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こんなはずではなかったのに…

新連載始めました。

どうぞよろしくお願いしますm(__)m

「今日もヒューゴ様はいらっしゃらないのね…」


いつもの様にベッドに座り、やって来るはずのない夫を待つ。


どうしてこんな事になってしまったのかしら?


私の名前は、マリア。元侯爵令嬢で、今はこの国の国王でもあるヒューゴ様の正室で王妃だ。沢山の令嬢の中から、必死に勝ち取った王妃の座。王妃になれば、きっと幸せになれる、そう信じていた。


苦手な元王妃様に媚を売り、他の貴族とも仲良くした。必死に勉強し、マナーも完璧にマスターした。努力に努力を重ね、やっと掴んだ王妃の座。でも…


ヒューゴ様は側室でもある男爵令嬢に夢中だ。さらに別の側室たちとの間に、次々と子供をもうけ、既にヒューゴ様には8人の子供がいる。


それなのに私は…

この6年、一度も部屋に訪ねてきてくれた事はなかった。それでも私は王妃として、必死に公務を行って来た。時にはヒューゴ様の仕事をこなすこともある。


それなのに、ヒューゴ様には感謝されるどころか、私とは目も合わしてくれない。


「私はただ…ヒューゴ様に愛されたかっただけなのに…」


ふと窓の外を見る。今日も綺麗な月が出ていた。そういえば、ヒューゴ様と初めて出会った日も、こんな風に月が奇麗な夜だったわね。


あれは10年前、私のデビュータントの日。当時14歳だった私は、王宮で開催された夜会に初めて参加したのだが…なんと中庭で迷子になってしまったのだ。


「どうしよう…こんなところで迷子になるなんて…」


綺麗にライトアップされていた中庭に見とれて、つい奥まで来てしまったのだ。泣きそうになりながら、必死に彷徨っていると…


「どうしたんだい?こんなところで」


そう声を掛けてきてくれたのが、ヒューゴ様だった。


「あの…実は道に迷ってしまって。ホールへ戻りたいのですが…」


「迷子になったのかい?それじゃあ、僕が送ってあげるよ。さあ、おいで」


そう言って手を握り、ホールまで案内してくれたのだ。不安そうな顔をしている私に


「ほら、上を見てごらん、月がとても綺麗だよ」


そう声を掛けてくれた。ふと空を見上げると、美しい月が目に飛び込んできた。その月は本当に綺麗だった。


「月明かりに照らされた君の髪、とても綺麗だね。まるで女神様みたいだ」


そう言ってほほ笑んでくれたヒューゴ様。その笑顔を見た瞬間、私はヒューゴ様に完全に心を奪われてしまったのだ。


あの日から、ヒューゴ様に愛されたくて、必死に自分を磨いた。友人たちと遊ぶこともなく、ひたすら勉学に励んだ。貴族学院も首席で卒業した。念願かなって王妃に内定した時は、天にも昇る気持ちだったのに…


「私はこのまま、誰からも愛されずに、ただ1人ひっそりと生きていくのね…」


友人たちは皆貴族に嫁ぎ、子供にも恵まれ幸せに暮らしているのに…

私はどこで間違えてしまったのかしら?


もしもう一度人生をやり直すことが出来たら、今度は私だけを愛してくれる人と結ばれたい…

この国で唯一、一夫多妻制を採用している王族ではなく、私だけを愛してくれる殿方と…


なんだか無性に眠くなってきた。


私は静かにベッドに潜り込み、そのまま眠りについたのであった。

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