私、何をしているのかしら?
ライアンが去っていくと、私をジト目で睨む令嬢たち。ふん、別に睨まれても怖くないんだから。そもそも私は、1度目の生の時は、もっと熾烈な戦いをしていたのだから!
そう思っていたのだが…
「マリア、あなたライアン様がやっぱり好きなのね。それにしても、すごいわね。令嬢たちからライアン様を奪い取り、そのまま令嬢たちに一切の隙を与えないのですもの」
「本当ね…まるでお妃候補の戦いを見ている様だったわ…」
お妃候補の戦い?
しまった、私ったらつい熱くなってしまったわ。これじゃあ、1度目の生の時の私と同じじゃない。こんな事をしていたら、きっと素敵な殿方とは巡り合えないわ!
でも…
どうしてもライアンが他の令嬢たちと仲良く話す姿を見るのが嫌だったのだ。私ったら、どうしたのかしら?1度目の生の時は、ライアンが他の令嬢に囲まれていても、何とも思わなかったのに…
そもそもライアンは、どうして1度目の生の時、結婚をしなかったのかしら。1度目の時も今と同じくらい、令嬢からは人気があったはずなのに…
考えれば考えるほど、分からない。
「マリア、大丈夫?確かに気になる令息が他の令嬢に囲まれていたら、気が気ではないものね。気持ち、わかるわ」
そう言って私の肩を叩いて慰めてくれるリリア。て、何でそうなるのよ。
「リリア、私は別にライアンの事なんて…」
「好きじゃないとでも言いたげね。まあ、マリアは鈍いから、自分の気持ちにまだ気が付いていないのね…マリア、とにかく後悔しないようにね。ライアン様はとてもモテるのよ、他の令嬢と婚約してから泣いても知らないからね」
他の令嬢と婚約か…
後悔しない様に…
その言葉が、妙に引っかかる。私は今、一度目の生を糧に、二度目の生を生きている。今度こそ幸せになる為だ。
その為に、今回はヒューゴ様には近づかない様にしていた。そして、素敵な殿方を見つけ、幸せな結婚を夢見ていた。でも…
稽古場で再び稽古をしているライアンを見つめる。ただの幼馴染だと思っていたのに…
どうして急に、ライアンが他の令嬢と仲良くすると、無性に腹が立ったのかしら?
このまま1度目の生の時みたいに、ライアンをめぐって熾烈な争いを続けるの?そんなのは嫌よ。そもそもライアンは、本当に結婚するかどうか分からないのに…
とにかく、今回の生では幸せになりたいのよ。出来れば争いは避けつつ…
リリアはああ言っていたけれど、今回の生では争いごとは避けたい。と言っても、早速女の争いに参加してしまったが…
その点は大いに反省中だ。
そんな事を考えているうちに、お昼休憩に入った。一斉にライアンに群がる令嬢たち。その姿を見て、やはりモヤモヤとするが、もう令嬢たちの争いに参加しないと決めたのだ。
少し離れたところで、様子を見守る。
「マリア、ライアン様のところに行かなくていいの?」
「ええ、私は令嬢たちの争いには参加するつもりはないもの」
「もう、素直じゃないんだから…本当にマリアは…」
あきれ顔のリリア。なんと言われようと、私はもう争いには参加しないし、穏やかに暮らしたい。そして、私だけを見てくれる殿方と、幸せになりたいのだ。
「やあ、マリアちゃんたち。今日の俺たち、格好よかっただろう?」
私たちの元にやって来たのは、ジャック様やジン様、同じクラスの令息たちだ。彼らも騎士団に所属している。
「ええ、皆とてもカッコよかったですわ。やっぱりああやって竹刀を振るっている姿を見ると、見とれてしまいますわね」
「それは本当かい?マリアちゃんに褒められると、俄然やる気が出てくるな」
私は思った事を言っただけなのに、なぜか頬を赤らめ嬉しそうに笑う令息たち。
「おい、お前たち、マリアに近づくな。お前、なんでさっきみたいに俺のところに来ないんだよ」
なんとか令嬢を振り切ったライアンが、ふくれっ面で私の元にやって来た。
「だって、皆ライアンが好きで集まっているのでしょう?邪魔しちゃ悪いと思って…」
「何が悪いだよ!ほら、もう一般公開の時間は終わりだ。門まで送って行ってやるから。いいか、寄り道せずにまっすぐ帰るんだぞ。いいな、分かったな?お前の馬車が走り出すまで、しっかり見張っているからな」
そう言うと、私の腕を掴んで歩き出したラアイン。
「ライアン、マリアちゃんを独り占めするなよ。そうだ、せっかくだから、皆で騎士団の食堂で食事をしようぜ。物凄く旨いんだぜ」
「まあ、それは本当?せっかくだから、皆で頂きていきましょう」
「そうね、騎士団の食堂なんて、中々入れるものではないものね」
リリアたちも乗り気だ。早速騎士団の食堂へ向かおうとした時だった。
「いい加減にしろよ!あそこは男がウジャウジャいるんだぞ。とにかく、マリアはもう帰れ!」
そう言うと、無理やり私を門の方へ連れて行こうとするライアン。
「どうしてよ。ちょっとくらい食堂で食事をしてもいいじゃない!ライアンのケチ!」
「誰がケチだよ!」
「まあまあ、ラアイン。ちょっとくらいいいじゃないか。ほら、マリアちゃん、行こうぜ」
そう言うと、私たちの背中を押すジャック様達。すかさず文句を言うライアンをスルーし、皆で楽しく食堂で食事をしたのだった。




