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◇6 リンの花

 あの暴露事件から、私に向ける周りの目が180°変わった。



「さ、夕琳様。どうぞ召し上がってくださいな」


「夕琳様! こちらのお洋服なんて如何でしょう!」


「夕琳様!」


「夕琳様!」



 何とも微笑ましい顔を向けてくる。恐ろしい悪魔ではなく羊。しかもここでは愛玩動物。あと毛を()って服にすることもあるらしい。もう周りは私を愛玩動物だと認識しているようだ。とはいえ、悪魔より断然いいから何も言えない。



「夕琳様は伸び伸びと健やかにここで過ごされるだけで良いのですよ」


「そうです、何も深く考えずともよいのです!」


「何か好きな事、やりたい事など自由にやっていいんですよ」



 と、言われても……


 ただ寝て、食べて、ボーっとしているだけの日々。何だか悪い気もするし、申し訳なさもある。



「お城の、聖女様達って今どうしてるんでしょう……?」


「聖女様達ですか。きっと神聖力の鍛錬(たんれん)(はげ)んでおられると思います」


「神聖力?」



 それは、聖女の持つ特別なエネルギー。自然を生み出し、豊かにしていくものだ。枯れた土地には恵の雨を降らし、荒れた海を静め、爽やかな風を吹かす。


 そのお陰で、この帝国はとても豊かになり国民の生活も良くなった。そんな凄い人達に混ざって来てしまったわけだから、凄く複雑だ。


 不手際だったからとはいえ、私が来てしまった事で来るはずだった聖女様が一人来れなかったのでは? 本当の事は分からないけど、もしそうだったら謝ります。ごめんなさい。



「わぁ、とっても綺麗!」



 侍女の皆さんに連れてきてもらったのは、ここの庭園。とても綺麗だからとおすすめされたのだ。ちゃんと手入れされているし、花一つ一つがとても生き生きしている。色もとても素敵だ。



「夕琳様はどんな花がお好きですか?」



 私? んー。と一つ一つ見て回ってみる。



「前に、私に似合う花を見つけてくれた人がいたんです」


「恋人ですか!」


「……ごめんなさい、女の子の親友なんです」



 く、食いつきが凄い……因みに恋人はいませんよ。



「黒に似合う色ってなかなかないじゃないですか。でも、親友が見つけてくれた花はすごく好きだったんです。似合う似合わないは別に、ですけどね。あの子は絶対似合うって何度も言ってたんですけど、あはは」



 白で、小さくはあるけど他の花に埋もれないようにしっかりと咲いている花。ほら、こんな感じの……



「これに似てるかも」



 手前に並べられた、白い花。あっ! と侍女の一人が声をあげた。



「これ、〝リン〟って名前の花なんです!」


「あ、そういえば」



 リン、私の名前と一緒。


 親友にはいつも〝リン〟とあだ名で呼ばれてたな。



「あの、さっき好きな事何でもしていいって言ってましたよね」


「え? はい」


「何か見つかりましたか?」


「はい、土いじりしたいです」


「えっ……」


「土、いじり……?」




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