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Q.魔法少女である必要はあるのだろうか  作者: ゆうみん
異能少女 推定危険度:未知数
4/4

規律の鬼が自首したらしいよ!

フードを目深く被ったり、ローブのあわせをぎゅっと握ったりと、見るからにそわそわしている少女。

本当に彼女が危険度B級ヴィランのソリッドモンキーを倒したのかと疑問がわく程度には、お年頃の女の子らしい印象を受けます。


「どちらかと言うと、叱られる前のヒノカちゃんに似ていますね?」


先程市街地のヴィラン討伐任務で一緒だった魔法少女を思い浮かべます。確かあの子は四月から中学二年生でしたか。

私たちの所属である第四支部には、ヒノカちゃんと同い年の魔法少女が二名在籍してます。オーソドックスな剣と風の魔法を使う子たちです。それぞれの装いは、騎士をイメージした金色の鎧と、緑色の可愛らしいワンピースドレス。

目の前にいる彼女のような衣装を身に纏っている魔法少女ではない、ということです。


「さて。フクロウさん、でよろしいでしょうか」

「……はい」

「貴女の所属と担当区域を教えていただけますか? 私たち魔法局の魔法少女はそれぞれの区域が割り当てられています。他区で活動する場合はその区を管轄している支部に申請して許可を得なければならないという規則があります。ですが申請があったという報告は聞いていません……。規則違反は許されませんよ」

「うっ」


私がそう告げると、フクロウさんは一歩下がりました。明らかに動揺しています。


魔法少女養成学校ウィッチ・アカデミーでは、一番下位の育成クラスのときから、ヴィランとの戦い方についてはもちろん、魔法局の規則や活動する上での注意点など幅広く教えられます。規則に関しては日本全国の共通ルールなので、これを知らないと魔法少女界で「常識がない」と揶揄されるくらいです。

それについて知らないということはないでしょうから、規則違反に対する動揺、でしょうね。


「(魔法少女ってふわふわしたものだと思ってたけど、規則とか結構お堅いんだなあ……)」

「ソリッドモンキーを倒してくださりありがとうございました。しかし規則は規則。貴女も魔法少女であるならば最低限のルールは理解しているはずです」

「は、はい」

「忘れていたなんて言い訳は通じません。故意で破ったなら、なお悪いです。しっかり反省してください」

「はい!」

「B級ヴィランを単独討伐できるほどの腕前があるならば、他の魔法少女たちの示しとして態度を改めるべきですよ」

「(B級?)」


っと。いけません。つい熱くなると説教染みてしまう悪い癖が……。

いえ、今回は仕方ありません。規則違反は厳しく取り締まらないと後々面倒になりかねませんし。

改めて少女の方へ目を向けると、ぼんやりと宙を眺めているようでした。


「どうかしましたか?」

「あっ、えーと……魔法少女って廃区まで担当してたっけ? 基本的に市街地の防衛がお仕事って聞いたことあるけど」

「あ」


あ。そう言えばシフト中に担当区以外に出るときも申請がいるんでした。

ましてや廃区―――放棄された住区、人類生存圏外―――に足を踏み入れることは、あまりいい顔をされません。ヴィランの攻勢に負け、手放してしまった場所なのですから。


「あ、って。まさか今気づいて――――」

「――――フクロウさん」

「ハイ!」


私が名前を呼ぶと、彼女はビシッと姿勢を正しました。なぜでしょうか?


「規則は規則です。しかし、わざわざ廃区までやって来てヴィランを討伐し、結果的に市街地への被害を抑えました。その行動に対して敬意を示します」

「は、はい」

「よって今回は厳重注意とします。次があるとは考えないでくださいね」

「ってことはあなたも――」

「――いいですね?」

「ハイ」


いい返事を聞けたところで、そろそろお暇しましょう。流石にこれ以上長居しては四葉さんに心配をかけますし。

若干震えている(幻覚)ような少女を横目に、市街地方面へと足を向けます。


「あ、あれ? 核はいらないの?」

「貴女が討伐したのですから、私が横取りするわけにはいきませんよ」

「それもそうだね」


消失しかかっていたソリッドモンキーの額から五センチほどの核が取り出されます。

フクロウさんはそれを大切そうに懐へ入れると、こちらへ声をかけてきました。


「じゃあ、バイバイ」

「ええ。ちゃんと気を付けて下さいね」

「アハハ。頑張るよ」


そう言って、地を蹴り木々の中へと去っていきました。

私も気持ち急ぎで待機所へと戻ります。


魔法少女フクロウさん。単独B級ヴィラン討伐。あの手慣れた様子では今回が初めてというわけではないでしょう。ならば名が挙がっていてもいいはずなのに、フクロウさんのことを聞いたことはありません。

それに最近見かけなくなったと思われたB級が廃区にいた事実。もしかしてフクロウさんが討伐していたから市街地に降りてくるヴィランが減った? いえ、考えすぎですね。それはそれとしてソリッドモンキーが廃区にいたことは報告しておくべきでしょう。


「……あら? つまり私が廃区に行ったことは誤魔化せないのでは?」


…………仕方ありません。魔法少女として報連相はすべきだと心得にもありますし、フクロウさんに言った手前自分を甘やかすのもどうかと思っていましたし。

気は乗りませんがちゃんと報告しましょう……。


そういえば、フクロウさんの所属について聞き忘れてしまいました。

まあ、あの実力なら調べればすぐにヒットするでしょう。戻り次第魔法局のデータベースに問い合わせてみましょうか。

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