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侵された樹海と琥珀色の希望  作者: 鹿方剛助
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第3章~希望への萌芽 訓練の日々~

 木のうろにたたずむヤンバルテナガコガネ。その昆虫の目線の先に。一匹の甲虫の胴体部分に何やら円形の不可思議な文様が刻まれていっているという光景が広がっていた。

 その甲虫は茶色の体のずんぐりとしたからだ。そして一本の立派な角を持った甲虫・・・日本産のカブトムシ。そのカブトムシは暴れるでもなくおとなしく不可思議な紋様が自身の背に刻まれていくのを黙って待っている。やがて…その紋様が完全に刻まれたのち。木のうろにたたずむヤンバルテナガコガネの方を見た。

 そのカブトムシの目は黒く、健康的なことがうかがえる。


「どうやら成功したようだな。・・・君の属性は風と・・・それと光だ。それも、君の風属性はかなりの見込みがあるモノだ。これからはすべての甲虫、そしてすべての昆虫たちのために・・・外界生物たちと戦ってくれたまえ。なお、異常を感じたらスズメバチの元を訪れてくれ。彼女ならば君の力になってくれよう。」


 ヤンバルテナガコガネの声を聴き、頭部を縦に揺らすカブトムシ。その甲虫は草むらから虫達の集まる広場の方にでて。まず最初にモンシロチョウに話しかけた。


「モンシロチョウ、こんにちは。」

「あ、魔操虫になるための儀式が終わったんだ。その様子だと、無事に成功したみたいだね。おめでとう。」

「ああ。・・・何分さなぎのころから外界生物のことについては繰り返し聞かされてきたからな。羽化をしてからは魔操虫になって外界生物たちを倒してやるって思っていた。・・・今こうして魔操虫になることができてうれしく思っているぞ。」

「相当憧れだったみたいだね、魔操虫。・・・だけどこれからは危険と隣り合わせの仕事だよ。大丈夫?」

「ああ。仲間とともにやっていくつもりだ。」


 カブトムシのその言葉にうなずくモンシロチョウ。そのモンシロチョウは彼を引き連れ。全身が黒く胸の部分から太く短い角が二本生え、全体的に重量級であるかのようなイメージを持たせる甲虫・・・アクティオンゾウカブトの前へと向かって行った。


「おう、新入りか。随分と早いご到着だな。まだ予定の時間までかなり余裕があるぞ。」

「そんなに早くついてしまったのか?俺は。」

「ああ。・・・だが歴代ではベスト100に入るのが精いっぱいといったところだな。歴代で早かったのはオオクワガタの"コタロウ"だ。・・・して、新人。お前の名は何だ?」

「俺か?俺の名は"ノブナリ"という。・・・よろしく頼む。」


 会話を交わすアクティオンとカブトムシのノブナリ。それからしばらくして…ノブナリも含めて8匹の甲虫がアクティオンの前に集まったのち。アクティオンが声を放った。


「いいか!これからお前たちはあのにっくき外界生物達と戦うことになる!8年前、奴らは我々を襲い、多くの虫達が犠牲になった!だが今の俺達には魔法という外界生物に対抗しうる武器がある!これからお前達には、仲間の甲虫達の捕獲した外界生物と戦ってもらう。一匹ずつ順番に前に出ろ!」


 先頭の甲虫・・・特徴的な大あごをしたクワガタムシ・・・ミークヒラタクワガタから順に魔操虫となった甲虫達が、六本の足を持つ骸骨の頭をした奇妙な生き物・・・ホネートルと戦っていく。

 炎、氷、雷、風。多種多様な魔法を使い戦っていく魔操虫であったが、その戦い方はどこか拙いものだった。・・・そして、ノブナリの出番が来る。

 ざわつき始めるほかの魔操虫たち。それでもノブナリは気を集中させ。ホネートルとの戦いを始めていった。

 骸骨の頭が口を開き、ノブナリに襲い掛かる。それに対しノブナリは角でけん制したのち距離を取り。呪文を唱えた。


「かの伝説の住民たちよ、力を貸せ。・・・"ポロ"!」


 回転しつつ放たれる真空の刃。それがホネートルに命中するがひるんだだけで大したダメージとはなっていない様子だ。


「練習相手にしてはタフじゃないか・・・?」


 相手の様子を見てこぼしつつ次の呪文を唱えるノブナリ。・・・続けて放ったのは、光属性の呪文だ。


「"ホブル"!」


 カブトムシの体より二回りほど小さい光が銃弾のようになり、ホネートルへと向かって行く。そしてホネートルに見事決まり。ホネートルの体が吹っ飛んでいった。

 羽を展開させ空に浮かぶノブナリ。直後呪文を又唱え始めた。


「森に語り継がれる風の力よ、自身に敵対するものを滅せよ。"ポロル"!」


 ノブナリの周りに出現する空気の刃。それがホネートルへと襲い掛かり。その体に幾多もの傷を負わせていった。

 煙と共に消えていくホネートル。それと同時にノブナリが地面へと着地する。そんなノブナリに、アクティオンが声をかけた。


「これは訓練だというのに見事な戦いぶりだな。・・・これはかなり見込みあるんじゃないか?下手を打てば"精鋭部隊"への配属も夢じゃないぞ。」

「ありがとう。しかし精鋭部隊か…いつかは俺もそれに入れるのだろうな。」


 精鋭部隊。その言葉を聞いて少し上を見るノブナリ。・・・それから少しして訓練は終わり。ノブナリたちが広場へと戻ってくる。それとほぼ同時に声をかけたのは。ノコギリクワガタのエイキチだった。


「よう!お前が新入りか?名はなんていうんだ?」

「俺はノブナリ。・・・お前はどこの配属なんだ?」

「ノブナリか…ははっ、なんだか将来有望な名前だな!俺はヒルトゥスヘラヅノカブトのヒルナードと一緒のグループなんだ。お前はどこのグループで戦うかは知らないが、もしも同じグループになるんだったらよろしく頼むぜ!」


 元気のいいノコギリクワガタのエイキチとの会話を終え、モンシロチョウにねぐらへと案内されるノブナリ。・・・その次の日も、アクティオンゾウカブトの元での訓練だった。

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