろうよ。


「食材の値段はどうだった?」


「少し割高でしたね。食材も元締めが握っているようです」


 ちょっと欲深くないか? 生かさず殺さずって言葉を知らないのか? ぼったくりする組織は先がないぞ。


「まあ、お金はあるんだし、わざわざ騒ぐ必要もないか。なるべく揉めないようにやってよ。理不尽は断っていいからさ」


 あちらも生きるのに必死なんだろうよ。帝国の金なんだから暴落したって構わない。


「解りました」


 一礼して動き出した。

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