第16話 殺戮
ペガサスに案内してもらい村に向かった。
仲間たちは山の麓まで戻っており、ペガサスのリーダーたるレナに状況を尋ねた。
「プラガンのヤツらは二百人規模の集団だ。廃村を拠点にしている」
オレやイエティとの交流から言語能力が向上している。いや、オレたちの間でだけどな。
「魔法戦士や魔道師もいたか?」
「魔法戦士は十人、典型的な部隊数だ」
二百人いて魔法戦士が十人か。エリートなのは間違いないが、数はそんなに多くはないようだ。てか、脅威になるものがここにいるのか?
イエティの腕力は確かに脅威となるものだが、魔法を使えるわけではなく、魔力があるわけでもない。僻地の賢人でしかない。数の暴力を振るわれたら勝ち目はないだろう。
ペガサスたちも風の魔法を訓練して攻撃手段を手に入れたが、その情報があちらに伝わるわけでもない。いったいなんなんだ?
「あいつらはなにを恐れているんだ?」
「マニッシャーだ。この辺にいると思っているのだろう。マリーダが倒したと知らずにな」
「あー。あれな。あれ、そんなに強くなかっただろう」
前の世界では中堅クラスの冒険者でも狩れるレベルだと思うがな。
「マリーダにはそうだろうが、魔法を使う者には天敵だ。マニッシャーは魔法を食らい、毛皮は魔法を弾く。爪には毒。帝国で暴れに暴れていたよ」
そんなヤツだったんだ。てか、ここのヤツ弱くね? 魔法を食らい、魔法を弾くからって倒せない手段がないわけじゃない。やりようはあるだろうにな。
「帝国は人間相手としか戦った経験がないのか?」
「この大陸は人間が支配しているからな」
なら、他の大陸には他の種族がいるってことか。あのクソ女が関わっている世界はなんか歪だよな。そこで暮らす者の迷惑も考えて欲しいもんだぜ。
「まあ、いい。レナたちは人間を殺せるか?」
共存共栄なんて利益が被らないか重なるかのどちらかでないと不可能。それを前の世界で痛感させられたよ。絶対に馴染めない存在はいるものだ。
「殺せる」
馴染めない存在同士、どちらかが滅ぶか住み分けをするか、はたまた数を減らすしかないだろうよ。話し合いなんて幻想はオレにはないのであしからず。
「人間たちが逃げないように囲め。オレが仕留め損ねたものは殺れ。一人も逃がすな」
あいつらは敵陣に孤立したようなもの。ましてや近くに町はない。転移魔法でもない限り走って逃げるしかない。ペガサスの翼と脚から逃げられんだろうよ。
村にいるなら遠視が出来る。また来るかもと必要なところに棒を立てていたからな。
魔法戦士は外にはいない。ペガサスがいることから家の中で休んでいるのだろう。
「じゃあ、やるぞ──」
テレポして村の中に出現する。
魔法でオレの超能力は感知出来ない。突然現れたオレに意味がわからず石と化している。
それぞれの位置を把握したら四つナイフをテレキで操って兵士たちの眉間に突き刺してやった。
ナイフかかっているテレキで死体は静かに地面に寝かせる。
オレがまず倒すべきは魔法戦士。さすがに十対一は分が悪いからな、一人一人確実に葬ることにする。
魔法戦士たちは昔オレが住んでいた家にいて、窓から覗くと酒らしきものを飲んでいた。
全員が男で三十代くらいか? 前に来たヤツらよりはまともそうに見えるが、親善大使として来ているわけじゃない。侵略しに来ているのだ。罪がないとは言えない。
見逃してやる気は欠片もないし、見逃してやる理由もない。
……殺伐としてんな、オレ……。
イーダたちとの交流で殺伐とした心は薄れたかと思っていたが、こうして戦闘モードに入ると勝手に意識が切り替わってしまう。
毎日毎日ゴブリンを駆除していた成果だと思うと泣けてくるぜ。
出入口となるところをテレキで固定させ、パイロで家を燃やしてやった。
火事に気がついて兵士たちが騒ぎ出し、火を消そうとするヤツをテレキナイフで殺して回った。
久しぶりに大人数を相手にするのは疲れるな。精神力を鍛えないとダメだな。
超能力は精神に左右される。精神が不安定だと小石を持ち上げるのも億劫ってこともあるのだ。
次々と兵士たちを殺して行くと、魔法戦士どもが家が飛び出して来た。さすがにあのくらいでは死なないか。
「何事だ!」
「襲撃だよ」
そいつの背後に回ってナイフを首に突き刺してやった。
煙を吸ったのか、半分以上が涙を流しながら咳をしていた。すぐ楽にしてやるよ。
テレキナイフを魔法戦士たちの頭に突き刺そうとした瞬間、横から剣先が襲って来た。
「あっぶねー! 気づかんかったわ」
気配がわからんかったよ。やるじゃん。
「き、貴様、何者だ?」
テレキ縛りで動きを封じる。
「襲撃者だよ」
至極真っ当な答えをしてやった。
「命乞いは無駄。逃げるのも無駄。お前らは一人残らず殺す」
この見た目で威圧できるかと謎だったが。あまり恐縮することもない。奥の手を残しているかもしれないないな。
「抜かせ!」
なんて下品。もっと口の聞き方に注意あそばせ。
一閃する刃を交わし、右足を地面に張りつけてやった。あら惨め。




