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第2話 ボーナス

「……マ、マジかよ……」


 まさか女になっているとは。何歳くらいだ、これ? ツルペタだし、十歳か? ただ成長が遅いだけか? せめて男に生まれ変わらせてくれよな……。


 アラサーに突入していた男を女とかにするの酷すぎんだろう。ボッチな上にコミュ症なオレに女なんて生き物がどんなもんかも想像できねーよ。


「ハァー。まあ、男だろうが女だろうが関係ないか。なんか僻地みたいなところみたいだったしな」


 あんな魔物──いや、モンスターか? 魔力を持っているような感じもなかったし。そんなものがいるところに人が……いたな。いや、いたとしてもそんなにいないだろうし、関わろうとも思わない。性別なんてそこまで関係ないやろ。


「てか、痩せてんな~。お前、ちゃんと食ってんのか?」


 肋が見えるほどガリガリじゃん。そりゃ、集中もできないわけだ。


 超能力がどこから生まれてくるかわからんが、出力先たるオレにかかっている。体調不良や疲れなんかで変わってくる。腹が減っていたら力が出ない、って感じなのだ。


「さっさと洗ってメシを食うか」


 何日入ってないんだよってくらい汚れており、髪は三回洗ってやっと綺麗になった。お前、金髪だったんかい!


「お湯も真っ黒じゃん。人ってここまで汚れれるもんなんだな」


 オレもそこまで綺麗好きじゃないが、ここまで汚れていたら気絶するわ。よく病気にならなかったものだ。ビタミンCをたくさん摂っておこうっと。


 掃除はあとにして、湯を抜いたら脱衣場に出た。


「ドライヤー買うか」

 

 男だったときは短髪にしてたからドライヤーで乾かすってこともしなかった。こんな綺麗な髪をボウズにするってのも酷だよな。元の持ち主にも悪い気がする。ちゃんと手入れしてやるか。もうゴブリン駆除に明け暮れるわけでもないしな。


 今日はバスタオルを巻くだけにして、とりあえず腹を満たしてやるとしよう。


 冷蔵庫を開けると、死んだ前と変わっていない。食べかけの野菜炒めが入っていた。


「そのまま使えるのはありがたいな」


 とりあえず食べかけの野菜炒めをレンジでチンして炊飯器からメシをどんぶりに盛った。


 この体に合うのかわからんが、腹を満たして死ぬるのなら本望だろう。オレも魔物に殺されるくらないならメシをたらふく食ってから死にたいよ。


 胃が小さいようで半分も食えなかった。どんだけだよ、この体?


「お前、どんな暮らしをしてたんだ?」


 この女の子の記憶がまったくない。名前すら出てこないよ。


「まあ、名前なんてどうでもいっか。呼ばれることもなければ名乗ることもないんだからな」


 食ったら眠くなり、ベッドに移動してすぐに眠りについてしまい、起きたらトイレにいきたくなった。


「はー。なんか自分の体って感じがしないな」


 小さくて非力だからか、感覚がちぐはぐして気持ち悪い。こりゃ、心と体が一致するまで時間がかかりそうだわ。


「今生はもっと体を鍛えないといかんな~」


 前世は超能力に頼りすぎた。


「健全な肉体には健全な精神が宿るとはよく言ったものだ。また殺されないよう体を鍛えるとしよう」


 またあんな死に方はしたくない。しっかり鍛えるとしよう。


 顔を洗い、しっかりと歯を磨く。若いからって歯を疎かにしてはいかんぜんよ。


「あ、服か」


 着替えようとしてはっと気がつく。男物は着れんじゃないか。


「女の服ってどんなだ?」


 テーブルに置いてあるタブレットをつかんだ。ルーム内でしか使えんが、元の世界の物を買えるものだ。ただ、部屋に入るものしか買えないのが面倒なところである。


「ん? 六億円? あ、これがボーナスか」


 死ぬ前は一億くらいあったはず。五億円もボーナスにしたのかよ。太っ腹だな。オレはそれだけの働きをしていたってことか。


「てか、そんなにもらっても使い道がないよ」


 一月生活するだけで十万円も使わない。 オレは自炊派。酒も一日缶ビールを一缶。たまに贅沢でパック寿司を買うくらいで、ゴブリン駆除をやりたくないときはDVD鑑賞にゲームをしている。


 なにが楽しいんだと言われそうだが、オレ的にはそれで満足。十二分に幸せだったよ。


「いや待てよ。百年生きるとして六億円で足りるか?」


 う~ん。そこまで贅沢しなければ大丈夫か。現地調達してもいいんだしな。


「でも、もうちょっと暖かいところにはいきたいかな」


 極寒の地ではさすがに嫌だ。オレは別に引きこもりでもないのだからな。


 あのクソ女に連れ去られる前はドライブ旅行もしたし、一人キャンプだってやった。人と関わらないのなら結構活動的だったものだ。


「南の島でサーフィンとかいいかも」


 サーフボードならルームから出せるだろうし、ゴムボートなら釣りがやりたくて出したことがある。アクティビティに生きるのもいいかもな。ここも魔法がある世界なら超能力を魔法と言い誤魔化せるし。


「いや、その前に服だ」


 とりあえずそれっぽいのを買ってってみるか。パンツに下着、靴下、服と十万円くらい使ってぴったりなのを買い揃えた。


「ブラジャーとかする日がくるのかね?」


 あまり考えたくないな。巨乳になるとも限らないんだし。


「朝飯にするか」


 なにより先にこの体を肥させないといかんだろう。この腕や脚ではすぐに死ぬ。十日くらいはルーム内で鍛えるべきだろう。


「いきなり肉は胃にくるから卵料理を作るか」


 今日ほど自炊をやってきてよかったと思った日はないぜ。

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