変態
目が覚めた時、俺は芋虫になっていた。
俺は歓喜した。
俺、蝶になれるかもしれない。
老いきったしょぼい両親、その両方のキモいところ全部が遺伝したしょぼい俺、しょぼい労働、怒号、ベルトコンベア、ヤニで黄ばんだ壁、安いキツい酒、48年使った臭い布団、気絶に近い浅い眠り。
それが俺だ。
でも今は違う。俺は蝶になるのだ。
「喜び」を俺の肉体が思い出した。
なんだかやけに眠い。
きっと俺は今から蛹になる。
俺は長い眠りについて、ドロドロに溶けて、俺は変態する。
無断欠勤だ!だがもうどうだっていい。
体が求めるまま、俺は眠りについた。
*******
「わー、凄いすねこれ」
「いい加減見慣れただろう」
「にしたって、これはビビるすよ。マンモスマンションの八割繭っすよ。ほら、真っ白」
「それで食えてんだから文句言うなよ、ほら、サクッと作業すんぞ。」
「うぇへぇーーっす。
…てか、前から思ってたんすけど、これ燃やさないで放っといたらどうなるんすか?超でかい蝶になるんすか?モスラ的な」
「お前よく知ってんな。俺が生まれる前のやつだぞそれ。モスラにはなれねえよ。こいつら変態しない種だから。」
「っへーー。まあこんなでかい虫孵ったらキモイすからね。」
「お前研修ビデオちゃんと見てないだろ。査定引いとくからな」
「ちょ、勘弁してくださいよお」
おしまい!ちゃんちゃん