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ノイレン〜黒の純真  作者: 山田隆晴
第四部『羽を拡げて』

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58/65

58「動きは手に取るようにわかるのにな。」

 いよいよ今日のラスボス、キリオスが出番。

 師匠のトレランスと同じくらいの年恰好、体格も似たようなもので中年とは思えないほどよく鍛えられている。

『さあ、ノイレンどう戦う?楽しみにしているぞ。』

 トレランスは腕組みをして愛弟子の背中を頼もしく見つめる。ノイレンは息を大きく吸っては吐いてを繰り返し昂る気持ちを落ち着かせる。

「よしっ!」

 気合を入れるといつものように剣を構えた。その剣先にキリオスの顔を捉える。その彼は左足を前に、右頬の横で腕をクロスして剣を握り切っ先をノイレンに向けている。オクスだ。この構えは突きにも、ツベルクハウ、剣を振り子のように水平に回転させての斬撃にも自在に切り替えられる。まるでノイレンのサーベルの構えを両手持ちのロングソードで再現しているみたいだ。

『向こうもユニゾンする気か?』

 ノイレンは今まで対戦した誰もしたことのない構えに武者震いした。そしてキっと彼の目を睨むように見据える。

『おもしろいじゃん。どっちが先に動くか、そこがタイミングだな。』


 未だ悶絶しているヤーデンツの代わりにトレランスが立ち合い役を買って出た。

「始め!」

 ノイレンはキリオスの心を読むかのようにじっと彼の目を見つめる。見つめながらその視界で彼の体全体をも捉える。キリオスもノイレンの出方を見ているのか微動だにしない。

 まわりで門弟たちは息を殺して2人を見守る。道場全体がとても静かだ。シンと静まり返って汗の滴る音さえ聞こえるのではないかと思えるくらいノイレンは耳を鋭くすます。自分の吐く息の音さえ邪魔に感じる。その耳にキリオスの息遣いが伝わってきた。

『来るな。』

 キリオスと同時にノイレンも動いた。わずかばかり左足を外側へずらしたキリオスのようにノイレンも前に出している右足をわずかに外へずらす。互いに構えた剣の軸線は相手から外さない。そしてまたじっと睨み合う。

 今度は剣を握る右腕を少し上に持ち上げたノイレンに呼応してキリオスは剣先を少し上げる。

『ちくしょう、もっと動かないかな。じれったいな。』

 ノイレンの中で少し焦りが出てきた。こめかみから滲み出た汗がつーっと頬を伝って顎まで()れる。視線だけ動かしてトレランスをチラと見た。彼は涼しげな表情でにこやかに微笑んでいる。

『師匠が笑ってるならいける!』

 師匠の笑顔に冷静さを取り戻した。

『動かなきゃユニゾンにもならないしな、やるか!』

 ノイレンは勢いよく床を蹴ると右腕を伸ばしたままキリオスの腹を突きにいった。それに合わせるように彼は(ヒルト)から左手を離し右手だけ伸ばして同じように突きの動作に入った。

 彼のロングソードのほうが刃渡りが長い、このままではノイレンは胸を突かれる、良くても相打ち。なのにノイレンは笑っている。予想したとおりキリオスが同じように動いてきたことに勢いづいた。

「見せてやる!!」

 突きの姿勢は維持したまま左腕を背後に振って体を大きく反らせキリオスの剣を胸先で躱す。キリオスもノイレンと同じように剣から離した左腕を振って胸先で躱した。すれ違いざま互いに相手の目を睨みつける。真顔のまま通り過ぎるキリオスにノイレンは口角をくぃっと上げてみせた。

 すれ違ったあとノイレンは軽やかにつま先で床を掴み膝のバネを利用してすぐさまキリオスに向かって反転斬り込んでいく。キリオスは右足で着地するとヤーデンツのようにぺたんと足の裏をつけることなく、同じくつま先を軸に、左足をバランサーにして体を回転させノイレンに正対すると、音もなく足を滑らせるように歩きツベルクハウを仕掛けてきた。

 両手で握る(ヒルト)を顔の前に持ち上げそこを軸にして剣を水平に、振り子のように左右に振る。剣を振るとき必ず刃がキリオスの頭の上を通過する。右から左へ、左から右へ、360度大きく振り回す。そうすることで剣に勢いが乗り打撃の威力が強まる。

 ぐるっと一回転させているのにキリオスの斬撃には空白を感じさせない圧迫感がある。左右から繰り返し襲い来る剣はまるで2本の剣を操っているかのようだ。まさに間髪を入れずという表現がぴったり。その斬撃をノイレンはトレランスのように手首の返しを生かして右、左、右、左とぐるんぐるんと剣を縦に回転させて防ぐ。しかし体格差もありノイレンは防ぐ一方で徐々に押されてきた。

「こんにゃろ~、ちっとも攻撃できないじゃん。どうすっかな。」

 キリオスの剣を防ぎながら考える。

『ユニゾンするんだろ、どうする?・・・そうだ、』

 ノイレンは手首を返す角度を縦から横に変えた。そう、キリオスのツベクルハウと同じように回転させ右から左、左から右とサーベルを水平に振った。

 ノイレンから見て彼の剣が右から来る時はノイレンは時計回りに回転させて剣をぶつけ、彼の剣が左から来るとノイレンは逆時計回りで剣をぶつけに行く。互いにその水平の振り子を繰り返して激しく剣をぶつけ合う。するとどうだ、さっきまで押され気味だったのが拮抗した。キリオスを押し返すことは難しくても彼に押されることはなくなった。2人ともその場で剣を組ませ続けている。

『どうだ、同じ動きだぜ。』

 ノイレンは口角を上げてキリオスを見上げる。サーベルで同じことをやってくるとはその型破りな動きに少しばかり意表を突かれたキリオスは一瞬目を丸めたがすぐに顔をシュっとさせてノイレンを迎え撃つ。

 傍で見ているトレランスは自分なりに懸命に頭を使って対抗している愛弟子を誇らしく思った。

『いいぞノイレン。そこからどうする?斬撃だけが術じゃないぞ。蹴りか、体当たりか、彼もそろそろ仕掛けてくるぞ。』

 サーベルを左右に振りながらノイレンはキリオスの全身に神経をとがらせる。彼は剣を左右に振るたびに足を前後に動かしている。時計回りなら左足を前へ、逆時計回りなら右足を前へ。

「そこだっ!」

 キリオスが足を引いたときノイレンは彼の膝を蹴った。膝を蹴られ半歩下げるはずがずいっと足が下がってしまいキリオスはバランスを崩した。

「うぬっ。」

 だがそんな程度では転げるわけもなくキリオスはすぐに体勢を直して再びツベルクハウで剣を叩き込んできた。それをノイレンはユニゾンせずに彼の剣の抜ける方向と同じほうへ膝を落として体勢を低くしながら体を回転させて躱す。そしてその回転の勢いを乗せた剣をキリオスの太腿へ叩き込む。

「なんとっ!」

 キリオスは咄嗟に右足を上げ剣とともに迫り来るノイレンの右手首を足蹴にして斬撃を封じた。

 2人の動きが止まる。膝を曲げ体勢を低くして右腕をキリオスに向けて伸ばしているノイレン。彼女のその右腕を足の裏で受け止めて立つキリオス。

「策はよし、しかし詰めが甘い。」

 キリオスは右足に体重をかけノイレンの右手を道場の床に踏みつけるようにしつつ彼女の脳天めがけて剣を振り下ろした。

「ちっ。」

 ノイレンは身をよじって腕を抜きゴロゴロと転がって跳ね起きた。立ち上がるとつま先立ちで剣を構える。キリオスに向ける目がつり上がっている。

「さすがトレランスの弟子。その身のこなし気に入ったぞ。」

 キリオスは感心すると表情をシュっと引き締めて今度は中段に構えた。その彼の耳にトレランスの声が飛んでくる。

「ノイレンはやらんからな。」

 キリオスはその言葉を聞いているのかいないのかシュっとしたまま表情を崩さずノイレンを見据える。

「今度は私から行かせてもらおう。かまわないかな。」

 キリオスが静かに問いかける。

「ああ、いいぜ。どこからでもかかってきな。」

 ノイレンは不敵な笑みを浮かべて左手をぐーぱーする。

 キリオスは小股で駆けるように素早くノイレンに迫る。彼のその様子をノイレンはじっと冷静に見極めている。

 あともう少しでノイレンの間合いに入るという瞬間キリオスは右足を斜め前に動かした。それまではまっすぐ前に、ノイレンに向かって繰り出してきた足を外側へ広げた。それをノイレンは見逃さなかった。

 まっすぐに斬りこんでくると見せかけてノイレンの左側へ回り込むつもりだったキリオスの動きは読まれた。ノイレンはニヤっとすると右へ重心を移して彼の打撃を躱す。躱されたキリオスは床を蹴り左肩からショルダーアタックを喰らわすように横っ飛びしてノイレンに迫りつつ腕をクロスして剣を腹の前に固定する。もちろん切っ先はノイレンを捉えている。型と体勢の切り替えがとても素早い。

 終始真顔のキリオスは何を考えているのかわからない。しかしノイレンはその息づかいとわずかな動作から先読みする。このまま体当たりしながら突きを入れられると踏んだノイレンは彼が目前に迫った瞬間飛び上がった。

 キリオスの視界から突然ノイレンの姿が消えた。

 ジャンプで躱したと読んだキリオスは(ヒルト)を軸に剣を90度上に振り上げた。着地してくるノイレンを下から斬り上げようとしたが剣はむなしく空を斬る。

「何?!」

 さすがのキリオスも目の前でいきなりかき消すように姿を消され度肝を抜かれた。

「こっちだよ。」

 背後からノイレンの声がする。振り向くとノイレンがうしろで剣を構えている。

「いつの間に?」

 キリオスにもあの瞬間は見えていなかったらしい。彼の肩と剣がノイレンに突撃する直前彼女は高く飛び上がりキリオスの頭の上を宙返りで通り越して背後に回った。キリオスともあろう使い手がノイレンの実力を侮ってしまった。ヤーデンツとの戦いでバク宙を披露したのだ、うしろではなく前に宙返りできてもおかしくないことを失念していた。彼の脳裏にトレランスの言葉が浮かぶ。

「ノイレンは型破り」

 キリオスは深く息を吸い込んでゆっくり吐いた。そしてその顔をシュっと引き締める。周りにいる門弟たちはまさか自分たちの師匠が手玉に取られるとは思ってもみず、呆気に取られてぽかんとしている。

「おみそれした。まさか頭の上を飛び越されるとはさすがに考えが及ばなかった。だが、もうその手は通用せん。覚悟してもらおう。」

 キリオスの目に静かな炎が宿る。

「そっちこそ、覚悟しな。」

 セリフをそっくりそのまま返してノイレンはニンマリする。

 再び互いに睨み合って対峙する2人。


 キリオスの攻撃がさっきまでよりも重くなった。別にノイレンを軽く見て手加減をしていたわけではない。むしろ真面目に相手をしていたのが度肝を抜かれて超真面目になっただけだ。

 2人は激しく切り結ぶ。互いに相手の体を蹴飛ばしたり、服や体の一部を掴んで体勢を崩させる。ノイレンの攻撃はなかなか決まらない、同じようにキリオスの攻撃もすんなり躱される。

『ちくしょう、動きは手に取るようにわかるのにな。まったく一本取れない。』

 師匠とヤーデンツの立ち合いを見て自然と理解しただけあって今のノイレンにはキリオスの動きがよく見える。ほんの少し体や目線が動くだけで次の流れを予測できた。相手の動きが手に取るようにわかると面白くて仕方ない。真剣に立ち会いながらもノイレンの心は踊っている。

「絶対勝ってやる。」

 手首の返しを巧みに操りキリオスの動きを牽制し、攻撃を仕掛ける。それを躱されると体当たりするように彼の懐に飛び込み体や服を掴んで相手の動きを封じながら彼のうなじへ剣を叩きこもうとする。それをキリオスは腰を直角に曲げて頭を勢いよく下げることで背中に回り込んだノイレンを前方に振り落とす。これにはノイレンも受け身を取るのが精一杯。背中から床にたたきつけられて咳き込む。

「さあ、立ちなさい。」

 キリオスはノイレンが立ち上がるのを待つ。

「ちくしょう、」

 立ち上がると腕で額の汗を拭う。ノイレンの顔から笑みが消えた。目をつり上げ苦しそうだ。立ち合いが長丁場になり息が上がってきた。ぜいぜいと肩を揺らす。組手の稽古のときよりもずっと神経を削られて正直もうバテている。ただ生来の負けん気の強さが体を動かし続けた。

「こんなところで諦めてたまるか。絶対に勝ってやる。」

 眉をつり上げその意地だけで剣を振っていた。

 2人の戦いを目を皿のようにしてずっと見つめていたレクレスがボソっと呟いた。

「お姉さんがんばって。」

 師匠のキリオスの足元をまだちょろちょろするだけのレクレスにはここまで食い下がっていくノイレンに感ずるものがあった。いつの間にかノイレンを応援している。

『そろそろ決めないと、やばいな。』

 肩で息をしはじめたノイレンはあることを思いつく。

『試してみよう。』

  苦しいながらも口角と頬を上げてニヤリと笑みを取り戻すと、ノイレンは腹の前で切っ先をキリオスに向け左手を右手に添えて構えると姿勢を低くして地を這うように猪突猛進した。サーベルの刃を上に向けている。まるでトレランスがヤーデンツを仕留めた一撃を喰らわそうとしているかのようだ。足元からの斬り上げ、いかにもそう見えた。

「キリオス師範危ない!」

師範代(ヤーデンツ)と同じか?!」

「弟子もアレやんのか!?」

 息を殺して見守っていた門弟たちがノイレンの突進を見て口を開いた。

「まさかな。」

 キリオスはどうとでも受け流せるように待ち構える。

「これならどうだっ!」

 ノイレンは彼の間合いに入る直前、スライディングするように仰向けに姿勢を倒して足からキリオスに突っ込んでいった。

「なんだとっ。」

 まさかの寝そべり攻撃に足を斬られると思ったキリオスはその場で飛び上がってノイレンをやり過ごそうとした。が、ノイレンはすり抜ける時に彼の足首を左手でしっかと掴み引っ張る。

 引っ張った勢いで自分は起き上がり且つ、床を蹴って高く飛び上がる。

「もらったぁ!」

 足を引っ張られて前のめりに体勢を崩したキリオスがまだよろけているところへノイレンは上から斬り下ろした。


「うぎゃっ・・・」


 潰れるような呻き声を上げてノイレンが道場の床に転がっていく。ノイレンの転がりに合わせて右手に握った木剣がカランカランと乾いた音を響かせる。

 その場にいる誰もが目を見張った。誰の目にもてっきりキリオスが負けると思えた。しかし当のキリオスは両足を踏ん張って立っている。無傷だ。

「あげっ、ごふっ、ぐぶっ、」

 転がった先で床に倒れているノイレンが息を詰まらせ苦しそうに悶えている。

 ゆっくりと近づいてきたキリオスはまともに息ができず苦しんでいるノイレンの首筋に己の刃をスっと当てた。

「そこまで!!」

 トレランスが立ち合い終了のかけ声を上げた。

 苦しくてまともに息ができないのに、ノイレンは目の前に立ちはだかってじっと見下ろしているキリオスを睨みつけた。

『ちく、しょ・・お。』

 その目に悔し涙が浮かんでくる。

「立てるか?」

 キリオスは右手を差し出しながら訊いた。ノイレンはぜいぜいと息をしながらその手を掴む。立ち上がらせてもらうと深呼吸してキリオスをまっすぐに見上げた。

「参りました。」

 悔し涙で潤んだ瞳を向けて降参した。

「すばらしかったよ、ノイレン。ここまでやるとは正直驚いた。これからも精進しなさい。」

 キリオスはにこやかになって微笑む。

「はい、ありがとうございました。」

 ノイレンは目線を下に落として小さな声で答えた。

 とぼとぼとトレランスのもとへ行くと彼の大きな胸にノイレンは頭をトンとぶつけてじっとしている。

「残念だったなノイレン。いい線いってたのにな。」

 彼の胸に頭を付けたままノイレンは黙ってうなずく。

「最後のアレ、奇抜で良かったぞ。俺もびっくりした。」

 ノイレンはトレランスの胸に頭を付けたまま顔を左右に振る。褒められるような策ではなかったと言いたいようだ。

「ま、場数を踏んでいるキリオスが一枚上手だったがな。」

 またもやノイレンは無言でこくんとうなずいた。

 自分の胸に頭を押しつけてうなだれる愛弟子のその背中を優しさと強さのこもったまなざしで静かに見つめる。

「キリオスがあこそで剣を180度回転させてノイレンを突けた理由がわかるか?」

 トレランスはノイレンに戦いを反省させようと質問した。ノイレンは考えているようでじっとしたまま沈黙している。


 ノイレンがキリオスの足をつかんで体勢を崩させて飛び上がったとき、キリオスは前のめりによろけながらも(ヒルト)を軸に剣を180度回転させて上から襲いかかってくるノイレンを串刺しにした。もちろんキリオスはノイレンに背を向けていて彼女を見ていない。にも関わらず彼の剣は的確にノイレンのみぞおちを突いた。


「あの人もわたしをちゃんと見てたってことだよね?」

 ノイレンはトレランスの胸に頭を付けたまま答えた。

「そうだ。彼は凄腕の剣士だ。常に相手から目を離さない。まあ、一度だけノイレンを見失って動揺してたけどな。」

 ノイレンが宙返りでキリオスを飛び越して背後に回り込んだあのときだ。

「あのあと彼はなんと言っていたか憶えてるか?」

「その手はもう通用しない。」

「そうだ。あのとき彼は反省したんだ。そしてノイレンが高く飛び上がれることをしっかりと頭に叩き込んだ。だから最後のときも自分の上にいると分かったんだ。」

 トレランスはその大きな手をノイレンの頭にぽんと乗せた。

「ノイレンは調子に乗ると同じ技を繰り返す癖がある。直していこうな。」

 ノイレンは頭を上げるとぷうと頬をリスのように膨らませた。

「わたし調子になんか乗ってない!」

「立ち合いの最中ちょいちょいにやけてたのにか?」

 ノイレンは頬を膨らませたまま目を丸めた。

「そ、それは・・・」

「ほれ見ろ。」

 ノイレンの顔がじわじわとゆがんでくる。眉がハの字に、唇を8を横倒しにしたようにかみしめ、悔し涙で瞳が潤む。

「あっははは、それじゃあの子と同じじゃないか。」

 トレランスはレクレスを指さして笑う。ノイレンは彼女を見た。レクレスはノイレンが負けたことが悔しくて同じ顔をして悔し涙をこらえている。

「同じじゃない!笑うな!!」

 ノイレンはトレランスに向き直るとまた頬をぷうとはちきれんばかりに膨らませて真っ赤になった。

次回予告

キリオスに負けて自身の弱点を思い知らされたノイレン。それを克服するためにも立ち合い行脚を続けて早や半年が過ぎた。ある日アニンから教わった所作をダンスで披露したところ評判がよく常連たちから褒められる。それに気を良くしたノイレンはアニンにお礼を言おうと思うが素直になれず手紙をしたためることを思いつく。

君は彼女の生き様を見届けられるか。

次回第五十九話「そうだ、手紙を書くってのはどうだ。」

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