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9.人間失格 -trANsformaTIon-

八雲(やくも)(るい)は言いようのない気持ちを抱えながら夜の床善町を歩いていた。


街灯ひとつなく、廃墟か空き地がほとんどの住宅街は不気味だが、それだけ吸血鬼が潜んでいる可能性がある。

彼女は吸血鬼狩り(ヴァンパイアハンター)として訓練した暗視能力で注意深く道を進んでいた。


「(私は、お父様とお母様の仇を討つために⋯⋯)」


彼女の胸に燻るのは、あの銀髪の吸血鬼のこと。

だから泪はあの吸血鬼が逃げた方向にこの町があることを割り出し、一縷の望みをかけて夜の巡回へと繰り出した。




八雲泪は吸血鬼狩りを生業とする一家に生まれた。

吸血鬼が居る以上、吸血鬼狩りは存在する。

人を守ること、吸血鬼を斃すことを使命として背負った一族。

命と向き合う仕事だからか、父も母も厳しさの中に優しさがある人だったのを覚えている。


5歳の時、母が死んだ。

吸血鬼による失血死だった。


その日は随分と暑い日で。

汗と涙でぐちゃぐちゃになりながら、私は幼いながらに吸血鬼を憎んだ。


その日から私は修行を始めた。

父親には止められた。女の身で吸血鬼狩りなんて危険な仕事をする必要は無いと。

真っ当に幸せになりなさいと。


けれど、私は思った。


どうやって?

お母様は死んだのに。

あいつらに、悪い吸血鬼達に殺されたのに。

その仇を討たずして、どうして私は幸せになれるの?


そして、私の復讐への道は始まった。


私には才能があった。

私には努力する理由があった。

吸血鬼を殺す、そのためだけの日々を送って⋯⋯けれど、その時の私は幸せだった。

まだ、誰かと笑えたから。お父さんと笑いあえたから。


母の死から10年後。

父も死んだ。吸血鬼に殺された。


私は、真に復讐を決意した。


この世界は間違っている。

人の命が、幸福が奪われる。

それを奪うのは、いつだってルールの外側に居る”正しくない”モノ。

吸血鬼。

奴らは正しくないモノだ。

誰かが殺さなければならないモノだ。


ひたすらに強さを求めた。

人としての生き方は捨てた。

ただ吸血鬼狩りとして強ければ良かった。


初めて吸血鬼を殺したとき。


あれは私が16歳のとき。その日は雨が降る夜で、路地裏で汚い吸血鬼を刀で斬って殺した。


そのとき私は⋯⋯正義を成すことの実感を得た。


殺した吸血鬼が食うはずだった人間を救えた。

奪われるはずだった幸せを守れた。


そして、手に残る感触を忘れぬように⋯⋯私は吸血鬼を斬り続けた。


奪われた幸せの仇を討つために。

吸血鬼は生きいてはいけないのだと、その主張を世界に叩きつけるように。


なのに⋯⋯あの銀髪の吸血鬼は、それが間違いだとでも言うような態度だった。

それが気に食わない。悪に正義が否定されるなんて許せない。


だから私は、あの吸血鬼を斬ることに執着しているのかもしれない。




と、彼女の人並み外れた聴覚が破壊音を捉えた。

音の感じからしてかなり遠い。

つまりこれは人間の手では難しい破壊行為の音⋯⋯吸血鬼が発した音である可能性が高い。

咄嗟に刀の柄に手を起き、音のした方向へ駆け出そうとする。


その瞬間、赤と銀の軌跡が頭上を物凄い速度で通り過ぎた。


「あれは⋯⋯」


反射的に目が追ってしまった銀色は、どこか見覚えのある色な気がして。


「⋯⋯逃がさない!」


叫び、泪はふたつの軌跡が消えた方向へと駆け出した。



◆◆◆



龍川芥は夜を走る。

彼の胸中は、複雑な想いがひとつの形を結ぼうとしていた。



靴下を履く余裕はなかったから、スリッパから靴にそのまま履き替えて飛び出した。

足が痛い。

走る度靴裏と足の皮が擦れ、鋭い痛みを伝えてくる。

走る、痛い。

走る、痛い。

走る、走る、走る。


なぜ走るのか、と頭のどこかが問うたとき⋯⋯少し昔のことを思い出して、思わず笑ってしまった。


人生とは無限の荒野を旅することだ。

装備も、目的地も違う、果ての無い旅。

そんな荒野に、俺は裸足で産まれ落ちた。

言ってしまえばそんな感じだ。

何かが足りず、それでも生まれてしまった命。

踏み出すだけで血が滲む。

他人からすれば訳ない1歩が、ひどく痛い。

誰にも理解されないそれを、俺は抱えて生きてきた。

次第に痛みは気力を奪い、俺はその場に立ち止まって、ただこの旅から解放されることを望んだんだ。


なら、なぜ走るのだろう。

痛いなら立ち止まればいい。昔そうしていたように。

苦しいなら終わりを待てばいい。ちょっと前まで、そうしてのうのうと生きていたハズだ。


走る、走る。

痛みを押し殺して、走る。


そうだ。

多分、どれだけ痛くても諦められないものができたんだ。

俺にもやっとできたんだ。

だから、これを捨ててしまったら。諦めてしまったら。

俺は今度こそ、本当に無価値になってしまう。


⋯⋯初めて知ったよ。

こんな想いがあるなんて。

そうだな、認めるよ。

こんな馬鹿みたいなの、俺のキャラじゃないんだけどな。

でもさ⋯⋯今は本気で思ってるんだ。

ガブリエラ。


俺は――お前を諦められない。


走る。

ただ、走る。


待ってろよ。

勝手に死ぬなよ。

まだお前に言うべきことが残ってるんだからさ。



◆◆◆



そこは古い教会だった。


並んでいる朽ちた木製の長椅子、所々割れたステンドグラス、くすんだ赤色のカーペット。


その中で、二体の吸血鬼は対峙していた。


いや、鋭い眼で相手を睨んでいるのはガブリエラの方だけだ。


出口から見て奥側、ステンドグラスを背にした赤髪の吸血鬼──ノーゲート・クリムゾンは、演者のように語り出した。


「テメェを探してる時に見つけたんだよなあ、ココ。知ってるか、オレの国では、人間は懺悔する時教会に来るんだぜ。

カミサマとやらに赦してもらいに、よォ。

いかにも雑魚っぽい考えだよなァ?

強けりゃ正しい。弱けりゃ間違い。

ソレが世界の摂理だってのによォ」

「⋯⋯」


ガブリエラは、返す言葉を持たなかった。

ただ警戒だけをしていた。

喋りに興じるだけの敵を。

それに苛立つように、ノーゲートは凄む。


「なんとか言えや。しおらしくしやがって。それでも【紅い暴君】の忌み子かよ」

「⋯⋯!」


ガブリエラが目を見開く。

【紅い暴君】。

それは吸血鬼の歴史上最悪の名前。

【暴君】の他にも【暴食】【同族喰い】とも呼ばれ、果ては【夜の太陽】とまで畏れられた⋯⋯吸血鬼を喰らう、吸血鬼に畏れられた吸血鬼。

そして、ガブリエラを200年の孤独に追いやった原因。


「ファック、バカみてェに驚いたカオしやがって。舐めてんのか?

テメェが【紅い暴君】の死骸から産まれたバケモンだってことは、吸血鬼なら誰でも知ってるぜ」


そう。

ガブリエラ・ヴァン・テラーナイトは化け物だ。


畏れられ忌まれ疎まれ、やがて百体の吸血鬼によって殺された【紅い暴君】という魔王。

それによって全てが解決したと思いきや、その恐怖は終わらなかった。


なぜなら、その死骸からガブリエラという吸血鬼が産まれてしまったから。

子に罪は無い、と百体の中で最も強く最も甘かった理想家の吸血鬼が彼女を殺すことを許さなかったことで、ガブリエラは生存を許された。

けれどそれは、多くの吸血鬼にとって恐怖の存続であり、誰もガブリエラに近付こうとはしなかった。

彼女に寄ってくるのは、彼女に敵意を持ち殺そうとするものだけ。

それほどに【紅い暴君】の名は重く、ガブリエラの十字架となってきた。


それはこの半年間で忘れたものだった。

龍川芥はこのことを知らない。

だから【紅い暴君】なんて聞きたくもない言葉も、この半年は滅多に聞かなくて済んだ。


けれど今、200年間の十字架が蘇る。

ガブリエラはそれが、今までの日常との決別とさえ思ってしまった。


「まあよぉ、ンなことはどうだって良いんだよ。オレが聞きてえのはたったひとつだ」


押し黙ってしまったガブリエラの前で、ようやくふざけた顔を止めたノーゲートが振り返る。

その眼は、顔は、ガブリエラよりもずっと憎悪と憤怒に塗れていた。


「テメェ、ノース・クリムゾンを殺したか。

オレの妹を殺したのがテメェってのは本当か」


ぶわりと。

漆黒の意思のようなものがその場を支配する。

それほどの殺気。それほどの強さ。

ガブリエラは⋯⋯罪から逃げられない少女は、真実を語る。


「クリムゾン家は⋯⋯私が潰した。

あなたの妹がその中に居たんだったら⋯⋯多分、殺したのは私」


クリムゾン家。

半年前、芥と出会った直後に潰した家。

あのときはただ、屋敷が欲しいだけだった。

だから晩家の吸血鬼と契約した。


「日本で好き勝手しているクリムゾン家を潰せば、屋敷と半永久的な経済的援助を約束する」という内容で。


そう、これは罪だ。

自分のために、身に余る望みのために、必要以上を奪った。

その罰が半年かけて追いついてきた⋯⋯ただ、それだけの話だ。


「そうかいそうかい⋯⋯テメェにとってオレの妹は、名を覚える価値もねェ路傍の石だったってワケかよ」


みちみち、ギチギチと。

肉が裂ける音がする。

ノーゲートの背から、赤いスーツを持ち上げる”翼”が現れる。

当然のように、強者の証である大きな2本。


それは、今のガブリエラの翼より大きく。


不思議な形の翼だ。

少し細長い形状で、根本付近に小さな穴が4つ空いている。


その穴に指を突っ込み、まるで握るようにしてから、ノーゲートは翼の先をガブリエラに突き付けた。


それはまるで──赤黒い巨大な剣。



「殺す。

手も足も全部斬り落として、ノースに懺悔させてから殺してやるよ。


さあ――オレの”強さ”を思い知れや、ガブリエラ・ヴァン・テラーナイトォッ!!!」



赤い暴虐が、罪深き吸血鬼へと襲いかかった。



◆◆◆



ノーゲート・クリムゾン。

赤髪の吸血鬼はそう名乗った。

クリムゾン、それは半年前ガブリエラが潰した吸血鬼の家⋯⋯そして、俺が”あの罪”を背負った、忘れることの出来ない名前。


龍川芥は、少ない情報から全体像を想像することに優れている。

それは女性の心の機微に疎い分、ガブリエラ相手には発揮されなかったが⋯⋯錆び付いたその機能が、全力で本領を発揮していた。


クリムゾン。アメリカの吸血鬼の家の名前だとフーロンさんが言っていた。

ノーゲート・クリムゾン。恐らくクリムゾン家の頭だったノース・クリムゾン関連。

ちょうどいい場所。もしクリムゾン家が本物の家族同様の絆で繋がった集団だったら⋯⋯。

ガブリエラ達が向かった方角。

床善町の地理。

アメリカに根付いた文化。

吸血鬼が決闘場所として望む条件。

その全てから導き出される答えは──。


床善(とこよ)教会⋯⋯廃棄されて取り壊されてない、無人の教会。⋯⋯ここの可能性は、充分に、ある」


荒い息を吐きながら、俺は教会を遠目に捉えたところで肩を上下させていた。

足は血が滲んでいるが、もう気にならない。

問題は体力と時間だ。

走り出してからかなりの時間が経っている。

急がなければ。

嫌な予感が拭えない。


と、俺の横で足音がした。

反射的に振り返る。

そこに居たのは⋯⋯女の子?


喪服のように黒いセーラー服。

顔は見えないが⋯⋯腰に下げているのは、間違いなく刀。


こいつ、ガブリエラが言っていた吸血鬼狩り(ヴァンパイアハンター)か!


「⋯⋯民間人? どうしてこんな所に⋯⋯」


少女の猜疑の呟きを聴いた時⋯⋯何かが壊れるような大きな音が、教会の方から聴こえてきた。


「……!」

「あそこか!」


両者同時に気付く。

あの破壊音は人間には出せない。

爆発するような空気の軋み、何かが激しくぶつかるような音、それが断続的に響いている。

怪物同士のぶつかり合いが教会の中で起こっていることを容易く悟らせるほど、なお続く破壊音は激しいものだった。


俺は焦りを覚える。

吸血鬼狩りと出会うこと以外、全てが予想通りだ。だからこそ嫌な予感が拭えない。

いや。

俺の予想は十中八九正しいともう確信している。

故に俺は行かねばならない。

成すべきことを……”俺に出来ること”をするために。


そのために1歩、踏み出して。


「止まって下さい」


刃のような鋭い声に、俺の動きは封じられた。


「……おいおい。あんた、人間の味方じゃ無いのかよ」


俺の背後で、吸血鬼狩りは刀を抜いていた。

その切っ先が俺の首に突きつけられている。

半年間で麻痺しかけた本能が、それでも告げている。

――動けば、斬られる。


「……やはり、貴方はただの民間人では無さそうですね。

普通の人は私を”学生”だと思うはず。けれど貴方は”人間の味方”と言った。

つまり貴方は、私の正体を何らかの方法で知っていた」


……マジかよ。

指摘されてからようやく気付く。

その通りだ。一般人なら黒いセーラー服の女の子を見て「吸血鬼狩りだ」とは思わない。

例え長い棒のようなものを入れれるケースを持っていたとしても、いいとこ剣道部とかに所属してるのかなと思うだけだ。

なのに俺は、「人間の味方」と……すなわち吸血鬼狩りと言い当てた。

それはガブリエラから聞いた知識があったからだが……それを知らない吸血鬼狩りは、一体どう思う?


「貴方が……いや、お前が吸血鬼なら、私が吸血鬼狩りだと気付くのも容易いだろう。銀の刃は相当臭うらしいからな」


冷や汗が頬を伝う。

俺は今、少女の中で「人間に化けた吸血鬼である」と確定されようとしている。

そうなれば……当然の様に斬られるだろう。

吸血鬼は人間の敵なのだから。

そしてそうなれば……俺は、自分の役目を完遂出来なくなる。

それだけは、駄目だ。


「……信じられないかもしれないが、俺は人間だ」


両手を上げて、答える。

声が固くなってしまったのが不安で仕方ない。


「証明がしたい。振り向いていいか」

「……いいでしょう。ただし、少しでも妙な動きを見せれば」

「分かってる」


ゆっくりと、両手を上げたまま振り向く。

そこには闇の中で鈍く光る刀と、それよりも鋭いのではないかと思うほど剣呑な眼光の少女の姿があった。

彼女の眼光はしかし……敵意に満ちたものから、訝しげなものへと変化する。


「……その目」

「目? 目がどうしたんだよ」


知ってるよ、吸血鬼は目が赤い。それは夜闇の中で良く光り、吸血鬼はそれを隠すことは出来ない。

だから知らないふりを装いつつ、俺は続ける。


「俺は普通の人間だ、早く解放してくれ。あんたの事は噂で聞いたんだ。”刀持った女子高生の吸血鬼狩りが居る”ってな」


多少苦しいが、俺が人間であると証明出来た以上大体の言い分は通るハズだ。

吸血鬼狩りは少し沈黙しながら悩み……そして剣呑な雰囲気を収めた。


「……多少腑に落ちませんが……そうですね。勘違いだったみたいです。

刀を向けてしまいすみませんでした」


突きつけられていた刀が下ろされ、俺は分かりやすく安堵の息をつく。

しかし、根本的な問題は解決しなかった。

少女は刀を鞘に収めながら言った。


「私は吸血鬼を狩りにあの教会に向かいます。貴方は決して近付かず、今すぐ帰って下さい。ただでさえ夜は危険ですから」


そうだ。

彼女が吸血鬼狩りなら……人間にとって正義の味方なら。

俺が人間と分かった以上、危険と分かった教会に近付けさせはしないだろう。

その事に、今更ながら気付く。


「……どうしました? 早く避難を……」


少女が当惑の声を出す。

そう、俺は最初から間違えていた。

勝利条件は……俺にとって必要なことは、少女に「自分が人間である」ということを証明することでは無い。

どうにかして……説得でも無力化でもいい、何とか”吸血鬼狩りの少女”という障害を取り除いて教会に行くこと。

いや、それ以上……”吸血鬼狩りの少女”という、俺が予想した”これからの展開”を邪魔しかねない不確定要素(イレギュラー)を、この盤面から排除することも必要だ。

つまり……。


「クソったれ……」


小さく、口の中で呟く。

俺は……この最悪のタイミングで吸血鬼狩りと鉢合わせた時点で、ほとんど詰んで居たのだ。

もう、彼女に怪しまれず教会に近付くことは不可能に近い。

そして彼女を教会から遠ざけることも、ガブリエラに近付けないことも同じように苦しく。

何より……その極小の可能性すら、彼女に1度疑われていることにより閉じられてしまう。


「やはり貴方、何か様子がおかしいような……」


一向に立ち去らない俺に、吸血鬼狩りは再び疑いの目を向ける。刀の柄に手がかかる。




俺は……足元が、崩れていくような気がした。


教会が、辿り着くべき目的地が、やけに遠い。

刀が鞘の中で鳴る音が、少女の警告がやけに小さく聴こえる。


どうして、こんな邪魔が入ったのだろう。

数分彼女が遅れていれば、俺は予定通り役目を全う出来たハズなのに。

事態が数分早ければ、俺の移動速度がもう少し速ければ、そもそもこんなこと起こらなければ。


じくじくと、じわじわと。

焦燥が四肢を満たし、諦念が顔を出そうとしている。


俺は、いつもそうだった。

まるで運命に邪魔されているかのように、世界に嫌われているかのように。

”最悪”は、何時だって俺の目の前に現れる。


「……分かってたハズなんだけどな」


ぽつり、呟く。

もう少女の反応なんて、俺は認識していなかった。

ただ、絶望だけが胸を満たしていた。

この世界への、絶望が。


「この世界はクソだ、ってことくらい」



どろり、と。

心の(あな)から闇が溢れた。

それは黒い泥の様に、ドロドロと心に広がっていく。



「なあ、俺は間違ってたのかなあ……?」

「……は?」


独り言のように、呟く。

それは目の前の少女に問うたのか、それともクソったれな世界に問うたのか……それすら、分からない。

まるで荒れ狂う黒い嵐のような心を、俺は既に制御出来なかった。

衝動に任せ、ただ語る。

口を突いた言葉達を、無意味に無意義に羅列していく。


「いや、間違ってたんだろうなあ。

こんな世界で”正しさ”なんて無意味だって、とっくに気付いてたのになあ」



どろどろ、ドロドロと。

黒い闇は、泥のような”それ”の侵食は止まらない。

まるで脳の皺ひとつひとつに染み込むように、心という気体と結合するように。

黒が、満ちていく。



「ああ、もう駄目だ。諦めるしか、無いんだ」


諦念が、胸を支配する。

ぽつり零した本音は、深く深く心の底へ落ちていく。

昔、憧れたことがあった。

今も憧れていた。


「俺は、ヒーローに成れないのか」


俺は本当は、何かの主人公で。

自分の守りたいものを、必死になれば救えるのだと。

そんな夢は、今決定的に否定された。

だから、諦めた。


「俺は……正気のままだと(・・・・・・・)、好きな奴ひとり救えないのかよ」



心に空いた穴から、際限なく溢れる泥。

黒い汚泥は止まらない。

最早心という器から溢れ、身体中を満たしていく錯覚すら覚える。

ドロドロと。

止まらない。

そう、黒い汚泥の名は――絶望。

絶望が、俺の体を満たしていく。



「なら、もういいよ」


諦めの言葉を、吐く。

俺は……その言葉と共に、ひとつの思想を捨てた。



俺は信じていた(・・)

人間の優しさを。


利己的で排他的、他人のことなんてどうでも良くて、自分のためなら何でもする。

そんな人間の本質を嫌悪した。


誰かに優しく出来るのが人間だと。

人間とは他人を信じられる尊い生物なのだと。

俺にとって、人とは尊いものだった。

何より美しい存在だと信じていた。


けれどそれは、きっと何処までも利己的な願いから生まれた思想。

他でもない俺自身が、誰かに優しくされたかったから。誰かに信じて欲しかったから。

だから「人は優しい」と信じていた。そうあるべきだと思っていた。


でも、そんなのはもう必要無い。

誰も傷つけずに済む方法では、誰も救えないならば。

容赦なく傷つけよう。

優しさなど捨て去ろう。

誰も信じぬ人で居よう。


どんな罰も覚悟している。

俺は永遠に独りでいい。

俺の居場所は地獄で構わない。

もう誰かに優しくされることも、誰かに信じてもらえることも、期待しない。

傷つけることも、傷つけられることも痛いけど……今だけは、その恐怖も忘れよう。


修羅でいい。

悪魔でいい。

俺が信じた、誰かに優しい尊い人間(ひと)じゃなくていい。

そんなもの、自分から失格になってやる。


他人を地獄に堕としてでも。

誰かを足蹴に蹴落としてでも。


俺は、俺の利益を――たったひとりの吸血鬼を優先する。



そう。


「醜悪も、罪悪も、全て認めるよ。

何故なら俺は――」


この苦しみを。

この痛みを。

”絶望”を。

他人に、世界に、押し付ける。


優しさは捨てた。

他人の良心を信じることも辞めた。

美しい人間の心だったものを、他の何よりも醜く歪めた。


目的の為に、他の全てを利用する。

自分の為に、他人の全てを奪うことも辞さない。


それはもう、俺が信じた人に非ず。

悍ましい”人間以外の何か”で。



だから、俺は宣言する。


この世界に絶望した者として。


この世界に、最悪の運命に、決まりきった敗北に、反旗を翻す者として。


そう、俺は。



「俺は――人間失格だ」



絶望が、身体に満ちたソレが暴れ出す。

足りない、足りない!

まるで足りない!

狂い足りない!

絶望し足りない!

この世界を犯したい!

この苦しみで、この痛みで!

こんな運命を喰い破りたい!

この俺の絶望で!

もっと寄越せ!

もっと堕ちろ!

絶望し足りない!

狂い足りない!



俺は――口の端を吊り上げた。

これだけ絶望して、まだ足りないと言うのなら。

狂い足りないと、これではまだ救えないと言うのなら。


良いだろう。

この世全てを俺の絶望で満たしてやろう。

それほどの悪意で武装しよう。



思い出そう。

俺の人生を。

恥の多い生涯を、この絶望で満ちた18年間を。


裏切られ続けた期待を。

敗北し続けた現実を。

分かり合え無かったことを。

心が苦しみ傷んだことを。

希望が変質した絶望を。

絶望が創り出した歪な希望を。

砕かれた思いを。

灼かれた願いを。

無意味だった命の果てを。


世界を呪った愚かな男の人生を、思い出す。



心の孔は、遂に埋まった。

溢れ続ける激流のような絶望が、埋まらないハズの孔を埋めたのだ。

ドロドロと、ドロドロと。

絶望の奔流は、世界を汚す。

俺のクソみたいな世界を汚していく。



そう、この世界はクソだ。

俺がようやく見つけた希望を――絶望の果てにやっと掴んだ救いを。


ガブリエラ・ヴァン・テラーナイトを。


俺から奪おうとするのだから。



だからもう、俺は正攻法では相手しない。


努力の末の勝利だとか。

正義の掴んだ未来だとか。

才能が齎した平和だとか。

正しさが産んだ可能性だとか。


そんなものは、もう俺には必要無い。


最低に。

最悪に。

醜悪に。

極悪に。

下劣に。

悪辣に。

卑劣に。

卑怯に。

そして……最高に最狂に。

美しい世界に、醜く産まれた者として。

この美しい世界に、絶望する者として。


「人間失格」として。


俺は……この世界(ものがたり)を否定する。

俺に課された運命(バッドエンド)を、俺の絶望で書き変えてやる。



「人間失格……悪くない響きじゃないか。

吸血鬼の虜になった人間には、全くお似合いの名前だね。


なあガブリエラ――君は今の俺を見ても、俺を求めてくれるかな?」



陰惨に、嗤う。

その顔は――ただ、底無しの絶望に満ちていた。









八雲泪は思わず身構えた。


吸血鬼を追って辿り着いた教会で、民間人と思われる青年と出会った。

吸血鬼と間違え詰問してしまったが、誤解は解け誤って斬ることも無かった。

それまでは良かった。

問題は、彼がただの民間人ではなさそうなこと。


彼女が身構えたのは、先程まで意味不明なことを言っていた男の雰囲気が、明らかに異質なものへと変わったからだ。


その青年は赤く光る瞳も、明確な武器も持っていない。

それなのに……なんだ、この血の凍るような雰囲気は!


不気味に過ぎる。

警戒してしまう。

悍ましく感じる。

何故か……恐怖さえ抱いてしまう。

それほどに、異質。


彼女の反応を見てか、陰惨に嗤った人間失格は、ひとりの少女に語り出す。


「――恥の多い生涯を送って来たんだ」


それは、独り言なのか。

それとも、別の何かなのか。

それすら分からず、理解出来ず。

ただ、その声は、八雲泪の背筋を粟立てた。


「俺には人間の生活というものが見当もつかない。

他人の心を知りたかった時も在ったなあ」


男が、踏み出す。

1歩、近付いてくる。

全てが意味不明の中……ただ、彼は語る。

滔々と。堂々と。

その全てに恐怖を侍らせて。


「でもね、そんな俺でも――”絶望”が何かは知っている。

嗚呼、自己紹介が遅れたね。

俺は……そうだな、唯の人間失格さ」


泪は、まるで理解出来なかった。

聴いたはずの言葉は、脳に入ってこない。

ただ、不気味で。

ただ、不思議で。

それはまるで……人では無い、別の何かと相対しているような。

吸血鬼よりも悍ましい何かと。

そんな錯覚さえ、泪に抱かせる。


「ねえ。君は”世界”ってなんだと思う?」

「⋯⋯は、い?」


問い掛けを。

言葉を脳が理解してしまい、思わず声が出た。


ざり、ざりと彼は近付いてくる。

泪は⋯⋯思わず刀を抜いてしまった。

それなのに、喉は張り付いたみたいに警告の言葉を言うことも出来ない。


「(どうして⋯⋯どうして、どんな吸血鬼と向き合ったときより、この人が怖い!?)」


泪は……目の前の男に、ただ怯えた。

積み重ねた剣技も、才能に裏打ちされた自信も、何故か恐怖を払ってはくれない。


月光が照らす中、彼は続ける。


「”世界”というのはね。認知の範囲のことなんだよ。

神を本当に信じている人の世界には神様が居て。

戦争を見たことがある人の世界には地獄があって。

楽園で過ごした幸せな人の世界には楽園しかなくて。

そして何も知らない人間の世界には、なんにも存在しない。

そう、”世界”とは……その人間にとっての全てを指す言葉なんだ」


ざり、ざりと足音が近付く。

遂に泪の足はがくがくと震え出した。

身体が言うことを聞かない。

ただ、動けない。

まるで大人に叱られるのに怯える子供のように。

蛇に睨まれた蛙のように。

空間が、感情が、男に支配されている。


そんな泪を落ち着かせるように。

彼は「にこり」と笑って。


震える刀の先をなんでもないようにつまみ⋯⋯そして、自らの心臓へとその切っ先を持っていった。


刀が、服を押す。

男は、依然笑顔のまま。


あと一突き力を込めれば、この男の心臓に刃は沈み、この人を殺してしまう。

人を、殺してしまう。

なのに、死の前に立ってさえ。

男の笑顔は、陰惨な笑みは、揺るがない。


泪はそのとき、ようやく恐怖の正体に気がついた。



――理解出来ない。

だから、怖い。



この人のおぞましい笑顔も、その行動も、口にする言葉も、何もかもが自分の理解の外側にある。

何も推し量れず、何も見いだせない。


それはまるで、見えない”死”を恐れるように。

未知に恐怖を抱く人間の本能が、目の前の人間に恐怖している。


その「未知」が口を開ける。


「恐ろしいかい。人を殺すのは」


目が、合う。

その瞳には何も写っていなかった。

ドロドロとした黒い泥を覗き込んだような、そんな不快感と不安感だけがあった。

それは、絶望。

絶望が、視線を通じるように伝播していく。


「未知」が、再び口を開く。


「恐ろしいよね。怖いよね。

誰かを傷付けることは……殺すことは、嫌だよね。

どうしてか分かるかな?


それは”取り返しがつかないから”だよ。


刻まれた傷も、訪れた死も、絶対に変えることは出来ない。拭うことは出来ない。

死は絶対の不可逆。

だからこそ、殺人は絶望足り得るんだ」


がくがくと、刀を持つ手が震える。

泪は動けなかった。

冷や汗を流し、体を震わせておいて、1歩身を引くことすら出来なかった。

それほどに、圧倒されていた。

絶望を振り撒く異常者に、恐怖していた。


そして……「未知」は遂に、核心へと。


「さて、君の世界を広げてあげよう」


楽しそうに。

愉しそうに。

男は嗤って。

口を開く。

なんの気なしに絶望(しんじつ)は告げられる。



「──吸血鬼には、人間(ひと)の心があるんだよ」



その言葉は、何故か否定出来なくて。


ドクン、と。

心臓が跳ねる。

じわじわと、足から首目掛けて毒蛇が這い上がってくるような気分だった。

絶望という名の毒を送り込む、毒蛇が。


「な、にを、言って……」

「吸血鬼は、人と同じ心を持つ者だと言っているんだ」

「そ、そんなわけがッ⋯⋯」


思わず漏れた否定の言葉。

それを言わせたのは理性か、それとも。


そんな泪を嘲笑うように、人間失格は語る。

謳うように。ただ、善意だけで助言するように。


「彼女はね。笑ったんだ。

”愛や恋は大切な気持ち”だと。

それを抱くだけで、自分を赦せるほどそれらは美しいと」


それが誰を指しているかなど、泪にはまるで分からず。

けれど何故か、心にストンと収まってしまう。

猜疑する部分をすり抜けてしまう。


「彼女はね、哭いていたんだ。

”奪いたくない”と。”拒絶されたくない”と。

”自分にも心が欲しい”と。

ふふ、今思い出しても愛らしいな。あの時の彼女の顔は」


……それは。

それは否定しなければいけない。

それだけは看過してはいけない。

なぜなら、これを認めてしまえば、八雲泪は。


「目に見えないものは、在ると信じた場所に生まれる。

吸血鬼は心を望んだ。

それが自分にも在ると信じた。

さあ。間違ってるのはどちらかな?」


そして八雲泪は……心の何処かで、奥底で、自らの間違いを認めた。

認めて、しまった。


だって彼女は馬鹿ではないから。

彼女は吸血鬼と何年間も向き合い続けたのだから。

復讐の為に、都合の悪いものは封じた。

見なかったフリをし続けた。

人間の弱さに、甘えた。

その、今まで背を向けていた、微小の棘のような可能性が。

それが男の言葉によって育ち出す。


「吸血鬼だって苦悩する。

彼等も命を奪う行為に抵抗を覚え、それでも”生きる為”と諦めた。

なら、彼らは誰の為に生きたかったんだろうね?

家族? 友人? 恋人?

……ああ、人間の君にはどうでもいいことか。

”生きる為”に藻掻いていた彼らを、自分の醜いエゴで殺した君には」

「あ、ああ⋯⋯そんな、はずは⋯⋯」


反転する。

あの風景が反転する。


16歳。雨の降る夜。汚い路地裏。

私は刀を握って立っていて、横には吸血鬼が倒れている。

私が斬った。私が殺した。

⋯⋯正義の行い。だったはずなのに。


反転する。


人の心がある彼らを。

苦しんでいたかもしれない彼らを。

私は斬って、そして笑った。

「正義を成せた」と笑った。


嗚呼、それはなんという。


まるで、私は殺人鬼ではないか。


正義を語って悪を成す、私が忌み嫌った”正しくないモノ”ではないか。


罪の意識が……封印していたソレが、八雲泪の精神を押し潰そうと暴れ出す。

そしてそれを……罪の意識をより重く感じさせている男は、嗤って見守っていた。

そして追い打ちをかけるように、囁く。


「さあ。君が今まで斬った吸血鬼のことを思い出そうか」


するりと、耳に、脳に染み込む言葉。

それを泪は、駄々っ子のように否定しようとすることしか出来なかった。


「君が殺した彼等のことを思い出して」


いやだ。


「彼らはどうして必死になって抵抗してきた?」


考えるな。


「彼らは今際の際になんと言っていた?」


聴きたくない。


「ほら、ゆっくり思い出して。

それとも⋯⋯それを覚えていないほど、君は残酷で冷酷な”人間失格”なのかな?」


違う!

その否定と共に、あの光景が再び脳を埋める。


汚い路地裏。

雨。

倒れた吸血鬼が言う。

まるで人間のように言う。

横に立つ殺人鬼に懇願する。


──死にたくない。


彼の脳裏には家族のことがあって。

そして殺人鬼(わたし)は、笑いながら刃を振り下ろして──



「逃げるなよ。

ソレが君の罪だろう?」



……殺人が絶望足り得るのは。

どう足掻こうが、奪った命に取り返しがつかないから。



「う、あああああああああああああああッ!」


カランと、投げた刀が土を転がる。

泪は頭を抱えてその場にうずくまった。


両親を奪われた痛み、苦しみ。

それを誰よりも理解している少女、八雲泪。

そんな彼女が⋯⋯自分が味わった絶望を振りまいたと知って、その罪の意識に耐えられるわけが無い。


ぐちゃぐちゃになった心を制御出来ず、涙と絶叫が絶えず漏れる。

与えられた絶望が、広がった世界が、八雲泪の罪深さを責め立てる。



私は、殺した。

私は、正しくなんて無かった。



いや、それだけなら耐えられたハズだ。

冷静ならば反論のひとつも出来たハズだ。

だから、少女の心を必要以上に追い詰めたのは⋯⋯陰惨に嗤う、最悪を絵に書いたような人間。


その下手人は、人間失格は⋯⋯父と母の名を救いを求めるように連呼する少女へ、近付く。

そしてゆっくりと刀を拾い、うずくまった八雲泪へと差し出した。


「ほら、刀を手に取って。君は殺人者だ。もう戻れない。それならせめて、道を貫こうとは思わないかな?」

「⋯⋯み、ち? わ、たし、わぁ」


ボロボロの少女へ、優しく悪魔の手が差し出される。

絶望の底から救い出すための手が。

自分の望む道へと誘導するための手が。


「人間を守るんだよ。吸血鬼の手から。

それが君の選んだ道だろう?

ほら、手始めに俺を守ってくれ給えよ」

「まも、る」


守る。

殺すのではなく、守る。

その言葉(きれいごと)は、するりと泪の耳へ入り込んだ。

悪魔は問い掛ける。

決まりきった選択肢を提供する。


「罪人として蹲るか。

それとも奪った命への責任を果たすか。

さあ、君はどちらを選ぶ?」



そして⋯⋯。


八雲泪は刀を手に取った。

しかし、彼女の心は絶望が支配していた。

その絶望という暗黒の中で、僅かな光を示された方向に歩いているだけだ。

闇の中は嫌だと。

光の中に居たいと。

ただ、迷った子供のように。


「まもる……まもる……まもる……ひとを、まもる……」


彼女はぶつぶつと呟き続ける。


そしてその僅かな希望を示すのは、彼女を絶望に追い込んだ張本人。

龍川芥は、くつくつと嗤う。

陰惨に。

心底愉しそうに。



「意外と上手くいくものだね。他人(ひと)の心を黒い泥(ぜつぼう)で満たすというのは」


人間失格は、他人を絶望の底に叩き込み。

そして都合のいい駒をひとつ手に入れた。



人間失格は歩む。

教会へと進む。

従者となった少女を連れて。

愉しそうに。嬉しそうに。


未だ見ぬ”死”を得る為に。

龍川芥は堂々と、その1歩を踏み出した。

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