第24話 父性愛? 母性愛?
オレもコミュニケーション能力が付いて来たよな~。
ゴブリン駆除しているときは人と関わることはなかった。町や村に行ったのは情報収集のため。終わればさっさと立ち去っていた。
それが見も知らずの子供に声を掛けてしまった。きっとイーダたちの交流がオレを育ててくれたんだろう。交流が大切だとようやく学んだよ。今さら? って突っ込みはいらんですよ。
「一人かい?」
うんと頷いた。五、六歳かと思ったが、もっと上っぽい。ちゃんとオレの言葉を理解しているよ。
「オレの心の声は聞こえているかい?」
「聞こえなくった。さっきまで聞こえていたのに」
やっぱり精神感応力が高そうだ。オレは超感覚波長を感じれるだけなのにな。
「オレにも君みたいな力を持っている。テレキネシス、物を持ち上げられる力で声を塞いだんだよ」
落ちている石をテレキで持ち上げると、びっくりした顔を見せた。
「君と同じ力だ」
「……あたしと同じ……」
「正しく言うなら君のはテレパシー。他人の心の声を聞いたりできる能力だね。小さい頃は他人の感情が怖かったんじゃない? それで大人たちから気味悪がれたんでしょう」
なるべく難しい言葉を使わず説明した。
「……うん……」
オレの見た目か、心を読んでか、マリーダは警戒を緩めている。
やっぱりイーダたちとの交流がオレの人間強度を下げているよな~。ゴブリンがいた世界なら見て見ぬふりしてたのによ……。
「もしよかったらアタシと一緒に来るかい? 超能力仲間がいてくれると助かるんだよ」
誰かを面倒見るなんて責任の重さに気が滅入ってくるが、超能力者がいることは心強い。テレパス系は鍛えたら精神攻撃も出来ると思うからな。
テレキバリアを解いた。ウソ偽りのない気持ちを感じ取ってもらうために。
マリーダは突然聞こえてきたオレの心の声に驚くが、嫌悪はないように見えた。
「……一緒に行っていいの……?」
「君が決めていい。仲間となる者に命令なんてしたくないからね」
自分の意思で決めてもらいたい。自分の未来は自分でしか築けないのだから。その一歩は自分で決めるべきだ。
オレの心の思いは伝わっているはず。女の子が決めるまで静かに待つことにする。
「一緒に行きたい! 連れてって!」
この子の爪の垢を昔のオレに飲ませてやりたいものだ。
「うん。一緒に行こうか、エリーダ」
マリーダに近寄り、手を差し出した。これからよろしくの握手だ。
それが伝わったようで、差し出した手を握ってくれた。
「まずは身なりを綺麗にしようか。どこかに井戸はある? そこで体を洗おうか」
「怒られるから使えない」
だからこの汚れか。酷いことする。
まあ、人間なんてそんなもの。今さら嫌悪するのも面倒だ。構うなだ。
マリーダの手をつかみ、空へとテレポ。この村に来る途中にあった川へとさらにテレポした。
「え? え? なっ、なに!?」
「テレポテーション。遠くに飛ぶ超能力だね」
川沿いのところに下り立ち、枯れ枝をテレキで集めて火を点けた。
テレキで穴を掘り、硬めたら川の水を移してパイロで沸かした。
「まずは体を洗おうか」
エリーダのボロ切れを脱がし、手持ちのタオルで顔を拭いてやった。いきなりお湯に入れるのは危険だからな。
「ちょっと待っててな。すぐ戻るから」
ルームに入り、お粥とバナナを買い、とりあえず女児用の下着と背丈に合いそうなワンピースを買う。必要なものはサーグに用意してもらえばいいしな。荷物にあるだろうよ。
外に出たらエリーダに抱き付かれてしまった。どうした?
「消えちゃったかと思った」
そのためにテレポして教えたんだが……配慮が足りなかったようだ。
「ごめんごめん。食べ物を取って来ただけだから大丈夫だよ。どこにもいかないから」
エリーダを優しく抱き締めてやり、落ち着かせてやった。子育てって大変なんだな~。
「ゆっくり食べるんだよ」
お粥をパイロで温め、ゆっくりと食べさせた。
食べ終われば少し胃を休ませ、バナナを小さく切って食べさる。
「これ美味しい」
「元気になったらもっと美味しいものを食べさてあげるよ」
小さな胃を満タンにしたら眠くなったようだ。
仕方がないのでテレキで体を浮かせ、ボロ切れを脱がせてお湯に浸からせた。
「……皮と骨だな……」
よくこれで生きていられたものだ。餓死していても不思議じゃないだろう。
ヒーリングが使えるかもしれないが、オレもヒーリングをかけておく。
完全に洗うと風邪を引きそうなので、簡単に洗ってやったら下着を履かせてワンピースを着させる。頭を洗うのはもっと肉を付けてからだな。
「ルームに入れてやれたらゆっくり寝かせてやれるんだけどな」
まさかここで人を入れられないことに嘆くとは思わなかった。まったく、人生とはわからないものだ。
「火を焚いておくか」
冷えるような季節ではないが、温かいほうがいいだろうとテレキで枯れ枝を集め、パイロで火を点けた。
念のため、テレキバリアを周辺に張る。もちろん、密封にしたりはしない。エリーダが暑くならないよう適度な温度にする。
「今日はオレがベッドになってやるか」
小柄なオレより小さいエリーダ。なんか可愛く思えてきた。
もしかてオレ、父性愛(母性愛?)とかあるんだろうか?




