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リリーフ・オブ・ザ・ライフ~inTS  作者: タカハシあん


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第23話 超感覚波長

 意外と服に需要があった。


 村は二百人はいるみたいで、行商が来るのはたまに。それも馬車一台なのでそう物流力はない。オレたちのような数で来たのは初めてのことらしい。


「マリーダ様。近隣の村にもウワサが回ったようで、もうしばらくいて欲しいとのことです。どうしますか?」


「構わないよ。急ぐわけでもないしね。気長にやってよ」


 皆も長旅で疲れているだろうし、遊びたいだろう。長いこと男だけの生活だったしな。


 帝国軍の中には女もいたが、ほとんどが四十後半。辺境に送られるような女だから……まあ、なんだ。深くは聞かないでおくれ。


 商売は丸投げなので、オレは村を見て回ることにした。


 辺境と言えば辺境になるところだから観光する場所もなく、仏閣があるわけでもない。教会らしきものはあったが、見るまでもないものだった。


「ルームで映画でも観てるほうがいいな」


 三十分もしないで飽きてしまった。田舎、なにもねー! 


 戻ろうとしたらなにか超感覚波長を感じた。


「え?」


 超能力には波長がある。


 これは元の世界でも感じたことがある超能力者が出す波長だ。この世界にも超能力者がいるのか?


 いや、駆除員が転生させられる先ならオレみたいな超能力者が駆除員として選ばれた可能性もある。元の世界には超能力者がそれなりにいたからだ。


「そう言えば、連れ去られるときに超能力者はオレで五人目とか言ってなかったか?」


 突然のことに記憶は曖昧だが、そんなことを言っていた気がする。


「まさか転生させられたのか?」


 なかなか上手くいかないとも言っていた記憶もある。オレが思う以上に転生者がいそうだわ。


 超感覚波長は円を描くように広がっている。感じからしてテレパス系か? フルオープンになっているな、これは。


 超能力は訓練しないと使いこなすことはできない。オレは小さい頃、エスパーマ○を観たから自分の力を知り、訓練できたから迫害されることはなかった。


 コントロールできないテレパスなど害を生むしかない力。よく精神崩壊しないものだ。知り合ったテレパス能力者は常にヘッドホンで音楽を聴いて身を守っていたものだ。


 波長はかなり強い。半径五十メートルか? 波長域に入ったところからして、あの家……というより半壊した家だな。よく住んでいるものだ。


「オレの声、聞こえているんだろう?」


 声は声でも心の声だ。精神感応力が高いと声として聞こえるらしい。


「似た感じがしたからオレを探ったんだろう? そちらが敵対しない限り、オレはなにもしない。このまま消えるよ」


 ちょっと気になったから来たまで。あちらが拒むならそれまでだ。


 そうは言ってもすぐに決断できないだろうから座って待つとする。時間はたくさんあるからな。


 気配消し、みたいな感じで超感覚波長を消す。いや、小さくしたって感じか。0にするには相当訓練をしないとならないからな。オレはテレパスは小さいからそこまで小さくはできんのよね。


 二十分ほど待っていたら、半壊した家から五、六歳の女の子が出て来た。


 風呂なんて入ったことないんだろうな。超感覚波長に触れていなければ女の子とわからなかっただろう。人間、ここまで汚れるものなんだな。てか、よく生きているものだ。


 ……テレパス以外にもなにか能力を持ってそうだな? ヒーリング系か? 自分の治癒能力を上昇させたりもするからな……。


「初めまして。アタシはマリーダ。君と同じ力を持った者だ。まあ、仲間だな」


 ──女の子?


 おっ。テレパスで話し掛けたりも出来るんだ。かなり強いぞ。オレの心、丸裸だな。


 テレキバリアで心を閉ざすことも可能だが、別に読まれて困る心は……持ち合わせてますね。テレキバリア、させてもらいます。


 深い部分をテレキバリアを張る。プライバシーは大切なんでね。


「見た目は女の子。中身は三十過ぎのおっさんだよ。心に触れたならわかっただろう?」


 心に触れたら性別は誤魔化せ……るかどうかは知らん。そこまでテレパス系に強くないんでね。オレは触らないとテレパス出来ないくらい弱いのだ。


 ──中身は男の人だ。でも、姿は女の子だ。ど、どうして?


「うーん。それには深いようでまったく深くない理由があるからさ」


 あのクソ女、なんも考えずにこの体に魂を入れやがったらな。不幸なのはオレかこの体の子か? いや、どちらも不幸でしかないか。まったく、不幸しか振り撒かないクソ女だよ。


「名前は?」


 ──ない。厄災って呼ばれてた。


「厄災、ね。じゃあ、アタシが名前を付けてもいいかい? アタシは別の名前で呼びたいからさ」


 ──うん。


「じゃあ、エリーダだ。アタシと似た名前で呼ばせてもらうよ」


 単純な、とか言わないように。厄災より一億倍マシな名前だろうがよ。


 ──エリーダ。


「そう。エリーダ。今からお前の名前だ。いいか?」


 気に入らないのなら今だぞ。オレはエリーダと記憶しちゃうからな。


 ──うん。エリーダ。あたし、エリーダ。


 気に入ったようでなによりだ。


「マリーダ。よろしくね」


 心の壁が崩れたようなので立ち上がり、エリーダに近寄った。

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