フェイジョアレディース
「ドラッグ フェイジョア」
スーパーの向かいに大型のドラッグストアが出来た。
形態はスーパーとほぼ同じで、薬以外に食品や酒、たばこ等も売られている。
冷凍食品は、スーパーよりも充実している印象。
納豆や豆腐はスーパーよりも安いのでほとんど毎日通うようになった。
清潔で明るい店内、しかし天井からはブドウ狩りかと思うくらい多数の監視カメラがぶら下がっている。
客を全く信用していないのかな。
数年後、少し離れたホームセンターの前にB店が出来、
更にその数年後、別のスーパーの近くにC店が出来た。
人口5万人の地方都市に3店も出店。
大丈夫かねと思ったが、消費者としては有難い。
しばらくして気付いたのは店によって価格が違うという事。
B店C店の方が安い。
差は僅かだけど豆腐や納豆は毎日食べる物なので無視できない。
近くて行きやすいA店では無くB店C店に行くようになった。
「地味メガネ」
数ヶ月後、久しぶりにA店に行くと、新しい店員さんがいた。
身長は低め、黒縁の四角い眼鏡を掛けていて、
一見地味だけど色白の綺麗な女性。
年齢は20代から30代かな。
はつらつとしていて元気な人。
何度か通ううちに彼女に好意を持つようになった。
レジを打ったり、商品を陳列したり、
ひたむきに働く姿が美しかった。
しかし、突然地味メガネがいなくなってしまう。
時間をずらして行ったりもしたがいなかった。
とにかく寂しかった。
地味メガネにレジで対応してもらう数分間が、自分にとって大切な時間だった。
「ホスピタリティ」
地味メガネが辞める少し前、A店に新しい店員が入った。
身長は高め。少し明るくした髪をシュシュで束ねている。
とにかく声がカワイイ。
私が知る限り最も声がカワイイ女性。
前髪が長く、メガネとマスクで顔は殆ど分からない。
年齢も分からない。
とても真面目な印象。
高齢の女性を売り場に案内する様子は、丁寧で思いやりに満ちている。
「地味メガネ復活」
地味メガネが辞めて一年ほどした頃、
B店に行くと地味メガネがいた。
とにかく嬉しかった。
平静を装うのが大変だった。
「さらばホスピタリティ」
A店で異変を感じるようになった。
ホスピタリティがレジにいて、
今日はホスピタリティがやってくれるんだなと思っても、
私が会計する時にはいなくなっている。
それが毎回続いた。
男の店員が寄ってくるような気もする。
私が入店すると、ホスピタリティはレジから外れ、
別の人に代わるようだ。
対応がシステマチックでスムーズ。
ホスピタリティが個人で避けているだけでは無く、店として対応している印象。
決定的な事は、店内ですれ違う時、挨拶してくれなくなった事だ。
向こうからすると、どうも私はストーカーらしい。
そう考えだすと店にいても緊張して落ち着かない。
ホスピタリティには、好意を持っていたが彼女にとってはストーカー。
悲しかったし腹も立った。
しかし、ホスピタリティが思いやりにあふれた優しい娘だという事実は変わらない。
少し離れたところからホスピタリティを見て、
私が、頑張ってるなあと和んでいる時、
ホスピタリティは恐怖を感じていたのだ。
その格差に思わず笑ってしまった。
おそらく彼女が望んでいる事、
そして私に出来る唯一の事は、A店に行かない事。
「地味メガネ2」
おそらく私の情報は、少なくとも近隣の3店で共有され、
周知されているはずだ。
地味メガネにもあわす顔が無い。
翌日もフェイジョアに行った。
地味メガネがいるB店では無くC店。
何故かレジにはB店にいるはずの地味メガネがいた。
売り場へ向かう途中男の店員とすれ違ったから、
私が会計する時は、地味メガネはレジを外れて彼が対応するのだろうと思っていたが、
レジに行くと地味メガネがいた。
彼女も私がストーカー認定されている事を知っているはず。
恐怖や嫌悪、軽蔑の感情は隠そうとしても滲み出てしまうもの。
嫌々やっているという対応をされると思い、内心ビクビクしていたが、
拍子抜けするほど普段と変わらない対応だった。




