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侵された樹海と琥珀色の希望  作者: 鹿方剛助
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第8章~放て、連携呪文!~

「ホブラマ!」


 オウリラードの錐もみ突進を避けたカブトムシのノブナリが羽を展開させて飛んだのち。光属性の呪文を唱え光の弾丸をオウリラードへと放つ。その光の弾丸はオウリラードの胴体部分に命中し。オウリラードは悲鳴をあげつつひるむ様子を見せた。

 それをチャンスと見たか、金川支部の魔操虫の内の一匹であるケブカヒメカブトのコテツが氷属性の呪文の詠唱を始めた。

 薄水色の空気が収束し始め、それが一塊の礫となって現れる。


「俺っちの呪文、特と味わえ!"コフザルド"!!」


 呪文名を宣言するとともに氷の礫が次々と現れ。それがオウリラードへと襲い掛かる。

 連続して命中していく氷の礫。それが終わった直後再び辺りに怪鳥のような雄たけびが辺りに響き渡る。魔操虫達はそれを意にも介さずに魔法による攻撃をし続けていった。

 雷属性や氷属性の魔法がオウリラードへと次々に襲い掛かり。反撃のすきを与えさせない。

 確実に追い詰めていっている。タイゴホンヅノカブトのリョウタがそう確信をする…が。反対にカブトムシのタカオはどこか険しい様子を見せていた。


「タカオ、どうしたんですか?何やら難しい表情をしているようですが。」

「リョウタ、お前は先ほど今の戦いの状況を順調に行っている、と判断していたな?」

「はい。タカオ、トモユキ、コテツにボク。・・・それらの属性の攻撃が上手く命中していっているので上手く行けば予定よりもかなり早く討伐できるんじゃないか、と思っていたんですよ。」


 タカオの言葉にそう返すリョウタ。しかしてタカオは険しい様子を変えずに・・・突如として羽を展開させ空を飛ぶ。


「こんなことで追われるアイツならば、四匹一組のグループで挑んでも討伐できる対象だ。油断を見せるなリョウタ。同じ魔操虫ならば油断をして死んでいった魔操虫達を何匹も見てきたはずだろう。魔操虫がどんな物か知っているならば…油断はするな。相手を侮るな。この二つを知っているはずだ!」


 間髪入れずに大きめの氷の塊を放つタカオ。その目線の先には・・・先ほどの怒涛の攻撃をまるで食らっていなかったかのように空を飛んでいる、オウリラードの姿があった。

 リズムよく羽をはばたかせるオウリラード。その少し後。リョウタ目掛け羽を飛ばしてきた。


「危ないリョウタ!・・・ぐああっ!」


 リョウタをかばって羽による攻撃を受けダメージを負うタカオ。それを見たリョウタがタカオの元へと向かって行く。


「タカオ!どうして僕を…!」

「リョウタ、心配ない。・・・俺の所にはコクワガタのトモユキがいる。・・・魔操虫の中には回復魔法を覚える奴もいるということを知っているだろう?」

「・・・!」


 先ほどのオウリラードの攻撃を見ていたのだろう。ノブナリらタカオと同じグループのメンバーがタカオの元へとやってくる。


「タカオ!大丈夫か!?」

「僕が回復をします!他の魔操虫達は攻撃を!」

「っ、トモユキ、お前もいい指示を飛ばせるようになったじゃねえか。」

「賞賛の言葉は後で。今は回復を!」


 トモユキがタカオのそばに付き回復魔法を唱える中。ブラゼルとノブナリはそれを背にオウリラードの方を向いている。


「タカオさんが言っていた僕の中にある可能性。・・・未だに分からない部分があるんです。」

「ブラゼルと誰か、もしくはブラゼル単体が扱えるかもしれない、あの外界生物への有効打となる攻撃の事か?」

「はい。・・・すみませんノブナリさん。・・・協力してもらってもよろしいですか?」

「よし、お前のその賭け、俺乗ったぞ。・・・やってやろうじゃねえか。その攻撃とやらをよ!」


 いたずらでも托卵ている子供に似た様子を見せるノブナリ。オウリラードは翼を強く羽ばたかせ、次の攻撃を繰り出そうとしている。


「ブラゼル、同時に呪文を唱えるぞ、良いか?」

「準備は万端です。いつでも!」


 オウリラードが力をため・・・技を放とうとした瞬間。二匹の甲虫は同時に呪文を唱えた。


「"ポロル"!」

「"バフレイ"!」


 発生した火の粉の嵐。それが風の刃に宿っていき・・・オウリラードへと迫っていく。

 炎をまとった風の刃に襲われたオウリラードは苦しそうにもがきながら、なおも怪鳥のような鳴き声を上げていた。


「コテツ!キリト!今だ!呪文を叩き込めぇっ!」

「了解だよ!"ボルエルト"!」

「"コフザルド"」


 追加で雷属性と氷属性の呪文もオウリラードに襲い掛かり。オウリラードのあげる鳴き声はもはや苦しそうなものへと変わっていっていた。

 地面へと墜落していくオウリラード。討伐したかの確認のために、ノブナリたちがオウリラードの元へと向かって行く。・・・ちなみにこの時ちょうどトモユキによる回復治療が終わり。タカオも合流した。

 地面に墜落したオウリラードは舌を出したまま白目を向いている。・・・どうやら死んだようだ。


「ようっし!討伐任務完了だ!」

「思ったよりも被害を少なく抑えることができたね。これは魔操虫てきにも良い戦果だと思うよ。」


 明るい雰囲気が魔操虫達を包み込む。それから少しして・・・カミキリムシやハチなどの昆虫たちがどこからともなく現れ。魔操虫達の周りに集まってきた。


「ありがとうございます、魔操虫の皆さん。」

「あの外界生物のせいで皆困っていたのです。ですがこの度あなた方があの外界生物を倒してくれたおかげでこうして平和が戻ってきました。」


 口々にお礼を言う昆虫達。それに対してタカオはこう言葉を放った。


「お礼を言われるまでの事をした覚えはありません。俺達はただ、任務でここまで来ただけですから。」


 そのタカオの言葉にワッと歓声が巻き起こる。それからしばらくして夕方。


「今回は協力に感謝いたします。・・・また今度協力してほしいことがあったら伝えますので。その時に会いましょう。」

「ああ。・・・次は金川森林地帯に遊びに行った時に出会いたいものだな。」

「そうですね。」


 言葉を交わし、それぞれいた支部の方へと戻っていく魔操虫達。・・・魔操虫達を待ち構える次の戦いは、いったいどんなものなのであろうか?

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