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第1話 死んでからの転生

 あ、死んだ。オレ、死んだわ。


 そう思ったときには意識が途切れた。走馬灯もなく。あっさりしたものである。


 なんだろうな、オレの人生って? 超能力なんて現代社会では大っぴらに使えない力を持ち、慎ましやかに生きていた。


 なのに、変な女にゴブリンを駆除しろとか言われて強制異世界送り。それはいい。超能力者としては住みやすい世界だったからな。


 ゴブリンを駆除した報酬で現代の品を買うことができたし、ワンルームではあるな快適な避難所も与えられた。


 日陰日向に生きてきたオレには都合がよかった。通勤なし。付き合いもなし。雨の日は自由に休んでよし。まったくストレスフリーの暮らしだったよ。


 でも、そんな暮らしたも二年半と続かなかった。魔王の軍勢と対峙することになり、疾風のなんとかって将に殺された、んだと思う。どう殺されたかもわかんねーや。超能力を使いすぎて精神力が保てなくてやられたんだろうよ。


 ──くぅー! 当たりを引いたと思ったのに! あの堕天使め! 邪魔しちゃってくれて! 許さんからな!


 はぁ? この声、あの女か?


 ──ハァ~。やはり魔王討伐にも人を送らないとダメね。選定しないと。


 あ、あの~。おれ、忘れられてません?


 ──おっと。失礼しました。調子がいいときに邪魔されたもので。○○さん、お疲れ様です。二年半で十五万匹とか大戦果ですよ。上位に食い込むほどの駆除数です。ボーナスも弾んじゃいますね。


 死ぬのにボーナスとか言われてもな。天国でも行けんのか?


 ──天国ではなく新たな転生先にレッツゴーです。ボーナスはあちらで確認してください。


 転生かい。それなら静かなところにお願いするわ。町とかコミュ症のオレにはハードルが高いからよ。


 ──そうですか? まあ、ちょうどいいのがいたのでそこに魂を入れてあげましょう。人の温もりが恋しくなるところですが○○さんなら大丈夫でしょう。自由に、おもしろおかしく、そして強く生きてください。次、お亡くなりになるときは魂は消えるので。グッドラック!


 サムズアップされたような姿が見えたが、意識が切り替わったとたん、目の前に大きく口を開けた……なんかわからんものがいた!


 咄嗟に視線を横にずらしてテレポした。


 瞬間移動能力だが、オレの場合、視界に捉えた場所でないと瞬間移動することができないのだ。


「え? 冬? 寒っ!」


 ブリザード、って感じでもないが、目を開けているのが辛いくらいの吹雪だ。


「て、転生したのか?」


 なんか手が小さくないか? それに声が子供っぽい。生まれて何年か過ぎているってことか?


 そう言えば、あの女がちょうどいいのがいたとか言ってたな、元のヤツを乗っ取ったってことか?


 おいおい、それは可哀想だろう。三十過ぎの男の魂を入れるとかよ。これから──。


「──うぉい!」


 目の前に鋭い爪が現れて咄嗟に飛び退けた。


「な、なんだよ、畜生が! こっちは転生したばかりなんだぞ!」


 なにがなんだかわからないが、とにもかくにも安全なところにテレポする。


 何メートル先にテレポしたかわからんが、一面に広がる雪をテレキネシスで集めて凝縮。こちらに向かって来る白い毛を生やした蜥蜴に放ってやった。


「つえーな、こん畜生が!」 


 ゴブリンなら一発なのに小石が当たったくらいの様子だ。てか、デカいくせに素早いな! 重力無視しすぎ!


「ったく! 転生直後に絶体絶命とか洒落にならんわ! もっといい転生先はなかったんかい!」


 なんて叫んでもあの女に届きはしない。こっちのことなんてお構いなしのクソだったからな。


「悪いな、燃えろ!」


 人差し指で目標を定め、パイロキネシス──パイロで蜥蜴を燃やしてやった。


 テレキネシスの応用で目標を発火させてやる超能力だ。ゴブリンなら一発で燃やしてやったよ。


 が、一発では火力不足のようだ。なら、もう十発くらい食らいやがれ! 


 鍛えたパイロは同時に三十から四十は発火させてやることができる。あまりやりすぎると山火事になるから場所を選ぶけどな。


 全身に火が回り、熱に苦しみ、転がりながら火を消そうと必死だ。だが悪いな。体の中でも発火させられるんだよ。動いていると定められないんで適当になるがな。


「まっ、死ぬことには変わりはないんだから関係ないな。燃えろ」


 パチンと指を鳴らして蜥蜴の体内を発火させてやった。


 それでも暴れはしたが、三十秒もしないで動かなくなった。ふー。


「この世界はこんなのがいんのかよ。前の世界より厳しいのか?」


 まあ、ゴブリン駆除から解放されたんたからいっか。毎日毎日ゴブリン駆除に励むのに飽きてたからな。


 あの女は自由に、おもしろおかしく、強く生きろと言っていた。つまり、なんの強制もないってことだ。


「スローライフとか目指す……のは無理っぽいな。ふっくしゅ! 寒っ!」


 急いで避難所──部屋に入ると、なんら変わらぬ光景が広がっていた。


「とりあえず風呂入って寝よう」


 嫌なことは寝て忘れる。それが一番だ。


 なんか厚着の服を脱いで風呂場に向かい、熱いシャワーを浴び……ん? 洗い場にある鏡に知らない女の子が写っている。誰だ?


 ………………。


 …………。


 ……。


「──ってオレかよ! 女の子になってんじゃん!」

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