カルピス
学生時代、障がい児と一緒に過ごす研修があって、そのうち、遠足みたいな日があった。
朝から水筒にカルピスの原液を薄めたものと、氷を入れて、出かけた。
その日は快晴で、夏日だった。
ころりとした体型の男児が、自分の水筒のお茶を飲み干して、ぜいぜいいっていた。
「星野さん、お茶分けてあげて」
担当の先生からそう言われて内心焦った。
私の水筒、お茶ぢゃなくてカルピスだよ。
しょうがないので、水筒をその男児に渡すと、一口飲んで、んん!となってごくごく飲み始めた。
そりゃそーだよな。おいしいもん。
「全部飲んじゃだめだよ」
とかなんとか言いながら、担当の先生にバレたらどうしようとヒヤヒヤした。
ぷはーと、男児は息をついた。
私の子どもの頃も水筒にはお茶、というのが普通だったけど、たぶんお腹壊さないようにだよね、と思いながら、こんな暑い日には冷たい甘い飲み物がよく似合う、と秘密にして遠足は無事に終わった。