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05 初めてのダンジョンの外



 ボーイッシュ少女はミラと名乗った。

 彼女を連れてダンジョンを出て、いまはダンジョン近くの診療所に来ている。

 そこで回復魔法の効果を直接見て、セイナは大変に感激していた。

 気持ちはわかるけどな。

 外傷が瞬く間に消えていく様子は感動できる。


「え? じゃあ冒険登録していないのにダンジョンに入ったんですか⁉」


 そんなミラと、知り合ったのはなにかの縁とばかりに街を案内してもらうために歩いていたのだけれど、話題がそのことになって驚かれた。

 いや、それはそうか。

 中層のモンスターである俺を従魔にしているのに、冒険者登録もしていないなんておかしい。

 その辺りのカバーストーリーは……あれ? ない?

 じいちゃんよ。ガバガバだぞ。


「ど、どうしても……この子が欲しくて」

「す、すごいですね」


 俺が固まっているとセイナがそう言い訳した。

 すごい言い訳だと思ったが、ミラが納得してくれたならそれでいい。


「でも、冒険者登録というのはしておいた方がいいのかな?」

「旅に出るなら冒険者登録をしておくと楽ですよ。身分証明書にもなるし、現地で仕事を探すのも簡単です」

「私でもなれる?」

「ボクでも出来たんだから大丈夫ですよ!」


 ミラはボクっ子だ。


「それにしても……」


 と、ミラが俺を見る。

 俺はいまだにセイナに抱かれている。

 自分で歩くと言っているのだが、セイナが聞かないのだ。


「その……ホッパーコカトリスは、重くないんですか?」

「え? ぜんぜん」

「そうなんですか? ボクも、抱いてみてもいいですか?」


 おい、勝手に決めるでない。

 そう思うのだが、まるでぬいぐるみでも渡す感覚で渡された。

 そして……。


「うっ……」


 俺を抱えたまま、ミラが倒れた。


「きゃあ、大丈夫!」

「……すごく、重いです」


 ミラは俺に潰されてバタバタしている。

 仕方ないので転がってどけてやろうとしていると、セイナにひょいと担がれてしまった。


「セイナさん、力がすごいんですね」

「え? そう?」

「さすが、ホッパーコカトリスを従えるだけはありますね!」

「ええ……」


 そう言ってキラキラした目で見られて、セイナは戸惑っている。

 褒められたのは嬉しいけれど、力持ちと言われたことは心外……と言ったところだろう。だが、こっちの世界では力があるというのは純然たる褒め言葉だ。

 弱々しくて保護欲を誘う女性がいいという価値観は、存在はするが圧倒的多数ではない。

 女性だって強ければ強い方がいい。

 それがこちらの世界の価値基準だ。


 その後、冒険者登録を済ませ、ミラと一緒に今日の宿屋を決め、夕飯を一緒に食べてから各自の部屋に入った。

 俺は、セイナと同じ部屋だ。

 俺ぐらいのサイズの従魔なら、同じ部屋でもいいのだそうだ。

 ダメな時は獣舎で寝ろと言われる場合もある。


「どういうことなの?」

「なにが?」

「私が力持ちになってること。なんで?」

「なんでって……」


 そんなことは決まっている。

 セイナの体は、俺と兄貴で採取しまくったリソースをふんだんに使って出来ている。

 ダンジョン外に出るという条件があるために、スキル的な意味ではチートスキルを一つ付けるだけで精一杯になったけれど、実は身体能力的にもかなりチート寄りだ。

 なにしろ、セイナの体に使ったリソース。うちのダンジョンに登場する上位竜種に匹敵するぐらいだからな。


「俺たちの目的は覚えているよな?」

「チートスキル? というのを集めるのよね?」

「ああ。集めて返すまでの間、セイナに所持しておいてもらうことになる。だから、お前の体は強くないと困るんだ」

「そういうの、タク君でもよかったんじゃ……」

「まっ、そういうのは神様の采配でもあるからな」

「うう……」

「がんばって女勇者を目指してくれ」

「どうせならかわいい魔法使い役がよかった」


 と、がっくりしていた。





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