第7章~金川の大地、別の支部の仲間との出会い~
金川方面の森林地帯。人間達には森林公園金川の森と呼ばれているその地帯に、4匹のカブトムシとクワガタムシが降り立った。
小鳥がさえずり、川のせせらぎが聞こえる中。ノブナリがタカオに問いを投げかけた。
「タカオ、此処であっているのか?・・・待ち合わせの地点は別のところじゃないのか?」
「いや、ここのはずだ。任務内容は確か、オウリラードの合同討伐のはず。東京都の奴らならば一匹もしくは二匹一組で狩れるレベルなのだが、俺達は山梨の甲虫だ。安全のため一組を四匹として複数のグループでの合同で討伐することが義務付けられている、とても危険な外界生物だ。」
「書物で読んだけど、山にいるフクロウと似た外界生物なんだよね?・・・フクロウも魔法で攻撃できそうじゃない?」
タカオの任務の説明の後にトモユキが問いを投げかけると。その問いに対してタカオは横に頭部を振った。
「確かにフクロウも魔法が効く事には効く。だが、フクロウには物理的な攻撃も効くんだ。魔操虫の中にはフクロウを撃退する虫達を護衛する者達もいる。・・・だが、オウリラードはフクロウと違い魔法しか効かないんだ。弱点属性は雷、氷、そして・・・炎属性を用いたある攻撃。」
炎を用いたある攻撃、その言葉を聞いて・・・コブタテヅノカブトのブラゼルは頭を縦に揺らす。
「・・・僕と誰かの協力が必要ってことか。」
「炎属性を用いたある攻撃、としか聞かされていないからな。新鋭魔操虫のブラゼルなら場合によってはたった一匹だけで相手の弱点を突くことができるんだ。」
ブラゼルの言葉に頭部を縦に揺らし、肯定の意志を示すタカオ。そのタカオに、今度はノブナリから抗議の言葉が飛んできた。
「タカオ、このところ俺の属性を弱点とする外界生物との戦いがないような気がするんだが。」
活躍の場がないことに不満を漏らすノブナリ。そんな彼に、タカオはこう言葉を放った。
「何のために五つの属性、そして二つの属性の相性があるというんだ?・・・外界生物の中にも五つの属性を操る奴がいるんだ。それに、お前がつかさどっている属性を弱点とする外界生物も少なからずいる。・・・それに外界生物との戦いの最中に別の外界生物が乱入してくることもあるからな。」
「・・・それならばいいけど・・・。」
「ノブナリさん、でよろしいですか?・・・君にもいつかは、活躍の時が来ます。・・・がっかりしないでください。」
「ありがとうな、ブラゼル。」
ブラゼルからの励ましの言葉。それを受け、ノブナリはどこか気分が明るくなる。
そして、約束の時刻。ひときわ目立つ木のある方向から、4匹のクワガタムシとカブトムシがやってきた。
「遅くなりましたね。今着きました。」
「時間通りだ。・・・俺はファブラルス本部所属のグループリーダー、カブトムシのタカオだ。」
「金川森林地帯支部所属、タイゴホンヅノカブトのリョウタです。属性は雷。ボクがリーダーを務めているグループのメンバーを紹介します。」
自己紹介をしあうタカオとタイゴホンヅノカブトのリョウタ。リョウタはそういうと、他の三匹を紹介し始める。
「まずはケブカヒメカブトのコテツです。」
「俺っちはケブカヒメカブトのコテツっで言うんだ。属性は氷。頑張っていくつもりだから、よろしくな!」
「続いて、ヒラタクワガタのショウヘイ。」
「ショウヘイだ。属性は風。よろしく頼むぜ。」
「最後に、ムナコブクワガタのキリト。」
「属性は雷だよ。みんなの役に立てるよう頑張るから、よろしくね!」
リョウタに紹介された面々を見て、ノブナリはタカオに小声で話をする。
「雷が二匹に氷が一匹…まあまあ早く終われそうだな。」
「いろんな運の要素が良い方向に上手く絡めば、東京の奴らに迫る討伐時間が記録できる。・・・だが早々上手く行かないのが任務ってものだ。」
少しして始まる話し合い。そののち、カブトムシのタカオとタイゴホンヅノカブトのリョウタ、そして二匹が率いるグループのメンバーは森林の少し広まった場所へと移動をし。今回の任務の討伐対象であるオウリラードを待ち受けた。・・・そして、その討伐対象は。
「来た…!」
「っ、思ったよりも禍々しい…!」
少しの時間の後にその姿を現す。
フクロウに瓜二つなその姿。その翼には何やら硬そうな物がくっついており。目の周りからは濃い紫色の水晶のようなものが生え。その脚にはこれまた水晶でできていそうな鋭い爪があった。
黄色い目をギラギラと光らせ、8匹の甲虫達を見下ろすフクロウにも似た姿の外界生物・・・オウリラード。少ししたのち、そのオウリラードは翼をはばたかせたかと思うと・・・ひときわ強く羽ばたくと同時に大きな竜巻を発生させてきた。
コクワガタのトモユキとムナコブクワガタのキリトに迫る竜巻。その間に、カブトムシのノブナリが入って風属性の魔法を唱える。
「"ポロル"!」
ノブナリの周りに風の刃が発生し、竜巻へと向かって行く。それらは相殺され、辺りに突風が発生した。
吹っ飛ばされないように踏ん張る甲虫達。少しして怪鳥のような雄たけびが響き渡る。・・・それはオウリラードの物であった。
ついに始待った合同任務。ノブナリたちは一匹も死ぬことなく帰ることができるのか。