犯人を捕まえろ~ライアン視点~
「悪いが一度、家に帰りたいんだ。どうしても取りに行きたいものがあってな」
馬車に乗り込むと、すかさず御者に指示を出した。一旦屋敷の戻ると、俺はあるものをポケットに入れると、専属執事と一緒に馬車に乗り込み、貴族学院を目指す。
貴族学院に着くと、学院の先生たちはもちろん、既に陛下と王太子殿下、さらに騎士団長と副騎士団長たちも集まっていた。
「ライアン、マリア嬢が何者かに毒を盛られたと聞いた。それで、マリア嬢は大丈夫なのか?」
真っ青な顔で俺に話しかけてきたのは、王太子殿下だ。
「はい、何度か吐血したりしておりましたが、解毒剤のお陰で一命は取り留めました。だた、2~3日間眠り続けるそうです」
「そうか…一体誰がそんなひどい事を…」
ギューッと唇を噛む王太子殿下。こいつ、きっとまだマリアが好きなのだろう。
「ライアン、それでマリア嬢を見つけた場所はどこだ。案内してくれ」
「わかりました、こっちです」
皆でマリアが閉じ込められていた場所へと向かった。辺りは既に真っ暗なので、灯りを照らしながらゆっくり進んでいく。
「ここです。ドアには南京錠が掛けられていたので、俺がけ破りました」
皆がゆっくりと中に入って行く。
「ここは確か、以前ピクニックを開催していた時、ちょっとした荷物置き場に使っていた場所ですね。ピクニックが中止になってからは使われていなかったので、存在を忘れていたくらいですよ」
「なるほど。だから中には何にもないのか。マリアはここで倒れていたのだな」
父上が指さした場所には、大量の血が…
「こんなに大量に血を吐いたのか?本当にマリア嬢は無事なんだろうな!」
王太子殿下が俺に詰め寄って来る。
「大丈夫です。心臓はしっかり動いておりました。ただ、俺が見つけた時は、痛みと苦しみで、もう動けなくなっていましたが…本当に見ていられませんでした…」
あんなに苦しそうなマリアは初めて見た。もう二度と、あんな姿は見たくない。唇を噛み、強く拳を握った。
「ここには何もなさそうだが、とにかく犯人の手掛かりがこの林にあるかもしれない。今日はもう暗い、明日の朝から捜索しよう。それから、犯人が見つかるまでは、貴族学院は休みにしよう。明日の朝一番に、生徒たちに伝えろ」
陛下自ら指示を出している。
「犯人なら…わかるかもしれません…」
俺のつぶやきに、一斉に皆がこちらを見た。
「ライアン、お前、何を言っているんだ?どういう事が説明しろ」
「ライアン、どういう事だい?僕たちにわかる様に話してくれ」
一斉に皆が詰め寄って来る。
「ここではお話しは出来ません。一度貴族学院へ戻りましょう」
速足で貴族学院に戻ると、専属執事が飛んできた。
「坊ちゃま、お戻りをお待ちしておりました。坊ちゃまがおっしゃった通り、バッチリ音声が録音されていましたよ」
「そうか、それは良かった」
「おいライアン、さっき犯人が分かるかもしれないと言っていたな。どういう事が説明しろ」
父上が俺に詰め寄って来た。皆も俺に注目している。
「俺はマリアに、居場所を特定できる機械だけでなく、録音機能が付いたネックレスを持たせていたのです。それがこのネックレスです」
「それは、いつもマリア嬢が首から下げていたネックレス」
「そうです。このネックレスが、全てを録音していたのです。俺たちが現場に行っている間に、執事に確認させました。悪いが音声を流してくれるか?」
「はい、かしこまりました」
ネックレスを専用の機械にセットすると、マリアの声が聞こえてきた。どうやら貴族学院が終わったあたりから再生されている様だ。
そこには、全ての真実が収められていた。そうか、あの女がマリアを…
そう、犯人は男爵令嬢、クラシエ・ディースティンだったのだ。どうやら王太子殿下が好きなあの女は、マリアがいる限り自分は愛されないと勝手に思い込み、マリアを殺そうとしたらしい。
今まで感じた事のない怒りが、体中から湧き上がる。
「ドン!何なんだあの女は!今すぐクラシエ・ディースティンを捕まえろ!ディースティン男爵家、絶対に許さない!私の可愛いマリアに手を出した事、絶対に後悔させてやる」
いつも穏やかなマリアの父親が、顔を真っ赤にして怒り狂っている。そりゃそうだ、俺も怒りで頭がおかしくなりそうだ。
「とにかく、今すぐディースティン男爵家に向かい、家宅捜索を行え。もちろん、クラシエ嬢も捕まえるんだ」
陛下の指示で、騎士団長たちがディースティン男爵家へ向かう準備を始めた。
「団長、俺も連れて行ってください。あの女だけは、絶対に許せないんです。俺の手で、捕まえたいのです」
マリアを苦しめたあの女だけは、絶対に許せない!
「わかった、お前も騎士団員だ。俺たちと一緒に来い。ただ…お前、マリア嬢の血を浴びたのだろう。団服が血だらけだぞ。着替えてこい」
「坊ちゃま、新しいお召し物です」
すぐに執事が新しい騎士団の服を持ってきてくれたので、急いで着替えた。そして、そのまま団長たちと一緒に、馬車に乗り込んだのだった。




